第3話 入院

「………ん、んん…?」


 視界がぼやけて、くっきりと鮮明に。すると白い天井が目についた。


 ここどこ…?また訳の分からない世界に…


 とか思っていたら「聡真そうま…?!」と聞きなれた女性の声が聞こえた。

 実は僕には長年付き合っている彼女が…なんてことは無く、母親の声だった。


「……えっと…」


「母さんよ!分かる?今お父さん呼ぶからね!」


 と声をかけられた。

 記憶は大丈夫そうだ、今までの事全てを覚えている。事故に遭ったことも全て。

 順当に考えて、事故に遭い、何らかの怪我をして、病院に運ばれたとかそんなんだろう。


「お父さん、仕事抜け出してくるって」


「え、えぇ……」


 家族仲は良いが何も仕事をほっぽって来るものじゃないだろうに、生活に直結するんだから。

 子供の僕としては心配してくれるのは有難いが、一生続くものを蔑ろにしないでほs


「貴方、2日間眠っていたんだから……!本当に心配したのよ!」


 すいませんでした。



 ♦



 その後すぐに、と言っても1時間くらいして父親が来た。


 その間僕は母親から大体の説明を受けた。


 事故に遭い、やはり怪我をしたようだ。当たり所が良かったのか、それとも日頃の行いに救われたのか、どちらにせよとても運が良い状態。

 とはいえ足を怪我したらしい。医者によると半月はかかると。そんなにかかるかぁ…?と思っていたが骨折していたらしい。骨が、ぽっきりと。


 真正面から当たった気がしたが…まあ、本当に"運が良かった"のだろう。


 周囲の人がすぐに救急車を呼んだのも功を奏したらしい。ちなみに庇った子供は無傷らしい。

 良かったぁと漏らしたら「馬鹿者!親を心配させてまで助けるものじゃない!」と叱られた。


 いまいち賛同は出来ないが……まぁ、親心なんてそんなもんなんだろうな。



 ♦



聡真そうま……お前と言うやつは……」


 父さんが来て第一声がコレ。喜ぶでもなく、叱るでもなく、呆れられてる。


 仕事抜けだして来たんだから呆れてんのはこっちだよ。


「………体は大丈夫なのか」


「んー……痛みとかは、あんまり?」


 骨折したという事実に対し現実味が無いからかもしれない。それかまだぽやっとしている頭のせいかも。


「お医者様からはやっぱり入院ですって」


「完治するまでか」


 と、子供の前で即金の話をするのか。

 とはいえ入院は家計だけじゃなく僕にとっても大問題だ。


 大学1年で単位取れませんでしたは笑えない。流石に配慮はされるだろうが……いやするのかなあ……どうなんだろ。

 教授に直談判するしかないのか……陰キャだから先生と真面に話したことがない。友達だって居ないんだぞ。



「じゃあ聡真そうま、母さん達もう帰るけど大丈夫?」


「大丈夫」


 目が覚めた時の第一声の声音が憔悴しきっていたし2日間居たんだろうな。

 運が良かったとはいえ、車に、それも大型車にぶつかったんだから気が気では無いだろう。


「何かあったら看護師さん達に言うのよ!アンタ、自分のこと伝えられないんだから……」


「あ〜大丈夫大丈夫」


 説教が始まりそうだったので適当に流した。


 にしても入院とは、えらいことになってしまったもんだ。


 それに……


 あの世界は何だったんだろう


 考えても考えてもよく分からなかった。

 1つ言えるのは異世界の類なんだろうなってことくらい。

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