第7話 混浴は混浴だけど①

「よし。では真っ先に温泉に行くぞ、温美あたみ


「え? も、もう行くっスか? お食事を先にとか言ってなかったっスか?」


「ああ。腹が減っているしメシを先にとも思ったが、食後すぐに温泉に入るのは体に良くない。メシを食った後は最低でも30分は入浴を控えるべきだからな。だが、そうすると他の社員が到着してしまうかもしれない。それだとせっかくふたりだけで温泉を貸し切れるチャンスを逃してしまう。だからやはり先に温泉に行くべきだ。

 大丈夫だ、温美。メシは頼んだが準備に時間がかかる。その間にサッとひと風呂浴びるくらいで済ませる作戦だ」


「い、いや、でもちょっと待って欲しいっス」


「ダメだ、温美。待てん。事は一刻を争うのだ」


「で、でもまだ心の準備ができてないっス」


「そんな物はいらん。ただ服を脱ぎ捨て、湯にかる。それだけだ」


「そ、その服を脱ぎ捨てるのが問題なんス!」


「温泉に入るのに服を着たままは入れんだろう。温泉にはすっぽんぽんになって自らをさらけ出し、全身全霊を以ってからなければならない」


「だからそのすっぽんぽんがまずいんス! 人前ですっぽんぽんはダメっス!」


「大丈夫だ、温美。こんな山奥。俺たち以外に誰もいない」


「いや、だから有真ありまセンパイがいるじゃないっスか!」


「俺がいるからなんだ? 温美、お前はまさか俺が覗き見をするとでも思っているのか? 俺はそんな卑劣で破廉恥な事を断じてせんぞ」


「覗き見どころか一緒に入るんスから丸見えっス!」


「はぁ~? 何言ってるんだ温美。俺は一緒に入ったりしないぞ」


「……え? え? で、でも、ここの温泉は混浴なんスよね?」


「そうだな。男湯と女湯の区別はない」


「じゃ、じゃあ一緒に入っちゃうじゃないっスか」


「いや、入らん」


「へ…? は、入らないんスか? そ、それはなぜっスか?」


 温美は一体何を勘違いしているんだ?

 面倒になった俺は百聞は一見に如かずと思い、温美をとにかく温泉に連れていくことにした。




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【後書き】


 私の小説を読んでいただき、本当にありがとうございます。

 (⋆ᵕᴗᵕ⋆)ウレシイデス


 一緒に入らない理由は次話で明らかになりますが、単純な理由なのでもうお気づきかもしれませんね(汗

 その上で、そろそろ事件が発生し、物語が進展します。

 乞うご期待いただけますと幸いです♪

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