第2話 ここどこ?!

「あ、あー……えっと…」


 こちとら陰キャ、女の子とまともに話したことすらない人種。見下ろされるなんて前代未聞。


 どもるのは当たり前。見下ろされてなくともちゃんと話せる気はしないが。


「あぁ、そこどいた方が良いですよ」


「へ」


 見下ろす美女の声はどことなく中性的というか…女の子らしい高い声でもない。


 どいた方がいいと言われて初めて気づいたが人を下敷きにしていた。「う"〜……」と明らかに重そうにしている。


「うわぁぁぁぁ!!ごめんなさいごめんなさい!」


 飛び跳ねるように上をどき怪我がないか早急に確かめる。骨とか折れていたら大変…というかここどこだ…?

 和風?中華風?…の建物の中のようだけど。


「…閻羅えんら、どうしますか?この感じから言って生きている上に力を持っているようですが」


 銀髪の女性(?)が語りかける口調だった為伸びている人以外にも誰かいるのかと周囲を見回すが誰もいない。

 というかここどこ。


「ん〜………?……うん」


 どこか気だるそうな声がから来た為見上げると体育館等にあるステージのようなものがありその上にデカい机。


 そこに足をかけ行儀悪く座っている男がいた。

 ボサボサの黒い髪で真っ赤な瞳を持っている。青年と成人男性の中間の様な容姿だ。まだ全体見た訳では無いけど。


「……ヒュッ…」


 息が詰まるとはこの事……あれ、呼吸してなくないか僕。やっぱ死んだ?


「あ〜………?ホントだ。肉体が生きてるのに魂だけこっちに来てるね〜…死ぬような一撃を受けたのは確かだけど川を渡ってないし……」


 肉体?魂?川?

 知らん知らん、てかどこ!!ここどこ!僕の生死どうなってるんだ!!と怒鳴りつける度胸は無く無言で見上げるしか無かった。


「……あ、うつろ君の居たところに同じような力持ってた魔術師いなかったっけ?誰だっけ、あいつだよあいつ!」


 銀髪の女性(?)は虚という名らしい。君と言うのだろうから男性かもしれないが別に女性に対して君と呼ぶのは変な話ではない。


 …別に性別なんて気にしなくてもいいがなんか気になる。


「あぁ、居ましたね。…不可能な話しではありませんが…どうするんです?」


 てか魔術師とかいうファンタジー色しかない単語が飛び出た気がするんだけど何。僕は立派な人間ですけど…。


「そんなの面白いから俺の補佐にするに決まってんじゃん!」


「は?」

「え?」


 は?というのは虚?さん。

 え?というのは何も状況が掴めない僕。


 何?補佐って何……?なんか転生先?で僕就職決定を勝手にされちゃった感じ?僕まだ18歳だよ?

 正社員にするには経験不足すぎない?それに面談とかしなくていいの?


「だって俺現世好きだし、1回やってみたいと思ってたんだよな!それにこんな珍しい力、どんな風になるか気になるでしょ〜??」


「閻魔大王という者が何を言ってるんですか?頭沸いてます?好き嫌い、好奇心の針で行動をするなと何度伝えたらそのちんけな頭で理解できるんですか?」


 閻魔大王…?!やっぱ僕死んでるんじゃん!ってことはここはあの世…ってコト?!で…今なんか職に就かせようとしてる?!無経験ですけど?!?!


 言い合いを始める閻魔大王と言う人物、虚と呼ばれた人物に加えて、人に踏まれ伸びている人物に多分話題の中心人物である僕は混乱している。

 まさにカオス。収拾がつかない。


「あーうるさいうるさい!此処では俺の言うこと成すことが全てなんだから口出すなよ!あ、そいつそろそろ戻した方が良いんじゃないのー!まだ生きてるでしょそいつ!」


 うわ!なんか子供ガキっぽい!この人本当に恐れられている大王?!


「……責任を持つのも大王、貴方ということを忘れずに」


 やれやれと言った様子で言い合いをやめ此方に向き合う。

 上をどいてから棒立ちのまんま状況がつかめずアワアワしていたので気づかなかったが虚という人物はかなり背が高い。


 僕は170cm絶対無い。高校の時、それもちょうど1年前くらいの記録なので分からないが絶対無い。


 一方虚さんは背が高い。170cmどころか180cmありそうだ。あと背筋が伸びているのがかなり威圧感を感じる。


「良いですか?ゆっくり目を閉じて頭のなかでこの場を離れるイメージをしなさい」


「え?いやあの」


「しなさい」


「はひ…」


 ここは何処なのか、どういう状況なのか聞く前にぴしゃりと言われてしまった。


 大体イメージなんて…と思ったが言われた通りやらないと殴られそうだ。それに無理矢理手を翳されて視界を閉じられてしまった。


 イメージ……イメージ……

 大きな空間に僕がいて、そこから離れるイメージ……扉があって、そこを開けると、外に出て……


 混乱しかない頭の中でそう言ったイメージを思い描く。

 最初のうちはぼんやりと、そうしているうちに強くそのイメージが感じ取れた。


 これまでに無いほどそのイメージが強く感じ取ったと思った次の瞬間にはまた黒い空間。でも遠くから声が聞こえる。遠くに光がある。


 …この声は父さんと母さん?あんまり聞こえないが何か心配している声だ。

 …あ、あの光から聞こえるのか。


 光から聞こえると確信し、光に向かってゆっくり歩を進めた。

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