第10話 戦う盗賊の道9

ベルーガ商会をでて、ククリとギルドに向かう。

「1階層で金貨5枚ならずっと案内人をせずに、1階層でダンジョンに潜るほうが稼げるよね?」

ククリは嬉しそうに訪ねてくる。


「たしかにそうだね。

案内人の仕事は安いからやる必要がないよ。

それに上の階にいけばさらに稼げるし、誰もバカにできなくなるよ。」


俺は嬉しさもありながら、今後について考えると少し億劫な気持ちになる。


実際盗賊の階層の案内の報酬はかなり安い。

1階層~3階層 銀貨3枚

4~5階層   銀貨8枚

6~8階層   金貨1枚


父さんクラスで、月金貨10枚から15枚。

父さんは盗賊内では、レジェンドクラス誰もが憧れるレベルでだ。

まったく夢も希望もない。


他の人は、休みなく働いで金貨8枚位だ。


盗賊は盗賊と結婚することが多く、生まれる子供も盗賊になることが多い。

なのでほとんどの盗賊は子供を一人養うのが精一杯な状況、エリート一族と言われる、うちですら一人っ子である。

間違いなく戦う盗賊に、なりたい人は続出する。


多分今後、ダンジョン職とのトラブルが、続出するだろう。


そんな事を考えてながら歩いていたら、ギルドについた。

ギルドに入ると父さんを囲むように数人が集まっていた。

父さんと目があうと手招きされ呼ばれる。


「産物の取り引き終わったよ。

今回は金貨5枚だった。一人頭金貨1枚と銀貨6枚だね。」 


「思った以上の成果だ。

ダンジョン職が儲かる理由がわかる。」

クロームの話しを聞き、集まった周りにた人たちも盛り上がる。


「集まってる人は戦う盗賊になりたい人なの?」


「そうだよ。

ひとまず明日から交代で俺がついて、ダンジョンを回ろうと思う。」


「僕たちの修行はどうなるの?」


「ビアンキとククリには悪いと思うが。

カーター(ククリのお父さん)についてもらって、見習い4人でまわってもらうことにする。

ここに集まった人たちが、攻撃スキルがつくまでの間は、我慢してほしい。」

申し訳なさそうに父さんがこちらを伺ってくる。


ククリを見るとうなずいたため、

「わかったよ。

明日からはククリの父さんに弟子入りだね。」


「とりあえず明日はカーターは、ダンジョン案内があるから修行は休みにするから、父さんたちについてくるか、休むか好きにするといいよ。」


「わかった。

なら明日はお休みするね。」


「ビアンキは休むのか?

