第11話 寝取られたとしても……今は耐える

 雑談を交えて待つこと数時間。

 ついに放課後を迎えてしまった。

 紅音の動向が気になるが、今はこっちが最優先だ。

 寝取られたとしても……今は耐えるしかない。


 世界を、運命さえ変えられれば問題ないのだから。


「そろそろ来るかな、古河さん」

「多分ね」


 確実ではないのかな。

 来ることを祈ってしばらく待つと――。


 ガチャっと音がして扉が開いた。


 きたかっ……!



「こんにちは~。部長」



 そこに現れたのは……見たことのない女子。

 いったい誰なんだこの小さい女子は。

 ちんまりしていた可愛らしい。

 ショートヘアで明るそうなコだなと思った。



「紹介するよ、四之宮くん。彼女は後輩の日永だ」

「えっと……はじめまして。日永ひなが あさひです」



 古河さんの紹介のあと自己紹介を受け、俺も名乗った。



「俺は四之宮 陽。君が噂のアプリ開発をしてくれる人……?」

「あ~、タイムリープアプリですか。本当に使えるんですね……!」


 俺以上に驚く日永という女子。

 この反応、現時点では開発に成功していないのか。


「って、タイムリープアプリ?」

「そうですよ。先輩曰く、あと三日後に完成するアプリです」

「なんだって……」


 そうだったのか。

 このコが開発したアプリが俺のスマホにインストールされたわけか。でも、なんで……? あの不思議なURLを日永さんが送ってきたのだろうか。


 まあいい。

 それよりもアプリのアップデートが最優先なのである。


「でも、四之宮さんはもう完成したアプリをお持ちのようですね」

「あ、ああ……知っているのか」

「先輩から聞きましたから」


 古河さん、俺のことを熟知しているようだな。

 実は結構いろいろ知っているんじゃ……。

 そう思うとちょっと怖くなってきた。


 あの初めてあった時すらも、俺を知ったうえでの……。


「それで、日永さんならタイムリープアプリを改良できるのか?」

「もちろんです。その代わり、アプリの中身を見せてもらうことになりますけどね」

「分かった」


 スマホを日永さんに預けた。

 少し心配だけど、信用できるのは彼女しかない。

 これでもしアップデートできれば、これで今度こそ紅音を救えるかもしれない。

 更なる過去へ戻り、澤野の行動を阻止し……寝取られない世界にする。


 それが俺の使命だ。


 日永さんは、部室にあるパソコンでアプリの中身を調べていた。



「古河さん、彼女はいったい何者なんだ」

「天才プログラマーってところかな」

「マジか」

「うん。彼女は数年も経たずAIを作るのさ」

「なんだって……」



 今も世間を賑わせているAI。それを作るって……天才かよ。



「しかもただのAIじゃない。本物の人間のようなAIだよ」

「ヤバいなそれ。人間そのものってことか。でも、タイムマシンやタイムリープアプリに関係あるの?」

「大ありさ。そのAIがないと開発が進まないってこと」


「なるほど! 人間では発見できない物質だとか計算がAIなら出来るってことだな」

「ご名答。それにはWicrosoft Mindows 2000も必要で……おかげで2036年にタイムマシンは完成したわけ」



 そういうことだったのか。

 納得していると日永さんが「解析完了です」と声を上げた。


 もう!?

 さすが天才だな。早くて助かる。

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