第5話  移動手段は?



 敵と何度か戦っていて気づいたことがある。


 俺は正義の味方だ。


 なのに……


 『○○ぅ〜っ。○○ぅ〜っ。終点○○。どちら様もお忘れ物のないよう』


 何で俺は、移動にバスだの電車だの使わなければならないんだ?


 


 何かが間違っている。



 そうか。



 乗り物だ!!



 正義の味方は、必ず格好いい乗り物に乗っていた!!


 


 俺にはそれがない!



 これは、盲点だった……



 反省した俺は、駅前に止めてあったママチャリのカギを壊してサドルにまたがり、秘密基地へと戻った。



 さぁ。出撃だ。


 俺の前にあるは、何の変哲もないママチャリ。


 電気自転車っぽくサドル下のフレームに四角いカタマリがついている。


 「そよかぜ号」と書かれているのがカッコいい。


 さっそくこいつには「仰天チャリマーク1」と名付けてやろう。


 俺はチャリにまたがると、さっき察知した悪の組織と戦うため、基地を後にした。



 


 キーコ キーコ


 ううむ。仰天号め。油が切れているぞ?


 整備不良とは何事か?


 


 うむ?坂。


 キーコ キーコ


 三段変速ギアをゆるめてと。


 


 あーっ。


 なんか疲れてきた。



 普通ならこうなるはずだ。



 だが!


 スーツの補助パワーをみよ!


 車ですらぶっちぎりだぜ!


 さすが「仰天チャリマーク1」だ!!


 


 ふう。


 鈍行で2時間の距離をわずか30分。こうも速いと気分がいいな。


 さて。


 待たせたな!


 悪の手先め!


 この俺様が相手だ!!


 


 叫びながら、俺は敵の目前へチャリを滑り込ませた。


 ふっ。かっこいいぜ!!



 敵は登場した俺に動きを止めた。


 ふふん。


 驚きのあまり、言葉を無くしたか!



 と思ったら―――



 「ぶはははははっ」


 「ギャァッハッハッハァ!!」


 みんなが俺を指さしながら大爆笑。


 な、何が可笑しい!?



 「だ、だって、よく見ろよ!」


 「ま、ママチャリにその格好でまたがるなんて、お前、何考えてるんだ!」



 お約束マグナムっ!!



 帰り、「仰天チャリマーク1」は突然のパンク。


 敵の妨害工作か!?


 しかたない。


 機体を放棄した。


 短い間だったが、ありがとうな。相棒。



 しょうがない。


 スーパー○のように、派手なバイクとするか。



 俺はバイク屋に乗り込み、大型バイクを頂戴した。



 数日後


 おお。仰天号、出来たか?


 うむ。


 竹槍マフラーがまぶしいぜ。


 


 さぁ。今日も楽しく出撃だ!!



 爆音をとどろかせながら突き進むぜ!!



 「前のバイク、停まりなさい!!」


 ん?


 マッポか。


 うるせぇ。消えろ!!


 ハンドル横のボタンをポチッとな。


 


 ヴォォォォォォ!! 



 後部に仕込んだ30ミリガドリング砲が火を噴いた。


 ふふっ。


 パトカーはふ・ん・さ・い。


 中の狗もミンチでは済むまい。


 誰が切符なんて切られるものか!!


 幸先は上々だ!!



 ラジオでも聞くか。


 「昨日、凸凹市胃簿寺で発生した暴力団員大量殺害事件の犯人はいまだ逃走中」


 「警察は現場から逃走した大型バイクに乗った人物が例の核テロリストである可能性が」


 「中国臨時政府は、怪人との戦いの中で犠牲者が2億人を越えたが、党幹部関係者は無事なため、全く痛痒を感じないと発表」



 さて。


 高速道路の料金所を突破した俺は、敵と遭遇した。


 


 仰天チャリを放棄せざるをえなくしてくれた連中の残党だ。


 仰天号が調べた限りだと、この連中は政府と手を組んでいるらしい。


 確か、NPOとか何とかいう組織だ。 


 ご丁寧なことに5人、色違いだ。




 ……むかつく。



 悪は潰すのが俺の礼儀だ!


 


 俺はバイクのアクセルを全開にすると、敵に突撃した。



 おらぁぁぁぁっ!!



 見よ!!



 新・必殺技



 仰天バイクひき逃げアタック!!



 タイヤの間から金属のツメが飛び出し、全てをミンチにする禁断の一撃だ!


 昨日、ヤクザの葬式に乗り込んでチンピラ100人血祭りに上げた実績済みはダテじゃねぇ!!



 


 「ぎゃぁぁぁぁぁっ!!」


 グシャッ!!



 黒を綺麗にひき殺したあと、ボタンを操作して、バイクの両脇にビームサーベルを展開する。



 これが……これがっ!!


 


 新・必殺技 その二



 仰天バイク当て逃げアタック!!



 「た、助けてぇ―――ぐぇっ!」


 「やっやだぁ!!―――ぎゃぁっ!」


 逃げまどう黄色とピンクがこれで真っ二つ。



 残るは青と赤だが……



 「ち、ちょっと!あんた、何するんだ!!」


 赤が両手を振りながらそう叫ぶ。



 はぁ?


 テメェみてぇなニセ者を抹殺するだけだよ!


 こんな風にな!!


 俺はバイクの武器をいくつか作動させた。



 「うわぁぁぁっ!」


 赤はとっさに地面に伏せて避けるが、反応が遅れた青は上半身にレーザーの直撃を受けて四散した。


 ふっ。わかったろう?



 「あ、あんた、俺たちがなんだかわかっているのか!?」


 あ?


 悪の手先。


 正義の味方の偽物。


 「ち、ちがう!!俺たちはJACAだ!」


 あ?どこかで聞いた気が……。


 ああ。そうか。


 JACA 日本アクション株式会社だっけ?


 へぇ?


 ってことは、撮影か?


 「そ、そうだ!新作のコイズミレンジャーの撮影で!」


 


 なんか、ムカつく名前だが……で?


 赤一人で撮影か?


 他はどうした?


 「あ、あんた、自分が何したかわかっているのか!?」


 ……あたりを見回す。


 悪の組織と思っていたのは、実は撮影スタッフってことか?


 あーあ。


 死屍累々。


 機材はぐちゃぐちゃ。



 ……こりゃまずい。



 おい。赤。



 「な、なんだ?」



 死んでくれ。



 俺はお約束マグナムで赤を吹き飛ばした。


 生存者から情報が漏れることが心配だから、念のため、バイクに仕込んだ毒ガスを散布することを忘れない。


 うん。緻密だね。俺。



 数日後のことだ。


 コイズミレンジャーが無期限で撮影停止になり、アベレンジャーの撮影が開始されたという。


 政府の肝いりらしいけど、なんだろ?すっごく見るのがイヤだな。


 どうせなら、俺の活躍を番組化しろよな。


 


 俺は撮影を潰すべく、制作会社の住所を調べることにした。




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