GWの予定は?②
――本日の挨拶運動を終えた昼休み。
今日も今日とて購買部にて、購買部で幾つかのパンを見繕い、紙パックの甘ったるいコーヒーを購入する。
スマホからメッセージの通知音が鳴る。
グレーに染まるスラックスのポケットからスマホを手に取り目を通す。
メッセージの相手は
――体育館裏で待つ。
若干、引き攣った笑みを浮かべる。……何これ、果たし状?
こんなメッセージを送らなくても、俺の昼食場所は教室ではなく体育館裏である。
レジ袋に詰まったパンとコーヒーを提げて、俺は体育館裏へと足を進めた。
――――――――――
――――――
――
「遅い」
体育館裏に辿り着いた、俺に対する彼女の第一声はそれだった。
顎に両手を添えて、自身の太ももの上で頬杖を付く奈央は、眉間に皺を寄せて不機嫌そうに此方へじと目を向ける。
「知るか」
と、苦笑気味に俺は彼女に言葉を返した。
「それで、あの果たし状みたいなメッセージは何?」
「特に理由はないけど? 私はただ、あんたをお昼に誘っただけよ」
なるほど、実にわかりづらい。
「早く座りなよ」
自身が座っていた所にスペースを空けて、ぽんぽんと手で促しながら奈央は言った。
俺は奈央の隣に腰掛ける。
ぱかっと弁当箱を開けると、途端に彼女はげんなりとした表情を浮かべた。
「……ピーマンが入ってる」
どうやら弁当の中に嫌いな物が入っていたらしい。
「ねえ、
「頑張って食べなさい」
遠回しに諦めろと言葉を告げる。
「……食べてよぅ。私、ピーマンが野菜の中で一番苦手なんだって……知ってるでしょう?」
……この幼馴染、自分が苦手な物を俺に処理させるためにお昼を誘ったのではなかろうか?
「霞のカツサンドと私のピーマン交換しよ?」
「等価交換って知ってる?」
カツサンドとピーマン、どう見ても割に合わない。というか、カツサンドは俺のメインなので奈央に譲る気はございません。
「今なら私のあーんが付いてきます!」
拳を上げて、むふっーと自信満々な表情を浮かべる奈央。
「……要らねぇ」
「は?」
急に声のトーン変えるのやめてくれません? シンプルに怖い。
俺は怖ず怖ずと彼女に問うた。
「……今、キレるところあった?」
此方を睥睨しつつ奈央は言う。
「霞が私のあーんを拒否するのは、なんか腹立つ。何で?」
「何でって……そりゃあ……恥ずかしい……から」
段々と小さくなる俺の言葉に、奈央は一瞬目を見開く。直ぐ様、くすっと笑みを浮かべて彼女は言った。
「なにそれ、今更じゃん。ウケる」
「ウケねぇよ」
「此処には今、私とあんたしか居ないじゃん。ほら、甘んじて受け入れて。――はい、あーん」
「……あーん」
箸に掴まれたピーマンを奈央は俺の口元まで運んだ。
「霞のカツサンド頂戴。ほら、あーん」
桜色に染まる艷やかな唇を開けて舌を覗かせる。……お前も食べさせろということらしい。
俺は袋からカツサンドを取り出して一切れ奈央の口元へ放り込んだ。
「美味っ」
仄かに頬を赤らめながら、口元の笑みを絶やすことなく彼女は言った。
紙パックのコーヒーを空けてストローを差す。
甘ったるいコーヒーをストロー越しに飲んでいると、奈央が何かを思い出したかのように口を開いた。
「霞って、GW
鬼かな? と、涼し気な顔で恐ろしいことを口にする我が幼馴染。
口に含んだコーヒーを飲み終えて、俺は奈央の方へ視線を移して言う。
「フル出勤は無理。一日くらい家でゆっくりしたい」
「ふうん。……じゃあさ、霞と私の休みを合わせてデートしようよ」
「……俺、一日くらい家でゆっくりしたいって言ったよね?」
「……えっ、まさかのお家デート希望?」
「そんなこと一言も言ってないんだよなぁ……」
お家デート云々は置いといて、奈央さんや。貴方、バイトがあろうがなかろうが――
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