10.憂愁う悶々日和

 何ら変わりない日々の中で思うことを述べる。

 「ねぇ、理途こと、最近、頻繁に榧白かやしろがこの家に来てない?」

 「うーん、確かにそうかもね〜……でも、別いいんじゃない?」

 「キャンプ後に結構変わった気がするんだよ、何かしたっけか……?」

 「行ってなかった私にそれ聞かれても分かるわけなくない?w」


 そして、頑張って呼び起こそうとする。

 のぼせてアウトドアチェアに座り込んだことまでは綺麗にフラッシュバックする。しかし、何故かそれ以降にどう動いたかの、ブレインフォグという現象だろうか記憶がもやがかかったかのように曖昧だった。

 そして、そのもやの部分的な所を頭の中で繋げながら──その後を思い出す。

 「あぁ〜、クラクラするぅ〜」

 「もぉ、二人とものぼせちゃったの?仕方ない、手を貸すからテントの中で休んで。夜は日夏の方を運んで。」

 「仕方ねぇな、ほら日夏、手を貸せ」

 そんな、会話をした気がする。

 確か、その時に……「あぁ、うぅん、夜ぅ、ありがと」と発言した気が……?


 それで、それで……それで──それから?


 確か、頭が痛かったから頭に手を置いて、榧白かやしろから甘えられたんだっけ……、。

 「にぃ、何か思い出したの?」

 「──甘えられた?、確か、」

 そう僕が話すと、理途ことは発する。

 「あー、よくあるパターンだ!それ、漫画とか小説で読んだ気がする。その場合は相手がなにかやっちゃって、気にしてる時じゃ!!」

 そんなラノベの読みすぎな理途ことの頭にポンとチョップをする。

 「お前は直ぐにそういうもので得た知識を当てはめて……」

 僕がそう言うと「本当のねぇみたいだね」と茶々を入れる。ただ、そういう理途ことがとても頼りになるのには変わりない。感謝もしてる。だから口に出すことにした。

 「話、聞いてくれてありがと」

 理途ことは微笑を浮かべながら「妹なんだから、気にしないで」と返事を返した後に「じゃ、部屋戻るね」と言って自室に戻って行った。


 とまぁ、ここで気付いてないフリをやめよう。

 「榧白かやしろ、クローゼットに潜んで何してるんですか」

 そう問いかけると、ガッという音と共に苦く微笑みながら出てくる。まぁ、きっと理途ことの仕業だろう。

 今日は秋季におこなっていた夜の文化祭に足を運んで家に帰ってきて──こんな話しをしていた。そして、にっこりと笑みを作って問い質す。

 「咲生さきさん、いつからそこに?」

 下の名前で普段は呼ばない僕が呼ぶと共に〝さん〟を付けて聞いたことで少々の威圧感は出たのだろう。冷や汗を掻きながら言った。

 「さ、最初から……です……すみません」

 その今にも泣きそうな目をしながら正座している榧白かやしろに向けて本当の微笑を浮かべながら述べる。

 「ごめんごめん!冗談だよ、だから……さ?そんな顔しないで」

 「あ、あぁ、よ、良かったぁ、」

 そう言葉を零しながら肩から脱力している。でも、まぁ、泣きそうな潤目は正直「可愛かった」けど。

 「え、か、可愛い?」

 はっと、しながら口から溢れ出た本音を思い返す。

 「え、いや、その、あの」

 「今、可愛いっていいました?!言いましたよね!日夏君〜」

 とても嬉しそうにそういう咲生さきに嘘で繕うのも良くないと思い開き直ることにした。

 「うん、常に思ってる事だよ。可愛い」

 開き直った結果、顔を赤らめながら訳の分からないことをつらつらと話し出す。パニックではないにしてもそこまで?という具合に──僕が思い出せなかった記憶までもを述べていた。

 「あばはぁ、!?そんな、言われてもあのキャンプの時に火照ってたからってキスしたとかくらいしかないですよ?!あ、あと、暑くて脱ぎ出した後に抱きついたとかも──」

 何もかもが空耳。初耳。何言ってんだろう?と聞きたいレベルのラッキーを味わってて〝覚えてない〟という主人公の僕。

 なんというか、意味わかんなくね……。

そんなことを思いながらどう言葉を返そうか考えていた時。やばい発言に気づいたのかりんごのように赤い顔を両手で覆い隠しながら「見ないでください!?」というと直ぐに荷物を持って部屋を出ていった。


***


 冷静になろう。どういうことか発言の意図を知ろうと考えながら思い返して憂愁うれいうれう悶々とした。


 ちなみに、その頃、榧白かやしろは部屋のベットでぬいぐるみを強く握り締めながらうつ伏せで脚をばたつかせていた。

 「もぉ、私のバカっ!なんで、あんな、爆弾発言を……うぅ、絶対嫌われた、嫌われたよォ、」

 そんなことを言いながらポロポロ涙を零しているのだった。

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