5.鋭い妹さん
私は、日夏君が好きだ。中学の頃、同じ弓道部だった彼はその場にいるどんな人よりも……どんな学校よりも綺麗なフォームで大会でも大いに活躍していた。
そんな、憧れでもある彼が私が気付くと好きになっていた。
でも、彼は、弓道部がこの市で最も弱い学校に入学する。私は私の今いる学校に入学すると思っていたけれど、私の一方的な願望だった。
然し、二学年に登った時に日夏君の妹、理途という子が入学してきて──弓道部に所属した。
理途ちゃんもまた、日夏君と同じ位に弓道のフォームが良く、的確に的を射抜く。
そんな彼女に私は声を掛けた。
「理途ちゃん、少し聞いてもいい?」
汗をタオルで拭いながら私の目を見る彼女。そして、声を掛けただけで私の聞きたかったことを理解したようだった。
「はい、いいですけど、多分、私の腕前とかですよね?」
私はその的を得すぎている発言に驚きながらも頷いて彼女は言った。
「これは
更に言葉を続ける。
「先輩、中学の頃から兄のこと〝好き〟ですよね?」
「え、あぅ、そ、その……」
私の想いにまで的を得る理途の洞察力に驚嘆する。
「勿論、出来る限りサポートはします、私に出来ることはそれだけなので」
そんな会話から理途と関わるようになって、約二ヶ月か経過して互いに愚痴を話せるほどの信頼を置くようになった。
然し、彼女はそこから二ヶ月もの期間一度も学校に来ることはなかった。弓道を一緒にしたかったのに──。
……そして、体調が回復した理途ちゃんに勉強を教える日に理途ちゃんのお兄さんがどういう訳か女の子になっていることが分かった。
思考が停止して、勉強どころではなかったが、家に帰宅してから思う。これは話せるチャンスでは無いか?と。
それも、お見通しらしい理途ちゃんは、私に向けてメールを送った。その内容は的確すぎるもの。
「
そうして、テスト期間も終わり数週間が経過したとき、日夏君と遊ぶこととなった。
彼と言っていいのか、彼女と言っていいのか、それは分からないが、上手く楽しめるようなプランを立ててくれていてそれがとても嬉しかった私は更に好きになる結果だった。
**
そして、駅の改札付近の帰り際で聞いてみる。
「
「……あっ!美人で有名だった弓道部の女子エース?名前は……確か、
「そうだよ?覚えてなかったから泣いちゃってたよ……へへっ良かった」
榧白は笑顔を浮かべて「またね」と告げるとホームの中へと入って行くのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます