探偵媛アリセ・ピンカートンの華麗なる怪盗撲滅

@kandoukei

第0話前編:始まりの夜はRPGで鳴り響く

 世界一豪華な大国家アメリカ。ネオンが寝静まったニューヨークのある屋敷に厳重な警備が敷かれた。

 その屋敷にはとある予告状が届いたからだ。

『親愛なる探偵王アルバート・ピンカートンへ、

貴殿がメトロポリタン美術館から頼まれ、預かった伝説の宝石の一つ、"インフィニティダイヤ"はニューヨークの明かりが消えた頃に私が頂く。

怪盗王20FACELUPANトゥエンティフェイスルパンより。』

 ニューヨークの明かりが消えた今、屋敷は騒々しかった。

 怪盗王に扮した仲間たちがあちこちで囮となり、警察たちや警備員を翻弄していた。


 本物である白髪白髭の怪盗王はとある寝室のタンスから盗み取った"インフィニティダイヤ"を窓からの月明かりに照らし、まじまじと見つめた。

 透明で美しいダイヤモンドの中に純白に発光する無限の輪を持つその宝石は黒いシルクハットを被り、紫のタキシード服を着た怪盗王を苦笑いした。

「アルバートめ、こんなあっさりにとは…誰だ?」

 怪盗王が小さな気配に気が付き、後ろを振り向くと、開いたドアから赤髪の三つ編みと青い瞳を持つ幼女が可愛らしいピンクのパジャマを着て、熊の縫いぐるみテディベアを連れて、現れた。

「おじさん、返して。お爺様が護っている宝石を。」

「アルバートの孫か、なんとも愛おしい嬢ちゃんレディーだ。悪いが、これは怪盗わたし探偵アルバートとの戦いだ。例え、私が立派な紳士であっても、返すことは出来ないよ。御免なさいね。」

 怪盗王は自分でもあまりにも無責任なことを言ったと思い、幼女を泣かせたと一瞬躊躇い、彼女の顔を覗き込む。

 すると、幼女のつぶらな瞳は…

ハイライトを無くし、小さいはずの熊の縫いぐるみテディベアの口の中から大きい対戦車擲弾発射器R・P・Gを取り出し、ロケット弾を放った。

「じゃあ死んで、糞爺。」

「うわぁぁぁぁぁ!?」

 寝室は爆破され、怪盗王は命からがら窓から飛び逃げた。


 タキシード服からジェット式ハンググライダーを展開し、悠々とニューヨークの街を流離う怪盗王は先程の幼女について冷や汗を掻いていた。

「あの嬢ちゃんレディーめ、流石に肝を冷やしたぞ。流石はアルバートの孫だ。まさか、頭の螺子が外れているぞ、まぁ、無事に逃げ…」

 すると、ニューヨークのビルの壁から破り出たピンクのキャンピングカーを改造したとされる戦闘車が現れた。

「逃げてないな、これ。アルバートめ、我が孫可愛さに甘やかし過ぎて、ぶっ飛んだ方に育てるとは。」

 ドリルで壁を壊し、光線レーザー砲やら、機関銃バルカン砲やら、ミサイル砲などやらで武装している。

 その車の上ハッチから拡声器を持った先程の幼女が現れた。

「お爺様の護った宝石を返せ、糞爺! じゃないと殺す! 地の果てまで殺す! お前の親も子供も恋人も友達も全部殺す! 末代まで殺し尽くす!」

「ははは! アルバートの孫娘よ、そんな追い詰め方など、独裁国家の大軍に追われたことのある私なら乗り越えられるものだよ! さぁ、私を楽しませてくれよ!」

「死ね!」

 幼女は右手の◯指を立てながら、戦闘車の全武装を発射させる。

 光線レーザー砲がビルの窓を蒸発するまで溶かし、機関銃バルカン砲で信号機や電柱を蜂の巣にし、ミサイル砲で小売店コンビニストアを爆滅させる。

 人のいないニューヨークは忽ち火の海と化した。

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