残された書物の山々に、新たな章が刻まれようとしていました。

追求者

　深夜、図書館の最も古い書庫には、人々が忘れ去った書物がひっそりと眠っていた。壁一面には、埃をかぶった本が無秩序に積み上げられている。この書庫には、図書館員さえ滅多に足を踏み入れることはなかった。

　ある夜、とある大学生が、研究のためにこの書庫を訪れた。彼は、禁断の知識を求めていた。書庫の扉を開けると、冷たい空気が彼の肌を撫でた。大学生は無心で、書物の山を漁り始めた。

　やがて、彼の手には一冊の黒い表紙の本があった。その本には、タイトルも著者名もなかった。その人間は好奇心に駆られ、ページを開いた。

　すると、本から黒い霧が立ち上り、書庫の空気が一変した。人間は恐怖に震えながらも、本を読み進めた。本には、忘れ去られた呪文や古代の儀式が記されていた。そして、最後のページには、言葉が刻まれていた。

『残された書物の山々に、新たな章が刻まれようとしていました。』

　大学生は、何かがおかしいと感じたが、すでに遅かった。書庫の中で、本の登場人物や呪文が現実となり始めた。彼らは、人間を新たな章の一部として書庫に閉じ込めようとした。

　大学生は逃げようとしたが、書庫の扉は動かない。彼の周りでは、書物の山々が生きて動き出し、彼を取り囲んだ。そして、大学生の叫び声は、文字となり書物に吸い込まれていった。

　翌朝、たまたま図書館員が書庫を開けたがそこには、人々が忘れ去った書物がひっそりと眠っていた。ただ、書物の山には、新たな黒い表紙の本が一冊加わっていた。その本には、タイトルも著者名もなかった。

　残された書物の山々には、新たな章が刻まれていた。そして、書庫は再び静寂を取り戻した。

残された書物の山々に、新たな章が刻まれようとしていました。

『残された書物の山々に、新たな章が刻まれようとしていました。』

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