幼馴染にご相談

 彼女は、食べ終えたチョコレートアイスバーの棒を俺が持つビニール袋に入れる。


うち寄ってく?」


 家路へ辿り着いた奈央なおは、玄関扉に手を掛け小首を傾げて問うた。


「行く」


 彼女に相談したいことがあった俺は、幼馴染の言葉に首を縦に振った。


「あら、いらっしゃいかーくん」


波瑠はるさん、お邪魔します」


 制服姿のまま、すたすたリビングまで顔を出すと、柔和な笑みを浮かべて波瑠さんは言った。


「なーちゃんは?」


「2階です」


「そっかそっか」


 納得したように、こくこく小さく頷く波瑠さん。


店主マスターは居ないんですか?」


「お父さん? そういえば、15時くらいに整骨院へ行ってから帰って来てないね」


 涼し気な表情かおで言う波瑠さんに、俺は言いたい。それ、本当に大丈夫ですか? 店主マスター、誤って路上に倒れ込んでたりしません?


 がちゃ――と、ドアノブに手を掛けて、奈央がリビングへとやって来た。


 黒のタンクトップに、黒の紐付きショートパンツが目に付いた。


 思わず奈央から視線を逸らす俺。けれど、彼女のおっぱいについつい目がいっちゃう……だって男の子だもん!


「いやいや、あんた、ちらちら私の胸見過ぎだから」


「……すみません」


 彼女と目を合わせることなく、口をおさえて赤面する俺を見て、奈央はにやにや悪戯染みた笑みを浮かべた。


「おねえちゃん麦茶頂戴」


「はいはい」


 目を細めて首肯しつつ、波瑠さんは冷蔵庫から麦茶が入ったアクリル製のピッチャーを取り出した。


 コップに氷を入れてきんきんに冷えた麦茶を注ぐ。


 波瑠さんにありがとう――感謝を告げて奈央は姉から受け取ったコップに口をつけて一気に飲み干した。


 彼女がテーブルの上にコップを置いたタイミングを見計らい、俺は二人に向けて口を開いた。


「二人に相談したいことがあるんだ」


「「?」」


 俺の言葉に二人は顔を見合わせて、ん? と、小首を傾げた。


千尋ちひろに男ができたかもしれない」


「真顔で何言ってんだこいつ」


「聞きましょう」


「お姉ちゃん?」


 木製のダイニングチェアに腰掛けながら、波瑠さんは顎に手をあて口角を吊り上げた。


「続けて」


「俺は今週、奉仕活動の一環で、朝から私立浅倉学園の校門前で挨拶運動をしています」


「ほぅ…………えっ、なんで?」


 途端に波瑠さんは、きょとんとした表情を浮かべた。奈央の方へと視線を移す。


「あれ、言ってなかったけ?」


「なーちゃん聞いてないよぉ」


「後で話して上げるから、とりあえずかすみの話を聞こう」


「……わかった。続けてかーくん」


 俺の方へ向き直った波瑠さんに促されるがまま――二度口を開いた。


「はい。俺は校門前で挨拶をしていると、度々千尋が見知らぬ男子生徒と一緒に登校しているところを目にするんです」


「いや、それ只の男友達では? もしくはクラスメイト」


「俺が一番千尋を愛しているのに!」


「……うわ、このブラコン兄貴めんどくさ!?」


「そうね、これは由々しき事態よ。かーくんがちーちゃんに直接話を聞いてみるしかないわね」


「やはりそうですか!」


 きりっとした表情を浮かべて言う波瑠さんに、俺は首を縦に振った。


「わくわく♪」


「……お姉ちゃんはシンプルに面白がってるだけだよね?」


「早速、ちーちゃんをこの場に召喚しましょう」


「お願いします!」


 ぽちぽち自身のスマホを弄る波瑠さんを流し目に、なんだこいつら――と、奈央は呆れ混じりに言った。


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 暫くして玄関扉が開いた。


 波瑠さんにスマホで呼ばれ、すたすたリビングへと顔を出した千尋ちひろは、苦笑気味に口を開いた。


「あれ、にいさんも来てたんだ」


 千尋は俺と同じく、私立浅倉学園の制服ブレザーを着込んだままだった。


「千尋」


「何?」


 俺は額に脂汗を滲ませながら、千尋に視線を逸らすことなく言う。


「俺達に隠してることがあるだろ」


「別にないよ」


「嘘つけ! 彼氏ができたんだろう!?」


「聞き間違いかな?」


 強張った笑みを浮かべて言う千尋。


かすみが挨拶運動の時、千尋と男子生徒が一緒に歩いているところを何度も見たんだって」


 奈央なおが千尋に向けて言葉を続ける。


「……あー、田中たなか君? ただのクラスメイトだよ」


「だよね♪」


「そんなばかな!?」


「……ばかはあんた」


 驚嘆に満ちた声音を上げる俺に、奈央は小さなため息を吐く。


「というか、僕が男子生徒と一緒に登校してるイコール付き合ってるなんて発想どうにかなんない?」


 額にうっすらと青筋を立てつつ、千尋は口角を吊り上げて再度口を開いた。


「シンプルに――気・持・ち・悪・い♡」


「ぐはっ?!」


 テーブルの上で悶える俺を余所に、そりゃそうだ――と、奈央は小さく呟いた。


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メガニケエヴァコラボイベントキタァー!けど、引き弱だから引ける自信ない!


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