第2話 失われた声

香織と涼介は、宮司から受け取った絵巻物を持って神社を後にした。日が暮れ、町全体が夕闇に包まれる中、二人は古い書物や資料を調べるために町の図書館へと向かった。


図書館は静まり返っており、薄暗い照明が棚の間を照らしていた。二人は資料室に足を踏み入れ、古い書物の山を前にして調査を開始した。


「ここには町の歴史に関するあらゆる資料が揃っているはずだ。」涼介が言いながら、古い新聞記事や歴史書を手に取った。「きっと、絵巻物の欠落部分について何か手がかりがあるはずだ。」


香織は一冊の古い書物を開き、その中に記された妖怪伝説のページを読み始めた。「ここに、かつてこの町で目撃された妖怪たちの記録があるわ。でも、何かが足りない…。」


ふと、涼介がある古い新聞記事を見つけた。「香織、これを見てくれ。ここに『鬼太郎』に似た存在について書かれている記事がある。昔、この町で『声を失った子供』という奇妙な話があったらしい。」


香織は記事を覗き込み、記事の内容に目を通した。それは、戦後すぐの時期に起きた出来事で、町の外れに住む家族の子供がある日突然声を失い、周囲には奇妙な現象が起きるようになったというものだった。


「声を失った子供…それが『鬼太郎』と関係しているのかしら。」香織は呟きながら、記事を読み進めた。「この記事によれば、その子供はある日突然姿を消した。そして、町では奇妙な現象が続いたらしい。」


涼介は記事の末尾に注目した。「ここに、その子供が姿を消す直前に『ゲゲゲの鬼太郎が出てこない』と叫んだと記されている。まさに宮司さんが言っていた言葉だ。」


二人は顔を見合わせ、次なる手がかりを見つけたことに興奮を覚えた。「この子供の家族やその家がどこにあったのかを調べる必要があるわ。」香織は決意を新たにした。「そこに『鬼太郎』の正体を解く鍵があるかもしれない。」


涼介は地図を取り出し、記事に記されていた町の外れの位置を確認した。「この場所なら、まだ家が残っているかもしれない。明日、実際に行ってみよう。」


その夜、香織は自宅に戻りながら、再び心に浮かぶ『鬼太郎』の姿を思い出していた。幼い頃に見たあの存在が、どのような真実を秘めているのか。彼女の探求心はますます強くなり、次なる調査への期待が高まった。


翌日、香織と涼介は町の外れに向かうことを決めた。そこで待ち受けるのは、忘れ去られた真実と新たな恐怖の影であった。

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