9.紅葉の下でキャンプ

 夏祭りから頻繁に会話をすることが増えた。

 案外、出来事って関係性を進歩させるのだとあの時から今に至って理解した。

 夏休みにした事と言えば夏祭りに行って榧白かやしろや碧、ついでに夜と遊んだ程度のことである。

 それから、葉っぱが夕焼け色に染まり、肌をそっと冷す風の流れる季節。僕は弓道部に入部して再開した。

 なんというか、あれだよ、榧白かやしろが楽しそうに話すからやりたくなっちゃったんだよ。

 ま、きっかけはなんであれ、楽しいのだ。それはいい。でも、最近ふと思うことある。TS転換なったはいいが、誰もそれに触れず最初からそうだったというような態度で接してくる。

 だから、直接聞くことにした。

 「僕が女になったこと、みんな気にしてないけどどうしてなの?」

 「いやぁ、元々の顔が女の子っぽかったからじゃない?私は日向が可愛い可愛い女の子になって嬉しいとは思ってるけど──。」

 「え、バカにした〜?ちょっ……」

 碧は笑いながらそれスルーしてきやがる。そして、話し始めた。

 「まぁ、それはそうと、来週の三連休日にBBQするらしいんだけど、どう?」

 「え、?マジで?行くわ!!」

 僕はそう返事をするとわかってましたよといった顔をする。

 「そうだろうと思ったよ、あと、榧白かやしろさんも誘っといてね」

 「あー、了解。誘ってみるよ」

 その日の夜に榧白かやしろに電話を入れる。内容は勿論、今朝の会話ででたBBQへのお誘いである。ツーコールガチャってという音が鳴った。

 「夜分遅くにごめんね」

 「勉強してたところだから大丈夫だけど、どうしたの?日夏君。」

 「えっとね、今日、碧と話しててBBQに榧白かやしろも誘えるか?って言われたから」

 そういうと電話越しの榧白かやしろの声のトーンが上がる。

 「んー、何時??」

 「来週の三連休日に──」

 「予定ないよ〜!絶対いく」

 「了解〜んじゃ、そう伝える」

 「はいはーい」という相槌を聞き電話をきる。

 榧白かやしろをBBQに誘うことに成功した。そのことを碧に報告するメールを送付。

 「これでよしっと、」


**


 「よ〜し!キャンプだァ!!」という訳で楽しみすぎて時間の進みが遅いとかそういうことはなく、あっという間に当日になった。榧白かやしろはヨーロッパを舞台にした時に見る、大きなものではなくそれよりも比較的小さな革製ダッフルバッグの取っ手を両手で持っている。

 そして、碧が「あれ、理途ことちゃんは来てないんだ。」と言う。

 「あぁ、誘ってはみたけど、定期検診あるから行かないってさ」

 「あー、なら仕方ないね。荷物はトランクに入れて〜」

 そして、碧の車に乗って……「よぉし!いのぉ〜!!」という碧の声に動き出す。


**


 目的地に着く前に買い出しを行ない、到着後にテントの設置・火起こしなどをおこなった。榧白かやしろがキャンプに心躍らせる様子と相変わらずな碧と夜の仲良しさ。アクシデントやハプニングが発生ということもなく──。

  ──天然温泉に浸かっていた。

 「わぁお、こう見ると確りと乙女な体型だ」

 「はは、まぁ、僕は見られたよ」

 僕の言葉に反応する碧。

 「そりゃそうだろ、逆に自分の体に発情してる方がキモイ」

 「そりゃそうだ」

 そんな会話を行いながら女絡みとやらをしていると来客がもう一人。誰なのかは見当がつくだろうけど。

 「おー、榧白かやしろさぁん、いい肉付きだァ」

 その発言する碧はにこやかにしていた。それを聞いた榧白かやしろは頬をきながら恥ずかしそうに「ありがとうございます?」と疑問形ではあるが感謝を述べる。

 頭と体を洗う行為自体を行った後。

 榧白かやしろが温泉に浸かる。そして、気持ちよそうに肩まで温泉に浸かりながら言った。

 「いいお湯加減ですね〜」

 その言葉に返事をする。

「ですねぇ〜気持ちがいいです」

 まぁ、もうのぼせそうなくらいのギリギリラインにいるけどという発言が喉元まで来たが抑えて──。

 え、話しそれだけ?って感じで、湯気が立ち熱気に溢れピチャンという雫が垂れて水にあたる音が耳に入るほどの静けさ。

 その静けさを破るのはやはり、碧であった。突然「えいっ!」といった掛け声が聞こえたと思えばその瞬間、「キャッァ!やめっ……」というような可愛らしげな声と共に本性的な女絡みを見た。




 そして案の定、のぼせた僕と、だる絡みにあって体力を消耗したからか同じくのぼせた榧白かやしろとアウトドアチェアでだら〜んとするのであった。


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もはや、音速と言ってもいいレベルで進行が爆速になってしまいました。申し訳ございません。

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