第3話:王への道筋を探そう
さて、この国。ベレガリアージュ王国のことを話そうと思う。あくまで私が知った範囲を簡単にだが、まとめてみた。
ここは一個の大きな大陸で、その中に小さな国が割拠している状態らしい。その中でも若い国がこの国なのだそうだ。現在の王は、かつてはこの国で将軍職についていた男で名をベレンガルアというらしい。齢は三〇代後半で自分にも他人にも厳しい男だそうだ。
彼はある日。突如として過去に実在した覇者の末裔を名乗ってクーデターを起こし、当時の王を排して新たな王になった。
彼が掲げるのは大陸統一。
そのせいもあってか王となった男は隣国へ侵略戦争を繰り返している。国境では小競り合いから大規模な侵略戦争まで実に多くの戦闘が行われているとのこと。
国は国民に重い税金を課し、まさしく圧政と言う表現が正しく思えるほどに苦しく厳しい生活を送らされているとのことだ。そんな国の中でも大陸の西の端にあるこの町はマシな方だとのことだ。中央とか東や南の国境近辺では本当に大変なのだそうだ。
そんなベレガリアージュ王国で成り上がるには幾つか方法があるらしい。
まず一つ目は爵位を金銭で買う方法。
二つ目は戦争で功績を成して叙爵される方法。
次の三つ目は婚姻と言う方法。
女の私には三番目の方法が一番可能性のある方法だと言える。
だがこれでは王配にはなれても王には成れないし、そもそも王に近い人間と知り合いなんていない。知り合ってもせいぜいが遊び相手としか見られないだろう。
ということは女の身の上で王となるには私自身が功績を立てる必要がある。
とはいえ戦争なんて参加してもすぐに死んでしまうだろう。武器も防具も殴り合いの喧嘩すらしたことがないであろう私。戦争に参加しても言わずもがなだ。
となると金銭で爵位を買うと言う方法が一番堅実となる。
さて、ではどうやってお金を稼げばいい?
私は、この国の貨幣価値すらろくに知らないのだ。
そんな私が大金を稼ぐにはどうしたらいい?
「やっぱり何処かの大きな商いをしている商人に取り入るしかない?」
でも一体どこの世界に記憶喪失の氏素性すら分からない女を見受けしてくれる人間が居るというのか。
「……この酒場で待つか?」
いや。それは現実的じゃないな。運の要素が大きすぎる。自分でも何か行動をしたほうが良い。だが商売をするにしても何を売れば良いのやら?
身売りはしないよ?
たかが知れているからね。
それになんだか……嫌だ。それは最後の手段に取っておく。
ウンウンと唸っていると、そこに私のファンの中でも一番の武闘派がやってきた。
「やぁ。アヤちゃん」
そう行って怖い顔を無理に歪ませて笑顔を向けてくる男が一人。
「いらっしゃいませ。ゼスさん。今日はお仕事は終わり?」
そう行って声を掛ける相手はゼスと言う名の冒険者をしている男性だ。なんでもこの町には行商人の護衛でやってきているらしい。
で、私という女性を見かけて口説いているというわけだ。うまく行けば儲けものと言う感じだろうか。
「あぁ。その……な。俺。明日でこの町を出立するんだ」
「そっか。寂しくなるね」
「それで、その、もしよかったら一緒にどうかなと思ってな」
正直それも考えた。でもそれでは駄目なのだ。
「ごめんね」
「そうか……」
「ゼスさんには色々と教えてもらえて嬉しかった。ありがとう」
「……あぁ」
それで終わり……のはずだった。でもそこで私は一つ思った。
冒険者……か。
「そだ。ゼスさんはダンジョンで一山当てたいんだったよね?」
「あぁ。俺はいずれ成り上がる男だ」
だから俺の女にならないかって?
ならないよ。
それより聞きたいことがあるんだ。
「ダンジョンってどんなとこ?」
するとゼスが語りだした。いかに危険な場所かを。熱く熱く。
「魔物がウジャウジャいるんだ。それに罠もある。転移の罠が一番やばいが初歩的な落とし穴も危険だ。魔物を大量に呼び寄せるなんて罠なんてのも在るんだぜ? そんな罠を俺達は潜り抜けて挑んでいるんだ」
「へぇ。すごいね。それで肝心のお宝ってどうなの?」
「あぁ。それはもう……運だな」
運か。結局そこか。そこに行き着くのか。
「でもな。マジックアイテムを一個でも見つけることができれば、それだけで苦労の元手が取れるんだぜ? すげぇよな! 場合によってはそれで爵位が手に入るかもだ。俺はいつかやる男だぜ!」
「そうだね。すごいね! ゼスさんなら、いつか本当に達成しちゃいそうだね!」
と同意してみる。でもねぇ……
命をかけてようやくそこか。
私が目指している物はもっと上だ。爵位を手に入れたあとのことも考えておかないといけない。まぁでも取り敢えずは今のことだ。
「ダンジョンのことをもっと教えてくれる?」
まずは先立つために必要な、まとまったお金を得る。そこからだ。自分に出来そうなことを色々試すところから始めよう!
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