第4話 お出かけ

家から離れ、ショッピングセンターに着いた俺たちは昼食を食べようとフードコーナーに訪れていたのだが...。

顔だけ見れば姉妹のようだが、髪色や着ている服の傾向がまったく違う美少女二人。


目立ってる...めっちゃ見られてるんですけど!

内心そう思いながら、びくびくしている体を何とか動かし、某ゲームのパーティのようにぴったりと葵についていく。

この視線の中を堂々と歩いていく葵の背中はとても頼もしく見えていた。

実際今は葵より少し小さいんだけどね?


「お...優さんは何を食べますか?」


葵が聞きなれた口調でやさしく話しかけてくる、流石に外では朝のような砕けた喋り方はしないらしい。

まぁこれだけ人の目があるといつ誰に見られてるか分からないもんな...


「う...うどん」


初めて味わう周りの視線に委縮した俺は、葵の服を少し引っ張り小さい声でそう伝えると。


「かわいい~!」


横から突然声が聞こえてきて、驚いた俺の体が小さく跳ねる。


山口やまぐちさん、こんにちは」

友里ゆりでいいのに~」


葵が挨拶をしているのを聞いて俺も声の主の方に目を向ける。

そこにはポニーテールで髪をまとめていていて、少し残念そうにしている金髪の女の子が居た。





「絶対学院の噂になるね~、美少女転入生爆誕って!」


目の前に座っている金髪の彼女の名前は山口やまぐち友里ゆり

葵と同じぐらい男子の噂になっていた一年生...という記憶がある。

『一緒に食べない?』と誘われたので一緒にご飯を食べいるのだが、喋っているのは葵と山口さんだけで、俺はうどんを食べるのに夢中...というふりをしていた。


これは食べるのに忙しいですアピールを全開にすることで会話に参加しないという最強の技である。

ふっ...初対面の人と気軽に話せるコミュ力があるなら、ぼっち街道を歩んでなどいないのだよワトソン君(?)。


「そうですね、この子は人見知りなので...山口さん、この子の友達になってくれませんか?」

「ーーーっ!?」


その発言に思わず食べるのを止め、葵の方を見ようとしたのだが...


「むしろこっちからお願いしたいくらいだよ~!」


そういうと山口さんが俺の手にかぶさるように手を置き、目を輝かせながら顔を近づけてくる。


「私、山口友里。よろしくね?」

「...」


俺は目を大きく開け、驚きのあまりカチコチに固まったのだった....





「お兄ちゃん...こんど会ったら挨拶して謝るんだよ?」

「そうだな...」


葵が小さな声で耳打ちをしてくる。

俺が固まった後、あまりに俺が微動だにしなかったので

『あはは、ちょっと早かったかな?学院に転入してきたら絶対話そうね!』

そう言ってどっかに行ってしまった。

相手の性格を考えるに俺のことを気遣ってどこかに行ってくれたのだろう。


中学と高校では、ほとんど喋っていなかった女子に、しかも...しかも!かわいい子に手を触られて挨拶される...

いや、無理でしょ。あそこで固まらない男子は経験豊富な陽キャだけだろ!

と俺が頭の中で小さく反論しようとするが...


「相手の好意を無下にするのはよくないよ」


俺の心を読んでいるかのように放たれたその言葉は鋭く、俺の体に突き刺さる。

山口さん、本当にすみません...


ベッドではないが一人反省会を始めていると葵が席を立つ。


「さて、ここに来た目的を果たしましょうか」


目的なんてあったのか...そう思いつつ俺も席を立ち葵が歩いていく方向についていくと...下着がたくさん置いてあるランジェリーショップの前に到着した。


「あ、じゃあ、あそこで待ってるから。」


今日で一番はきはきした声で答え、すぐに近くにあるベンチに座ろうとするが...葵に腕を掴まれ強制的に店に入れられる。


「ちょ、これだけは男としてのプライドが!」

「これからずっとその身体なんだから受け入れた方が身のためだよ?」


また葵が耳打ちしてくる、いやこの体の原因はお前にあるんだよな?そうだよな!?

葵が俺の腕を掴んだまま店員さんを呼んでいるので逃げられないことを悟り、抵抗をやめる。

まぁ俺に男を名乗るほどのプライドなんて無いに等しいのだが。


「この子のブラのサイズを測ってくれませんか?」

「了解致しました。こちらへどうぞ~」


店員さんの指示に従って試着室へ案内される。

下着を選んでいる他の女性客の姿はもちろんあるわけで...

何か悪いことをしている気がしてきた俺は極力下を見つつ急いで試着室に入り服を脱ごうとする。


「そのままでも大丈夫ですよ~」

「へ?」


どうやら服を脱ぐ必要はないらしい...恥っず!!!

測り終わった俺は葵のもとに帰り、店員さんに言われたカップ数の白い下着と黒い下着、それぞれ2着ずつ買った俺たちは帰路についていた。


「D...私よりでかいのかぁ...」

「いや、うれしくないんだけど...」


胸に手を当てて、少し羨ましそうな顔でこっちを見てくる葵。

いやそんな目で見られましても...

大きい胸はもちろん好きなんだよ?

好きだけど...俺が大きいのは違うんだよなぁ。


まだ明るい空の下で今日一日を振り返りつつ歩いていると、家が見えてきた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

☆や♡、フォローを付けてくれるとモチベが上がるので良かったら応援してください。











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る