俺はダンジョンに行きたい。」

ククリは残念そうこちらをみてくる。

「ククリは、ダンジョンについて行くといいよ。

 俺はベルーガさんと話しがしたいし、ダンジョンで役にたちそうな物を商店街で探してみたいんだ。」


「そっか。

レベルもビアンキの方が高いし、明日は一人でクロームさんについていくよ」

ククリは納得した様子で、父さんたちと明日のダンジョンに行く打ち合わせを初めた。


その後、父さんから分け前をもらい一人でベルーガ商会にもどる。


ベルーガ商会の前着くとベルーガさんとお店の人が荷物を店に運び込んでいる途中だった。

こちらに気がついたベルーガさんが手を止める。

「もうすぐ父さんが10人位連れて短剣を買いに来ると思うよ。」


「わざわざ知らせに来てくれたのかい?」


「それもあるけど、さっき話した約束の件明日でもいいですか?」


「もちろんいいよ。明日の昼以降はあけておくよ。」


「あと壁にかけてあった、短剣は売らないでね。金貨2枚まであと少しだから。」


「わかったよ。お得意様だからな。

ちゃんと取り置きしとくよ。」

ベルーガさんは笑顔で了承してくれた。


久しぶりに一人になったから商店街をみてまわる。


せっかくの初の稼ぎだから、母さんに何かプレゼントを買おうと、装飾品店に入ろうとしたら盗賊は金がないから店に入るなと言われ、キレそうになった。

仕方なく屋台街いき、母さんの大好きな肉包み饅頭を買って家にかえる。


母さんとダンジョンでの出来事を話しながら過ごしているとクロームが帰ってきた。


「ただいま。クイナ、今日の報酬だ。

明日から盗賊数人でダンジョンに行く事になった。」


「お帰りなさい。お疲れさま。一階層なのにこんなに稼げるんだね。」

母さんは嬉しそうに父さんを労っていた。


ちなみにお金を母さんに渡そうとしたら、一人立ちするために、しっかり貯金するようにいわれた。


夜ご飯を食べながら、父さんに明日どうするのか尋ねると、ククリと父さんの班に別れ、ゴブリン狩りをするらしい。


次の日、朝は父さんを見送って、一人で商店街をみてまわる。


商店街は、ダンジョンに近い中央に向かうほど高級店が並んでおり、ダンジョンから離れるほど価格が安くなる。


一番端のベルーガ商会の隣は露店商がたくさんおり、装飾品などもおいてる。

高級店は盗賊お断りが多く、薬屋以外は中に入ることすらできなかった。


昼は飲食街でご飯を食べて、ベルーガ商会に向かった。

ベルーガ商会に入るとすぐに奥の部屋に案内された。

少し待っていると、ベルーガさんが短剣をと防具を持って入ってきた。

「すまないね、少し待たせかな?」


「そんなに待ってないですよ。今日は時間を取ってくれてありがとうございます。」


「本当にビアンキくんは、しっかりした子だね。

そういえば昨日はありがとう、短剣がたくさん売れたよ。

お礼にこれを使ってくれ。」

ベルーガさんは机に壁にかけてあった短剣と軽鉄の防具をおいて、こちらに渡してくれた。

「いいの?あとビアンキでいいですよ。」


「もちろん。

サイズも合わせ作らせたから、ぴったりと思うよ。

明日には、クロームとククリくんのも出来上がるから、投資と思って使ってもらえると嬉しいよ。」

ベルーガさんはこちらの反応を伺うような顔でみている。


「ありがとう。たくさん宣伝させてもらうよ。」


「本題に入ろうか、相談したいことってなんだい?」

ベルーガさんは、鋭い商人の顔つきになりこちらに尋ねてくる。


「とりあえず3つお願いと相談があるんだ。


1つ目は、盗賊ギルドにベルーガ商会の買い取り窓口を作って欲しい。


2つ目は、ダンジョン協会と盗賊ギルドが揉めた時商人ギルドにダンジョン協会の味方に着かないように動いて欲しい。


3つ目は、500年前の盗賊の英雄について知っていることがあれば教えてほしい。」


ベルーガさんは一瞬驚いた顔をしたが、また鋭い商人の顔に戻り、

「1つ目と2つ目に関しては、任せてくれ。

けど勝手に決めていいのかい?」


「よくはないんだろうけど、後手にまわりたくないですよ。

多分戦う盗賊が増えるとダンジョン協会への影響がでるから、盗賊ギルドに文句を言いそうな敵を出来るだけ減らしたい。

だからベルーガ商会を味方につけたいんですよ。」


「なるほど。

こっちからクロームにアプローチをかけてほしいって事だね。」


「もちろん、アシストはしますよ。

それにベルーガ商会が入れば、誰も文句は言えないだろうし。」


「本当に面白い子だなビアンキは。」


「儲かりますよ。後は僕に今後も投資してくれたら嬉しいです。」


「もちろん協力させてもらうよ。

でも他の商会は入れないのかい?

ダンジョン協会は3つの商会が持ちわりで当番制になってる。」


「既存の商会は入れたくないんですよ。

むしろベルーガ商会に協力できる商会で、新興の商会を立ち上げてほしいです。」

ベルーガさんは全て悟った様子で、了承してくれた。


昨日今日と商店街をまわったが、既存の大手商会で、まともに盗賊を相手にしてくれそうな商会はなさそうだし。


俺の気持ち的には、盗賊お断りなんて喧嘩を売ってるようなものだ

それならいっそ新しい商会を立ち上げたい人に最大限恩を売ってこちらの手駒にするべきだ。


「その件は任せてくれ。

3つ目は、詳しいことがわからないから、当時の商会の記録の写しで、よければ渡せるから後で盗賊ギルドに持っていくよ。

クロームたちが、ダンジョンにいってるから戻ってくるころに今日の話しも含めて、盗賊ギルドを尋ねるから。」


「ありがとうございます。

500年前の記録があるんですね。」

すこし驚いたが嬉し事だ。


「普通はあまりに古い記録は、捨てるんだけど、うちの商会にとっては、立ち上げた時の記録になるから、家宝みたいなもんだよ。

役にたつといいが、他の商会なんかには見せないでくれよ。」 


「もちろんです。今日はありがとうございました。

また何かあれば相談したいから、お願いいたします。」


「いつでも相談にくるといいよ。」

ベルーガさんは心よく返事をしてくれた。


 その後、ベルーガ商会をでて、露天街をみてまわり、時間を潰してから盗賊ギルドへ向かった。

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