2.美少女になった

 思考が一寸停止する。誰だ、この美少女……。

 然し、直ぐに昨日の帰り道のことが頭をよぎる。

「もしかして、あの独り言が叶っちゃった??何気なく願っただけなのに……?」

 冗談交じりに願っただけ、願いが叶うだなんて本来であれば有り得るわけが無い。

「そう、ある訳がない。これは何かの夢だ!そう、夢、夢なら……」

 そして、頬を摘んだり叩いたり……夢ならば痛みは感じないはずだった。だけど、どうやら夢では無いらしい。

「……現実、え?本当になったの?」

 現在の状況に困惑しながらも一先ずは歯磨きや洗顔などを終わらすことにした。

 自室に戻ってふと考える。さっきは性別が変わっていることに驚いてまじまじとは見ていなかったが、確か……。

「結構、顔立ち良かったよなぁ」

 そして、先程のことを思い返しながら眼鏡をかけて姿見の前に立つ。

 するとそこには、肌白く華奢な体型に、豊満な果実を実らせ白銀ホワイトシルバーの胸元まで伸びた髪の顔立ちのいい眼鏡美少女が居た。

 そんで、美少女になって初めにすることは大体決まっている。そう、TS物でよくあるたわわに触れるという行為だ。

 そして、胸元に手をやるとマシュマロのようなムニッとした感触が手の平に伝わり、なんとも言えぬ感覚を覚えた。

 何か、こう、言葉に出来ない安心感があった。

 たわわに触れてわかったが、他の作品では性別が変わると共に下着も女性物になっている。

 然し、僕は今、ノーパンノーブラだった。

「まぁ、人生そんなに都合よく行かないか……」

 そう言って、一先ずは衣服ついて考えるのだった。


***


 そして、衣服については女子に聴くのが適任と考えた僕は碧に電話して、昨夜入り忘れていたのを思い出してお風呂に入った後のこと。

 碧に髪を乾かして貰いながら事情を説明して……。

「ふぅん……そんなこと起こるんだねぇ。まさか、願ったら叶ってたなんで」

「そうなんだよね。だから、碧に色々聞きたいなって」

「呼ばれた時、そうなんだろうなって思ってた。普通に下着についてとかでしょ?だから、運動スポーツ下着になっちゃうけどね」

「いや、ありがとう、助かるよ」

 という訳で、察しの良い昔馴染によって一先ずは解決した。

 そして、もうひとつの問題である、学校はどうすれば良いのだろう?を考えていると察しの良すぎる碧が言った。

 「はい、これ、あげる」

 手渡されたのは学校指定のYシャツとスカートだった。僕は困惑しながら問いかける。

 「え、?これ……いいの、?」

 「予備だから全然いいよ、使って」

 そして、碧は立ち上がってこういった。

「あと、学校については私のお母さんに話しておくから、気にしないね。それじゃ、今日は用事あるから」

 そんな碧を見ながら思う。

「碧って結構頼りになるんだ……」

 そんな今頃かよという事実に気づくのであった。

 碧がいなくなってから間もなくして、夜更かしをして眠っていた同じTS作品好きの妹・理途ことがリビングに降りてきて僕を見るや否や言う。

「お兄ちゃん、すっごいエッチになったね」と。

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