8.夏祭りに行った

 時は進み夏休みに入った。

 アイスを食べながらドルフィンパンツと白Tで扇風機の近くにいる。

 今日は碧と夜の二人と共に勉強会である。エアコンなんざ僕の部屋には設置されていない為、仕方ない。

 「この部屋あっつぃ」

 そういう二人は廊下側に座っている。理由は勿論、涼しい以外にある訳がない。

 僕の部屋になくて廊下にあるものはなーんだ!なんて問題を提示して〝エアコン〟だと答える人間は恐らくいないだろう。そういうことである。

 そして、夜が日が沈んだぐらいの時刻に口を開く。

 「勉強はここら辺にして、あれだ、夏祭りってどうする?」

 「どうするって何を?どうするって?」

 「いやいや、行くのか?ってことだけど、俺と碧は勿論、行くとして。お前はどうする?」

 そんな問いに僕は言葉が吃る。だって、行く予定なんて更々考えもしなかったから。

 「特に行く予定は……ないけど……。」

 「ふぅーん。じゃあ、俺らと行くか?妹ちゃんも誘ってさ」

 そう提案する夜に即座に反応して同意を示す碧。

 「マジ?やったぁあ、久々に四人で行事行ける?」

 「わからんけど、そうなるかもしれないな。」

 そんなこんなで僕の意見を述べることは叶わず決定という形になった。いやぁ、どうなってこうなったのか教えて欲しいものだが。



 浴衣の寸法やら色々して……夏祭り当日。

 何故か、理途の粋な計らい(?)によって榧白かやしろが来ていた。碧は子供のようにリンゴ飴に目をキラキラさせながら言う。

 「ねぇ!夜、りんご飴食べよーよ!」

 「そうだね〜、少し後に買いに行こう」

 イチャラブカップルの権化と言語化すればよいのか?本来ならばリア充○ねとか言いたいところではあるが割愛する。

 『時系列どうなってんだ』という天の声的なものをスルーしつつ続行。

 そして、理途が口を開く。

 「よぉ〜し、じゃあ、兄と榧白先輩。碧ちゃんと夜君と私で周ろ〜」

 「おい、おかしいぞ!?」

 そんな声はスルーされる。でもさ、三人はきっと……そう願うが、理途の計画を知っていたのか二人は勿論、同意した。

 「あーおっけ!それで行こう。」

 「そうね、理途ことちゃんも一緒に飴食べよっ!」

 おいてけぼりにされる僕と榧白かやしろ。気まずい訳では無いが、その場を繕う必要がある。しかし、会話は捗るわけでもなく──。その三人の背中が見えなくなってから数分間沈黙が続く。そして、その沈黙がきつくなった僕は声を掛けた。

 「榧白かやしろ、と、とりあえず、屋台行きます?」

 的屋を聞くと榧白かやしろは言葉を詰まらせながら言う。

 「あ、あぁ、ですね。た、たこ焼きとかど、どうですか?」

 「たこ焼きか!いいですね。買いに行きましょう」

 会話はその一度。そして、的屋でたこ焼きを焼くお姉さんに声をかけて買った後のこと。徐々にバイブスが高まってきた僕らの会話は気づけば発展していて──。

 学校のことやバイト先の愚痴を話すくらいになっていた。

 その愚痴に相槌を打ちながら先程的屋で購入したりんご飴を食べながら聞く。

 「──がさっ、次から次へと押し付けて──ね、可笑しくない?!って思うの──。」

 「それは、ご苦労様です」

 かなり他愛もない内容を省略しておくとして、そういう会話を数分間行うと、花火が打ち上がるくらいの時間になり、急いで合流地点に行くと三人と落ち合う。

 「にぃ榧白かやしろ先輩」

 「もー!二人共、遅いよォ〜」

 「もう始まってるぞ〜!」

 その声に偶々だが、榧白かやしろと息が合う。

 『はい〜!今行く!!』

 この出来事は榧白かやしろとの関係に深い親密性を帯びることとなる。

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