第3話 性転換②
『成績優秀で容姿端麗、周りから尊敬され愛される人格者』と私は呼ばれている。
私は周りが思っている以上に天才だった。
大体何でもできる超高性能なオールラウンダーとでも言えばいいのだろうか。
初めてのことも、少し見たりやったりすることで、なんとなくコツを掴み周りの人よりも上手になる。
人と話していく中で、読心術のようなものを身に付け、人間関係でも特に困ったことは無かった。
そんな私は今、ベットにダイブし布団を抱きしめながら右へ左へとゴロゴロ動き、悶えていた、制服がシワになりそうだが今はそんなこと、どうでも良い。
先ほど、中学生辺りから距離を取られていた兄に『おかえり』と言われたのだが、動揺したのをバレないように感情を殺した結果、素っ気ない返事になってしまった。
ベットで悶えていると…兄に対して押し殺していたはずの感情が溢れ出す。
「渡されたこれ...お兄ちゃんに使ってもいいよね...」
父親から預かっていたものを持ち、夜に兄のベットに潜り込む...久しく忘れていた人の温もりを感じて、目頭が少し赤くなったのだった...
□
「それじゃあ、出かけようか!」
ソファーで寝転んでいた俺に葵が元気よく声をかけてくる。さっきから姿が見えないと思っていたが、外に行くため着替えてきたらしい...
「いってらっしゃいー」
「優ちゃんも行くんだよ〜?」
「普通に嫌だが??」
何を言っているんだろうかこの妹は...ていうか優ちゃんはマジでやめてくれ!?
「大丈夫だって!世界一可愛いよ!」
「可愛くある必要はないんだが...」
この姿に慣れてきたと言っても、この状態で外に出るのは流石に困る。
今の俺は葵に似た髪が琥珀色の美少女...葵と一緒にいる所を、もし同じ学校の学生に見つかったら絶対噂になる。
その場合ここ一カ月で、ようやく...ようやく収まってきた葵の件がまた繰り返されるかもしれない。それは絶対に阻止だっ!
葵の件では苦労させられた。まったく知らない男子生徒から『俺を紹介しろ』とか『俺と変われ』とか理不尽な罵詈雑言とか...辛かった...
俺が遠い目をして何を考えているのか察した妹が喋りかけてくる。
「え~と...お兄ちゃんは元に戻らないから心配ないよ?」
突然葵から告げられる言葉に一瞬時が止まるような感じがした。
戻れない?何を言っているんだろうかこいつは...
「いや...この現象については葵が知ってるんだから戻れるはずだろ?」
少し震えた声で俺は質問する。
そう、朝の表情からしてこの現象を知っているのは間違いない、というか葵はこの状況に一回も驚いていなかった、それが何よりの証拠だ。
しかし葵は、少し暗い顔で分かりませんとでも言うように首を振る。
「え...嘘だろ...」
どこか楽観視していた、葵の表情からしてこの非日常は作られたものなんだと、それを日常に戻すには知っている葵に聞き出せば、すぐに解決できるものであると...
「大丈夫だって!戸籍もあるはずだし、希星学院の入学も多分決まってるから」
「...へ?」
俺は驚きすぎて口を開けたまま葵を見る。
戸籍もあって学院に入ることが決まっている...だと?
俺がさっき感じた一番不安に感じた要素は戸籍や今の生活の変化だった。
アニメや漫画では都合よく飛ばされがちな設定だがここは現実。
戸籍があるのが当たり前な社会では、無戸籍な場合アルバイトでも就職するのは難しい、でも何故今日変わったはずの俺に戸籍あるのだろうか...
それに学院への入学、あの学院の転入した人など聞いたことが無い。ていうか、転入制度は無いものだと思っていた。
「...」
少し黙り込み、今の俺の立場を整理すると...
葵の話が本当なら、もしかしなくても結構良いんじゃないか?
『冴えない二年のぼっち』
VS
『一年の琥珀美少女(今までの知識あり)』
強くてニューゲームどころじゃない、チートすぎる、なんだこの差。
あれ...さっきまで絶望したけど滅茶苦茶良くね???
俺が今の状況を整理してどれだけ優遇されているか少し理解した所で...
「はい、行くよー」
葵が強制的に家から出そうと腕を引っ張ってくる。
「う、うん」
情報処理に頭を使っていた俺は引っ張られるがままに、すんなり家から出てしまった...
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