第3話

小学校4年生に上がる直前の話をしようと思う。

不仲だった父と母の中は溝が深まるばかりで、事態は深刻化していた。


もうじき学年が変わるとき、朝起きたら母の姿がなかった。その日は父が居たので日曜日だったかはっきりと覚えてないが、少しの荷物をまとめて母は家から出て行った。


そこからの生活は一変した。父や兄はもちろん家事炊事ができるわけでもなく、唯一家族の中で家事全般が出来てしまったのが私だ。


朝起きて父と中学に上がった兄のお弁当作りから始まる。眠い目をこすって台所に立つ。同時進行で洗濯機を回す。洗濯機は昔のもで二層式洗濯機だった為、脱水するごとに手作業で脱水機に移す。この作業が何より嫌いだった。


お弁当が出来終わる頃、父と兄は起きてきて今度は朝ご飯を作る。朝なので簡単にお味噌汁にご飯、お魚や目玉焼きだった。

父たちが朝ご飯を食べてる間、今度は洗濯ものに取り掛かる。その時洗濯機から小銭が出てくることがあって、ラッキーだと500円少なくても数百円はあった。

父に小銭出てきたよと素直に渡すと、洗濯した人の特権でお前にやるよ!と言われ、子供だから素直に喜んだ。


学校の登校ギリギリまで家事に時間を奪われ、自分の身支度に追われる。登校班に間に合う日もあれば、間に合わずあとから行くこともあった。


そんなこんなで毎日が流れていき、無事4年生に上がった。


この頃夕飯は食材を配達してくれるサービスを利用していた為、夕飯は簡単だった。付属のレシピ見て手際よく作っていく。父が帰宅する時間を見計らって計算して作るのがなかなか難しくて、慣れるまで時間がかかった。


食事は必ず3人で食卓を囲む。父は帰宅と同時にお酒を飲む人だったので、おかずをつまみに吞んでいた。兄は食べ盛りで何回も「おかわり」とお茶碗を渡された。

父は最初はビールから始まり、梅干し入りのお湯割りに代わる。

それも全て私任せで、飲み終わると次作ってきてと完全に嫁扱い。

兄も食べるだけ食べて片付けもしない。


食後一息つく間もなく、今度は洗い物に追われる。お弁当箱から夕飯で使った食器とにかく夜の洗い物は量が多かった。

夏はいいのだけれど、冬は氷のような冷たい水での洗い物が本当につらかった。


明日のお弁当のメニューを考えながら、乾いた洗濯物を畳む。我ながらハードだった。


そんな生活が数か月続いたころ、日曜日に朝洗濯機が動く音で目が覚めた。


私は胸騒ぎがして2階の部屋から洗濯機まで急いだ。


そこには母の姿があって、私は泣きながら「お母さんどこ行っての」と泣きついた。


「ごめんね、お母さん少し体調が落ち着いたからお家のこと心配になって来たんだよ」


久しぶりに母に会え、家事からも解放された。その日はゆっくり友達と遊んだ。


夕方が来て「そろそろお母さん帰るね」少しの期待は粉々になったけど、仕方ないなってすぐに諦めた。

それから母はたまに来ては家の掃除など、私が手の回らない部分を手伝ってくれた。


私は掃除が苦手でいつも来る母に「どうしてこんなに汚すかなー」と言われてたけど、他にやらなきゃいけない事あるのわかってる?って思ってた。


またいつもの暮らしに戻った訳だけど、この頃から少しずつ私の反抗期が始まってくる。家のことはしないといけないのは分かってたけど、友達はみんな遊びに夢中で少し羨ましかった。


でも現実は甘くなくてやらないといけない。

とりあえず家事は嫌いではなかったから、文句を言いながらもやっていた。


父も兄も私はして当然になっていたので、これまたムカついた。

唯一の癒しは愛犬ロッキーだった。人懐っこくていつも傍にいてくれて、お散歩に行くと嬉しそうにはしゃいでるのを見るのが好きだった。

雷が大嫌いで空が怪しくなってくると、そわそわしだし雷が鳴り始めると収まるまで抱っこだった。プルプル震えながらしがみつき、大丈夫だよと頭をなでて落ち着かせていた。


毎日に追われて嫌になった日もあったけど、とりあえず何とか過ごした。

気づけば進級の季節で、あっという間に5年生になってしまった。


5年生の時に転校生が入ってきた。色白の可愛い女の子だった。私も転校経験があったから、すぐに話しかけた。「学校のことでわからないことない?」初めての会話はそんなもんだった。話していくにつれ家がすごく近いということが分かった。

