北崎と百瀬②
授業の終わりを告げる鐘が鳴り響く昼休み。
2年C組の教室は喧騒に包まれていた。
「
「あん?」
購買部へ
――葛原拓真。
「昼飯食べ終わったら食後の運動がてら、クラスの何人か誘って体育館でバスケしようぜ」
「嫌だよめんどくさい」
「それじゃ、13時に体育館集合な! 室内シューズは忘れずに持って来いよー」
「おい、人の話はちゃんと聞けよ
「俺は
「「……」」
「……おい、今なんて言った?」
「大丈夫大丈夫、最初はちゃんとバスケするつもりだから」
「絶対する気ないだろう!!?」
足早に教室から後退る葛原に向けて、俺は声を張り上げながら言った。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
購買部で、無事パンと飲み物を買った後、体育館裏まで足を運んだ。昼食を摂るときはいつもこの場所である。
快晴の空の下、校庭を見渡しながらパンを食べることが昼休みを過ごす俺の日課になっていた。
ちなみに、
大丈夫、お兄ちゃん慣れてるから。弟に無視されたからって泣いてなんかないから。
袋からメロンパンと紙パックのカフェオレを取り出す。
メロンパンの包を開封したタイミングで、スマホからメッセージアプリの通知音が鳴った。
えっ!? まさか、本日ついに千尋からの返信が――――、
「――あ、なんだ
「――なんだとはなんだ、失礼ね」
「うおっ、びっくりしたー」
不意打ちとばかりに、奈央は眉間に皺を寄せつつ、自身のスマホを手に持ちながらじと目を向けて、すたすた此方へやって来た。
ディスプレイに表示されたメッセージアプリには、
あんた今一人?
という文字が表示されていた。
体育館裏の出入口扉前にある段差が少ない階段に腰掛けていた俺を見て奈央は口を開く。
「というか、やっぱり
「あ、はい」
奈央に言われるがまま、自分が独占していたスペースを体を端に寄せて空ける。
奈央はちょこんと隣に腰を下ろした。手には小さな包に入った弁当箱を持っている。
俺はすぐさま首を傾げて彼女に
「いつもは教室でクラスメイト達と一緒に弁当食べてなかった?」
「……さっきまで呼び出されてたの」
若干、不機嫌そうに言う奈央。
「先生に?」
「名前も知らない後輩に」
「……ひょっとして、また告られたのか」
「YES」
「返事は?」
「いつもの常套句、ごめんなさい。好きな人が居るのでー」
「えー……今月何人目?」
「……んー、10人目?」
「さすがですお嬢様」
言って、メロンパンを一口サイズに千切ってぱくりと口の中に放り込む。
「別に」
と、奈央は低い声音と共に小さく呟いた。
「ねえ、
「ん?」
「私のピーマンの肉詰めハンバーグと霞のカツサンド交換しない?」
包から弁当箱を取り出して、ぱかっと蓋を開けたと同時に弁当の中を凝視すること数秒、俺が袋からカツサンドを取り出したところを見て――彼女は言った。
「やだ」
「なんでぇぇ……」
俺の言葉に段々声が弱々しくなる幼馴染。なんでと言われても返す言葉は一つだ。
「好き嫌いせずに食べなさい。
波瑠さんとは奈央のお姉さんである。
「……うん、わかった」
俺の言葉に奈央は首を縦に振る。続けて彼女は口を開いた。
「ハンバーグは私が食べるからピーマンは霞が食べて」
「好き嫌いせずに食べろや」
俺は笑みを絶やすことなく、語気を強めてはっきりと言った。
……結局、奈央はブレることなく、ピーマンとハンバーグを取り分けて、箸で掴んだピーマンを「はい、あーん♡」と柔和な笑みを崩すことなく、俺の口元へねじ込んだ。半ば強引である。
……ざけんな!!
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