第2話 性転換
俺の目の前には黒と白のゴスロリを着た金髪...琥珀色の美少女と、その少女をセットし感嘆の声を上げている古河葵の姿があった。
いや、どうしてこうなった...
◇
お...重い...
カーテンから入ってくる光を感じていつものように起きようとするが体の右側だけにかけられている謎の重力と圧迫感を感じる。
これが金縛りという物だろうか?
何故か右側だけだが...
「おはよう...おねーちゃん♡」
突然耳元で囁かれた甘ったるい声に鳥肌が立ち、反射的に上半身が起き上がる、ギギギと鳴る壊れた機械のような、ぎこちない動作で声の聞こえる方に首を傾けると、俺の真横にはニヤニヤと小悪魔のような笑みを浮かべている黒髪美少女の顔があった。
「...」
状況が理解できない俺は葵の顔を見て体が固まる。
「......誰ですか?」
いつもの葵...と言っても学校の姿しかあまり知らないが、能力、人格共にパーフェクトと言われている葵からは、今のこの状況が想像ができない。
「おねーちゃんの妹の葵ですけど?」
そんな砕けた喋り方をする葵にますます困惑して、寝起きで働いてない頭を無理やり動かす…
「うん?...おねーちゃん?」
先ほどから感じていた違和感に気づいた俺はその疑問を口に出した所でもう一つの違和感に気づく。
「……は?……え?」
聞いたことのない声に困惑すると同時に、それが自分が出している声だと理解し驚き頭を悩ましていた時、パシャリとスマホのシャッター音が聞こえる。
「これからよろしくね、おねーちゃん?」
イタズラをする子供のようにニヤニヤした顔でスマホを見せてくる葵、そのスマホの中には、金髪…琥珀色のようなロング髪の少女が映っていた。
◇
あの写真を見た後、自分の身に何が起こっているか理解できず頭がパンクして一度倒れた...っとそれは置いておいて...
取り合えず、聞きたい疑問をすべて葵に聞くことにした。
まず俺の体について。
これが一番聞きたかったのだが『知らない』の一点張りで何も話してくれなかったが、朝見た表情からして何か知っているに違いない、今度また問いただしてやろう...
もう一つは葵の態度について。
学校で見せる優等生な古河葵は作り物で、朝見たのが素だと言っていた。
今まで葵に対して『嫌い』とか『羨ましい』という感情を抱いたことはあるのだが『怖い』と思うのは初めてかもしれない...
「ーーーよしっ!」
葵がとても満足したような表情で鏡を見る。
今の葵は学校で見る、皆から愛され尊敬されるおしとやかな優等生のような姿ではなく、元気いっぱいの女の子というイメージだ、楽しそうな葵を見て本当にこっちが素なんだなと実感する。
まぁ...非現実的な光景が目の前に映ってるですけど...
「....」
鏡に映っている黒と白のゴスロリを着て椅子に座った、琥珀色の少女をまじまじと見る。
朝からずっと困惑していたのだが、アニメや漫画を見すぎたおかげか、非現実的なことに対する耐性がついていたらしく、この状況にも少しずつ慣れてきた。
顔立ちはアジア系...というより葵に似ていて、ストレートの琥珀色の髪は絹のようにサラサラでふわっとしている。
はっきり言って文句のつけようがないほど美少女だ、もし街中で見かけたら二度見するレベルで...
「やっぱ私って天才だな...デザイナーもありか?」
葵によってセットされた俺の姿は元の美少女が更に可愛くなっていた。
「いや...なんで
当然の疑問だった。
葵はいつも清楚系の服を着ていたから、こうゆう系の服を着ているところを見たことが無い。
「可愛いは正義なんだよ?」
急に葵が真顔でオタクみたいなことを言い始めた。
なんだ?...もしかして
「ほら立って!写真撮るから!」
「え~...」
◇
葵が指示するポーズの写真を1時間ほど撮り、着たことが無い服で慣れないことをした俺はリビングのソファーでだらけながら疲れた体を癒していた。
葵はさっき撮った写真を見せながら『可愛くない!?』と言ってくるので『ハハ...』と苦笑する。
葵と喋っていると、小っちゃい頃はよく遊んでいたことを思い出し、少し懐かしくなる。もちろん前はこんな感じじゃなかったけどね??
体は疲れていたが、他愛のないことを葵と喋っているこの時間はとても穏やかで、俺に足りなかったものが少し埋まっていくような感じがした...
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□作者です。
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