第3話 無意味に怪人出現!



 敵はいる。


 相手の数だけは不足はない。


 敵は巨大ロボも繰り出してくる。



 だか、俺は不満だった。


 なぜか?


 簡単だ。


 


 怪人がいないっ!!


 


 そして、俺には必殺技がないっ!!



 「師団本部!本部!敵は圧倒的火力で応戦しています!」


 「第3中隊全滅!」


 「戦力7割が壊滅!後退の許可を!」


 


 あーっくそっ!


 俺は胸の中でくすぶる怒りを丘の上に隠れている悪の犬へと向ける。


 ズドンッ!


 仰天号から見つけたレーザー銃の引き金を引く。



 ドンッ!



 まるで巨○兵の攻撃さながらの一撃が丘を斜めに走ると、少し遅れて大爆発が起きた。


 レーザーが命中して、なぜ地面で爆発が起きるか、よくわからない。


 多分、それが「お約束」だからだ。


 


 そう。


 「お約束」は、この世のあらゆる物理の法則を越えるんだろう。


 恐るべし、「お約束」!


 


 俺は、「お約束」に敬意を表して、このレーザー銃に「お約束マグナム」と名付けた。


 何故マグナム?


 それも、お約束だ。



 それにしても、敵は弱い。


 マグナムとバリアだけで勝負がつくなんて、そんなのありか?


 あーっ!


 怪人出てこぉいっ!!



 俺は収まらない怒りをこめて、空めがけ引き金を引きまくった。


 



 まぁいい。


 敵は沈黙したことだ。



 全く、買い出しの度に襲ってくるからたまったもんじゃない。



 俺はマグナム片手に、人気の少ない個人商店へと入っていった。


 おらババァ!


 命が惜しかったら、正義の味方に食い物と有り金、全部差し出せやコラ!!



  


 「突如コントロールを失った米軍の核攻撃衛星が北京に墜落、爆発した件で」


 「中国臨時政府は、これを米国による事実上の宣戦布告であるとし、米国政府に宣戦布告を」


 「たった今、中国政府はハワイ、東海岸へ向け報復の核攻撃を行ったと宣言」




 あーっ!かったりぃ!


 目が覚めても面白くない。


 敵に怪人がいないなんて、玉子のない牛丼だ!


 偽モノだ!


 


 偽物?


 そうか……その手があったか!


 


 俺は仰天号のメインコンピュータに相談することにした。



 よっと……



 翌日から俺がしたこと。


 それは、俺を襲った悪の手下の死体を集めること。


 元は自衛隊とか米軍と言われた連中。


 近頃は、義勇軍というのも出始めているらしいが、関係ねぇ。


 正義の味方に刃向かうヤツはすべて悪の手先だ!


 白旗は無視!


 命乞いはもっと無視!


 悪は滅ぶべし!!


 それがね正義の味方の変わらぬ信条だ。



 さて。


 ほとんどの死体は原型留めていねぇけど、仰天号は「それでいい」っていっていたしな。


 いわれた通り、200体ばっかり集めてやったぜ。


 あ、死体からは、金だろ?小銃だろ?金歯に指輪にブレスレットに時計……とにかくもらえるもんはたっぷりもらったけどな。


 


 おい。


 仰天号、これ、どうするんだ?


 何?その容器に入れろ?


 ほらよ。


 どぽどぽどぽんっ―――と。


 


 モルグ顔負けの光景が、とても心地いい。 


 それにしても何だ?この容器の中のピンク色の液体。


 仰天号によれば、遺伝子をどうこうする代物らしい。


 ―――ま、俺は怪人が現れてくれればそれでいいんだけどな。


 


 翌日、俺が悪の手下から奪った金目のモノを整理していたら、仰天号から呼ばれた。


 仰天号から渡されたのは200個のガチャで使われてそうなカプセル。


 なんだ?


 ふむ。これを、放射能に汚染された所へ放り込め?


 そうすれば、怪人が現れる?


 よっしゃあっ!



 仰天ロボに乗った俺は、まず手始めに、この前あのロボットと戦った場所、そして原発の関連施設へ。そして、アメリカと中国にばらまいた。


 こうして、数日待てば、怪人がわんさかと誕生するという。


 よし。


 それから俺の活躍が始まるんだ!


 


 「突如、○○市内の放射能危険地帯から出現したなぞの生命体は、周辺の住民を次々と取り込み、その数は膨大な数に」


 「怪人の出現に対し、中国政府は北京周辺に戦力を集中している模様」


 「米国政府は、東海岸一体を放棄、核攻撃により、謎の生命体を焼き殺す作戦を開始すると」


  


 ふっ。


 俺はテレビを見ながらさわやかな笑みを浮かべていた。


 テレビには、元が何だかわからないような異形の怪物達が映し出されていた。


 そう。


 俺が仰天号に相談して、作ってもらった怪人達だ。



 あの時、仰天号は答えた。



 ―― 一代限りですが、人間の遺伝子を操作することであなたのいう怪人を作成します。



 俺はそれをやめさせた。


 まて、仰天号。一代ってことは、仲間が作れないじゃないか。そいつ倒したら終わりだろうが。



 ―― それはそうです。



 仲間を作れるようにしろっ!殺されたら仲間になるとか、何か機械を使って無限に仲間を作るとか!出来るな!?



 ―― 可能です。ボックスNo3621に収容されている○○凸凹を、No6941に収容されている?????を用いて複製、使用します。



 よくわからないが、頼む。



 そう。


 怪人達は、許せないことに、殺した人間を仲間にする力がある。


 しかも、悪の組織はそれをさらに確実なものとすべく、なんと、怪人のミュータント製造プラントを建造、各地で怪人を量産している!!



 なんてことだ!!



 それを知った俺は、怒りのあまり、拳を壁にたたきつけていた。


 


 許せない!


 


 罪のない人々を殺し、怪人にするなんて!



 俺は怪人を倒し、悪の組織の陰謀をくい止めるため、腹に巻いたサラシにマグナムを突っ込むと、仰天ロボの待つ格納庫へと向かった。




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