11.椿の華が彩る

 そして、雪降る季節になる。

 皆との関係は性転換前よりも良好そのものであった。

 そして、僕は碧と話す。

 「もう、今年も終わりに近づいてるねぇ、早いなぁ、」

 「そうだね、でさ、クリスマスの予定はある?」(※時系列の進行も)

 クリスマスに何するのかを気になって碧に聞いてみた僕。

 「え?それ、私に聞く?も、勿論、あんなことやこんなこ──」

 「えっと、夜とクリスマスにデートして家でクリスマスパーティーをすると。なるほどね」

 「え、なんで分かんの?絶対あっちの方を予想したところで私が、何妄想してるの変態ぁいって発言するところじゃん。」

 そんな同じ趣味を持つ仲間だからこその会話を行う。あっち系ってなんだろうと考えた僕はとてもとても純粋だなぁ。

 碧が逆質問をする。

 「んじゃ、次は私の番ね。日向はクリスマス、何するの?」

 「特に予定はないんだよねぇ、」

 そう返答すると「じゃあさ、」と言い、一拍を置いて続ける。

 「積極的な榧白かやしろちゃんとデートしたら?ラッキーアクシデントであっても、キスしたんでしょ〜?ならそのまま──へへっ」

 何企んでんだよと思いながらもその提案に「いいかもね」と返事をする。案の定、その発言に提案しておいて驚く碧であったが辞める必要もないので有言実行しよう。

 「そうなんだね、ファイトだよ!」

 碧からそんなエールを受けた僕は後には退けない。


***


 碧との会話のあとの夜分に榧白かやしろに電話をする。

 「あ、夜にごめん、あ、あの、クリスマスの時って予定空いてたり……もし良かったらどう?」

 「え、あ、わ、分かりました。予定、空いてますよ」

 「ありがと!んじゃ、こんな時間にごめんね」

 予定の確保成功に成功して内心喜ぶ。

 あんな可愛けりゃ、予定が埋まってたかもしれないからね。……というのは実際のところ繕っただけの嘘で碧が提案したから予定を組もうと思った訳では無い。碧の提案が僕の気持ちを押してくれた。


 あの日から僕は意識してしまっていて、それが初恋。それに気づけば急ぎ足になってしまう、焦ってしまう。

 だって、あの時の美少女が榧白咲生かやしろ さきでなんなら、僕に好意を持ってくれているかもしれないとそんな、妄想を考えるようになってしまったから。

 ただの友達だとしか思っていないかもしれない。

 けれども、クリスマスだからこそ言えたらいいなと考えている。

 恋即ち盲目なりて。

 しかし、それが本当に恋であるのかは未だ不完全である。でも、日が過ぎ去っていくことにざわめきが色濃くなっていく。

 自ら誘って未立プランでは印象は最悪。

 控えめに言って僕が女の子の状態で生まれて、その状態で育っていたら許せないだろうからそこは念を入れる。一つ目が無理なら二つ……三つ……四つとできる限りのプランを組み、その日を待つ。

 服装だって気を使いたい。できるだけ格好よく、そして、今は女の子であるから可愛らしく。


 「という訳で碧さん、服選びお願いします!!」


 学校に行ったその日、屋上で唐突にこんなこという僕に笑みを浮かべながら「なるほどぉ〜」と頷く。

 「なるほどね、デートだろぉ?仕方ない、碧ねぇさんに任せろ!」

 そんな男前なことをいう碧になら特に無茶な要望をしても問題ないだろうと考えた。

 「えっとね、格好いいんだけど、可愛さがあって清楚な感じがいい……」

 はい、普通に最後まで言えぬままに「ちょ待て!」という声に言葉を止める。

 「いやぁ、格好良くて可愛い清楚なのはわかった。ただ、それ以降は流石の私も無理だぞ!?」

 「いや、碧ねぇさんなんでしょう?だったら……」

 「くっ、」


 てな訳で。

 結構前にナンパされたモールに来て……試着やらしながら揉まれ……着せ替え人形のように遊ばれる。

 それはそれで楽しかったから良しとしよう。

 そんで、進みが爆速で当日になる。格好で言うとかなりカジュアルで格好イイに結構寄ったものになった。

 試着をした結果、何を着ても似合うってなったんです。

 「んー!いいじゃん〜可愛い顔にクールな格好!イケてるよ!日夏ちゃん」

 ちゃん呼びで茶々を入れる碧の言葉には耳を貸さずに褒め言葉だけを素直に受け取ろう。


 そして、冷やかな風が肌を掠める日暮れ後。

 「こんな暗くなるまでありがとう、碧」

 「いいよ、友達でしょ〜?困ってたら助けるって!明日の百合デート楽しんでよ〜」 


 その言葉はとても嬉しかった。

自然と笑みを零す。

 あ、そうだ、補足をしておこう。既に冬季休暇前の集まりなどは済ませた後になる。

 なぜ、服選びを頼んだのかといえばもう既にわかると思うが、明日なのだ──そう、明日。


 その日はこれで終わって……。

 日暮れ三時間程前の駅前で、二人は顔を合わせる。

 「あ、日夏君、ごめん、待った?」

 「いや、今来た所、あと、寒いだろうからココア買ってきたよ」

 そう言いながら、ココアを手渡す。「ありがとう」と感謝を述べる。

 現在の気温、最低気温-3度。寒いどころではなく、完全に家に居るべき日。碧と買った服に加えてポンチョコートを着てきた。それだけで寒さがどうなるか分からないけど、なんとかなるだろうと楽観的に。

 留まるだけでは凍えてしまうため、動かないといけない。僕は「いこっ」と声を掛けて足を動かす。

 辺りには氷点下であるというのに男女カップルが多い。今はこの中の1グループに見られてるんだろうか……そんなことを思ったが直ぐに「女だったわ」と我に返る。

 中身は男。外見はとてもビジュアルの良い芸能人と疑うレベルの美少女。そして、その隣を歩くもまた同じような美少女である。


 ここに来て回収と……。


 頭の中で独り言を並べながら今日に会話をする僕は恐らく頭がパー!になっていることだろう。

 イルミネーションを見ながら、「凄いねっ」、「これ綺麗」といった会話を繰り返しながら時間は経過する。

 時間が経つに連れて寒くなるはず。それなのに芯の底は暖かい。一緒にいて楽しい気持ちと幸せに笑う笑顔を見ると胸打つ感覚に陥る。

 ただ、わかって欲しい。

 臆病な人間と臆病な人間がトライしたデートは、きっとそれ以上の関係にはなれない。

 ちょっといいレストランでディナーを取る僕ら。高校生にとってこの場は場違いそのもの。ただ、笑顔が見れたから選んで正解だった。


 そして、僕が行きたいと思っていたこの街にできたばかりの品種改良を成された椿の道。

 咲きそうで咲いていない蕾の上に雪を積もらせては風で滑って落ちる。


 椿の先、真ん中らへんで足を止める彼女。それからくるりと身を翻すと言う。

 「日夏くん、今日はありがとう。とても楽しかった」

 そうにこやかな顔で口にする榧白かやしろ


 そして、奇しくも短期間の間。椿が咲き始めるその瞬間に告げられる。

 「日夏のことが──すきです」

 そんな予想もしなかった言葉を──。


 その後は何があるか、記さなくともわかる話だと思う。


 「わぁお、先輩とにぃここだけ見たらラブコメじゃねぇか」とストーキングしていた理途ことが思うのであった。

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