GWの予定は?

 ――奉仕活動4日目。


 大きな欠伸を一つ吐きつつ、穏やかな風が頬を撫でた。連日の早朝登校に眠気が止まらない。


 私立浅倉あさくら学園の校門まで辿り着いたタイミングで、前方に見知った人物が歩いていた。


 私立浅倉学園生徒会副会長、竜胆りんどう三玖みく


 ……よし、引き返すか!


 彼女に気づかれぬ様、ゆっくりと踵を返す。


「――何をしているの駄犬」


 竜胆りんどうは振り向くことなく俺に声を掛けた。背筋にだらだらと冷や汗を掻く。竜胆っていつの間に人間やめてた?


 日に日に竜胆からの「駄犬」呼ばわりに慣れつつあるどうも俺です。


 振り向き交じりに眼鏡をくいっと上げる竜胆。


「何をグズグズしているの? 早く来なさい」


「……はいはい」


 俺は足早に竜胆の元へと重い足を上げた。


 さも当然とばかりに、彼女から問答無用で鞄を持たされる駄犬――じゃなかった俺。


 本日の旗当番は竜胆ということらしい。


 生徒会室へ荷物を置いて、挨拶運動の旗が置いてある場所まで足を進める。


 竜胆が手を伸ばす前に、俺は挨拶運動の旗を持ち上げた。


「……」


「えっ、何?」


 ぽかんとした表情を浮かべる竜胆に、俺は首を傾げる。


 竜胆はくすっと目を細めて口を開いた。


「後で上から踏んであげる」


「要らんわ!」


「……そう、もちろん冗談よ。ありがとう」


 すっーと、視線を逸しながら竜胆は言った。……あ、これ絶対冗談じゃないやつだ。


 トングとゴミ袋を持った竜胆に続いて、俺は校門まで踵を返した。


 ――8時05分


 校門前にて――九条くじょう先輩、俺、二階堂にかいどう先輩、竜胆、椎名しいな葛原くずはらの順で並び浅倉生に向かって「おはようございます」と挨拶を口にする。


 浅倉生の返事は疎らだ。


 ふと、談笑交じりに友達と歩く――幼馴染の姿が目に入った。


北崎きたざき君。他所見禁止」


「他所見なんて、してませんけど!?」


 流し目で俺を見る九条先輩に、思わず声を張り上げた。


「まぁまぁ、会長も落ち着いて」


「なっ!? 僕は至って冷静だぞ凪紗なぎさ!」


 ぷんすか頬を小さく膨らませながら、九条先輩は言った。


 九条先輩を宥めるような口調で、はいはい――と受け流す二階堂先輩。なにそれ強い。


 彼女からふわりと漂う甘いフローラルな香水の香りが、俺の鼻孔をくすぐった。


 不意に周囲の生徒達から、ちらちら視線を感じる。


 見れば、奈央なおがかつんかつんと此方へやって来た。


「おはようかすみ


「おっす」


 続けて、九条先輩へと視線を移して彼女は言う。


「おはようございます生徒会長」


「……あぁ、おはよう。今日は生徒達の面前で彼に抱きついたりはしないんだね?」


「しませんよ? 昨日は会長が言った通り、仕返しのつもりでやった行為なので。やるならお互いの部屋でやります」


「やりません」


「なにそれ卑猥」


「二階堂先輩ちょっと黙って?」


 口元を手でおさえてにやにやしながら言う二階堂先輩に続き、九条先輩は眉間に皺を寄せて、少し顔を赤らめながら声を張り上げた。


「北崎君!!」


「待て待て待って? 落ち着いて人の話を聞いてください九条先輩。俺は何もやってな――痛い痛い痛い!!」


 物凄い握力で俺の腕を掴む九条先輩。奈央は、恍惚とした表情を浮かべて再度口を開く。


「初めて霞の体温を肌で感じたのは、小学2年生の時。12月24日――クリスマスイブの時でした」


 ……それ、クリスマスイブに家へ泊まりに来た時の話。


 というか、奈央が「寒い」って言って、勝手に俺の布団の中に入って来た時の話じゃん! 人を抱き枕みたいに扱ったやつ。


 ……わざとだろ、これ絶対わざとだろう!? ひょっとして奈央の奴、幼馴染を社会的に抹殺しようとしてる? …………なんか似たようなこと前に言ってた!?


「……うわぁ、後輩くん。さすがにそれは早過ぎて引く」


 ……うん、何言ってるのこの人!?


「北崎君!!」


「いやいやいや、二人共騙されないでください。ニュアンス的にはそれっぽく聞こえますが、言ってることは全年齢です!!」


 ゴミを見る目で竜胆が言う。


「変態」


「何でだよ!? 俺は何もしてねええええええぇ!!?」


 断末魔にも似た俺の声音が校門前に響いた。



 ――その後、必死に説明をして誤解はなんとか解けた。


 本日の挨拶運動は幕を閉じた。


―――――――――――――――――――――――

サブタイトルの後ろに2〜3と数字が付く予定の話は、終わりに後書きを書いていますが……今回は書きます!

作品フォロー、いいね♡レビュー★、初レビューコメントありがとうございます!嬉しい!

(拙者の中では変態枠)主人公北崎霞と(デレる時はデレる)幼馴染ヒロイン百瀬奈央をよろしくね!

読んでくすっと笑って頂けたら幸いです。


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よろしくお願いしますm(_ _)m

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