「一緒に帰ろうよ!」とどちらともなく自然とそうなり、仲良くなるに時間はかからなかった。


学校が終わってランドセルを家に置いて、私はすぐにその子の家に遊びにいく。また別の日はその子がうちに来るを繰り返していた。

その子もミニチュアダックスを飼っていて、いろいろ話が合った。


この子とは大人になった現在も付き合いがある。一番の親友だ。この先も出てくるのでYちゃんとしておく。


私が5年生、兄が中学2年生。お互い多感な時期で、仲が良かったのはどこいった?と言わんばかりの兄妹喧嘩をするようになった。

兄は前にも記述したが、気が小さくどちらかというと虐められる感じの男の子。

私は全く逆で、売られた喧嘩は買うし、兎に角喧嘩っ早かった。

だけど力ではさすがに勝てない。

口喧嘩してるうちにヒートアップしていき、よくみぞおちにグーパンされたもんだ。


後で聞いた話だが兄はやはり学校でヤンキー達に、よくからかわれてたらしい。

そのストレスを私にぶつけてたんだろう。


お兄ちゃんとも仲が悪くなり、私も友達と遊ぶのが楽しくて門限が17時だったのが鬱陶しかった。


門限守らないと父に怒られるし、だったら家に素直に帰って家事をしてたほうがいい。


淡々と家事をこなし夕飯の時、喧嘩した兄は一言もしゃべらず黙々と食べる。お父さんが話しかけたときは受け答えするけど、私の話には耳も貸さなかった。


まぁいいや、めんどくさいし放っておこう。と割り切って残りの家事をした。


土日は朝から遊べる貴重な日。Yちゃんと約束して2人で遊んだ。最初は一緒に本を読んだり、絵を書いたりと子供らしい遊び。


それがいつの日にか多感な私たちは、あれしてみたい、これしてみたいで溢れた。


まず初めに目を付けたのがたばこ。当時まだ自販機で誰でも変えてしまう時代だったから、比較的手に入りやすかった。

でも買ってる所見られたらだるいねってなり、カートン買いしていた父の煙草をひと箱拝借した。


2人でドキドキしながら煙草に手を伸ばし、火をつけた。


「ゴホッ、うえーまずい」二人で顔を見合わせて笑った。

でもそれもすぐに慣れ、お互いたばこは常習的になっていた。


昼間はうちは母もいない、父は仕事、兄は学校と誰もいない空間ができた。

これは使わない手はないと、Yちゃんに話すと朝から夕方まではうちで遊ぶことになってた。

飲み物とたばこ、好きな音楽聞きながら1日たわいもない話をして過ごす。

私は少し家事から解放され、自由に慣れた気がして嬉しかった。

平日だったので学校は2人でさぼり(笑)よく𠮟られたけどそんなのどうでもよかった。


中学2年になった兄は少ないながらも友達ができ、よくうちにも遊びに来てた。

その中の1人の人と仲良くなって、付き合うことになった。

今思うと恐ろしい。中学2年生と小学5年生。何しでかすかわからない組み合わせ。そう、ここから私の心は少しづつ壊れていく。



うちは泊まりに友達が来るのはOKな家だったので、よく遊びに来てた。

兄妹両方の友達が集まった時は、合同で遊んだりもした。


ある週末の夜その彼氏がお兄ちゃんと遊ぶという名目でうちに泊まりに来た。

一緒にご飯食べて、遊んで部屋は別だったので眠りについた。



夜中なんか体触られる感覚があった私は、びっくりして起きた。そこには彼氏の姿があって、夜這いに来たらしい。一瞬何があったのか理解できなかったが、彼氏が「シてみたい」と言い出し、みんなが寝静まった夜中ことは進んでった。



が、「痛すぎてそれどころじゃない!!もうやめて」と彼氏を振りほどいて、兄の部屋に戻るよう言った。


だけど彼氏は諦められなかったようで、週末に泊まりに来てはの繰り返しだった。


数回回数を兼ねたとき、何とか行為に至ることはできた。彼氏は満足そうだったが、私は痛くて仕方なく早く終われとばかり思ってた。


そんなことが起きた5年生のおわり。Yちゃんにもちろん報告した。

「えー大人の仲間入りしたんだ!おめでとぉ」

何もめでたくないよあんな苦行…(笑)


私たちは学校に行ったり、ずる休みして遊んだりを続けていた。


進級シーズン到来。Yちゃんと同じクラスになれるかな?と思っていたけど別のクラスになった。

でもクラスが変わっても相変わらずつるんで遊んでた。



4・5年生は濃ゆい年だったかな。いや、でもこれから書くほうが重たい内容ばかりになります。まだまだ序の口かな?


次回は6年生からの事を綴ろうと思う。まだ先は長いなぁー…


暇つぶしになるかわからないけど、良ければこれからも読んでくださると幸いです。

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