第3話 寝取られ悪夢再び

 まだ昼休みがある。

 食堂へ行ったはずの紅音を探しに行く。

 けれど、紅音の姿はなかった。

 もう昼食を済ませたのか。


 本来なら俺と一緒に行動していた。だが、今は違う。

 ……となると、この後は教室へ戻ってゆっくりと談笑していたような。


 それを思い出し、俺は教室へ。


 走って向かい、教室の中を確認。しかし、紅音の姿はなかった。



「……いない」



 行動パターンが変ったということなのか?

 俺があの時とどまったばかりに?


 まさかな。不安が波のように押し寄せている中、同じクラスの女子・佐久間さくまさんが話しかけてきた。


「四之宮くん。もしかして、若葉さんを探してるの?」

「う、うん。なにか知ってる?」

「さっき教室に戻ってきたけどね。直ぐにどこか行っちゃったよ」

「マジか……!」



 それを聞いた瞬間、俺は教室を飛び出た。

 俺を探しに行ったのか。

 それとも……あの“男”と会うつもりか。もしそうなら、ヤツの情報を少しでも手に入れなければ。

 今の俺には情報が圧倒的に不足しているのだ。


 スマホを取り出し、電話してみるものの繋がらなかった。


 ……な、なんで!


 廊下を歩き、すれ違う人たちに紅音のことを聞いた。有名人だからな、知っている人の方が多いはず。

 その通り、紅音の目撃情報があった。


 どうやら上の階へ向かったと。

 それはつまり三年の教室のある場所だ。


 やっぱり、あの男のところへ向かったというのか……!


 階段を上がっていく。

 三年の廊下を確認するが、それらしい姿はない。どこだ……? どこに行った?


 ゆっくりと歩いて行く。

 ふと視界に入った『非常階段』。そこに人の気配を感じた。


 そこに……いるのか?



 近づくと話し声が聞こえた。



『……助かりました、若葉さん』

『…………っ』



 こ、この男の声はあの時の!

 本来なら三日後にあの教室で……いや、違うんだ。それ以前から紅音と関係を持っていたんだ。俺の知らないところで二人は付き合って……?

 そんなわけがない!

 紅音は俺を好きだと言ってくれたんだ。

 だから、高校だって一緒になったというのに。

 足りない頭で必死に勉強して、ここまで来たんだ。

 なのに、あの男はなんなんだッ!


 扉に近づき、俺は聞き耳を立てる。

 なにか音が聞こえ、そして、それがあっては・・・・ならない・・・・行為であったことに脳が凍りついた。


 な……!



『そうですよ、若葉さん。その調子で僕の下半身を癒してください』

『…………はい』



 馬鹿な、そんな馬鹿な……!!

 紅音はあの男のモノを口で……!?

 ありえないだろ!!


 …………いや。


 未来は最悪なのだ。

 あの光景がフラッシュバックして、俺は吐きそうになった。


 逃げ出したくもなった。


 だが、ここで逃げても得られるものはなにもない。

 俺は再び、ひきこもりになって世界に絶望するだけの人生を送る。……もう、そんなのは嫌だ!


 辛いけど、俺は“男”の情報を手に入れる為にその場にとどまる。



『いやぁ上手いですね、若葉さん……。そんなに必死にされると持ちません』



 くそ、くそ、くそがっ!!

 ――いや、冷静になれ俺。

 この男、三年の先輩かと思ったが……さっきから敬語だ。俺と紅音は二年。なのにあの喋り方はおかしい。

 年下に敬語……?

 それは変な話だ。

 もしかして、三年生ではないのかもしれない。



『……さわくん。もうこれっきりに……』

『そうはいきませんよ。若葉さん、あなたにはもっとシてもらいますよ』



 まさか紅音は強要されているのか。


 だとしたら許せねえ!

 今すぐ介入してボコってやろうかと怒りが沸いてきた。

 そうだ。俺には過去へ戻れるアプリがある。

 ここで問題が起きても戻ればいい。

 何度もやり直せばいいんだ……!


 だから……!

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