第4話 求めていた

「探したよ。帰ろ。」


中学に上がってからは荒れることは無くなったが、塞ぎ込むことが多くなった。


でも都度、麗子は気付いて迎えにきてくれた。

母さんは一回も来なかった。


でもある日、本気で母さんにブチ切れたことがあった。




―――――――――ある日の夕飯時ゆうはんどき


「母さん、」

「うん?どうした?」

「バイトしていい?」

「あんた、まだ中学生でしょ?」

「学校行かない。働きたい。」

「小遣い足りないとか?今の生活じゃダメってこと?」


母がイライラし始めていた。


僕は冷静に母を見ていた。


「キレるならキレれば?俺、母さんにキレられんの好きだし。そういう時って母さん俺だけ見てくれんじゃん。ちゃんと見てくれんじゃん。それに麗美に殺されんなら俺本望だよ?」

「何それ。気持ち悪い。」


「……そうさせたのはお前だろ!?急にやめたのもお前だろ?!なんでやめたの?!やり続けてれば良かったじゃん!!ならこんなにこじれなかったんじゃねーの?!やってるからキレてんじゃないんだって!!やってくれ無くなったから気に食わねーの!!……。」



僕は食卓テーブルの椅子に座る母の横に立って、強引にキスした。


「してくれないからした。」

「あたし、あんたの母親なんだけど」

「だからなんなんだよ。母親に惚れて悪いか?別に襲う気は無いから安心して。俺、『いい子』だからさ。」


すると母が僕の頬を思い切り叩いた。


「…おせーんだよ。…俺、今の麗美、めちゃくちゃ好き。」


僕は母の手を掴んで僕の左胸に当てた。


「母さん。俺、母さんの事、大好きだよ。でも母さんにとってはずっと『要らない子』だったんだよね?だから叩いてたんだよね?しなくなったのはなんで?…本当に僕に興味が無くなったから?…なら消えてあげるから。僕、邪魔だよね?鬱陶しいよね?言っていいんだよ?一人で生きたいよね?男も欲しいよね?なのに僕が邪魔してた。…ごめんね。」



――――――――――――――――――。


当時中学校3年生。

夜の公園で煙草を吸って肺の奥深くまで煙を入れていると、



「……あのさ、あたしが腹痛めて出した体、雑に扱わないでくれる?」

「あぁ?…」


くわえタバコで上を向くとそこには母が居た。


「だから?今は俺の体。どう使おうと俺の勝手だろ?」


母は指に挟んだ煙草を取り上げると吸い始めた。


「懐かしい…。あんたの父さんと一緒によく吸ってたわ。」

「あっそ。」

「妬いてんの?自分の父親に?」

「黙れ。殺すぞ。」

「フンッ…どう?ちょっとは楽になった?」

「あぁ?なんのこと?」

「『いい子』の仮面も疲れるでしょ?」


母は分かっていた。


「あたしを誰だと思ってんの。」

「麗美。俺の母親。」

「って事は?どんな女?」


僕は隣に座る麗子の首に手をかけてキスした。


「俺の女。」

「……本気で言ってんの?」

「『いい子』の仮面取ってるところ見られちゃったしな。もういいだろ。」



「………。」


麗美は僕のTシャツを上げて体を見た。



「……なるほどね。」

「なにが。」

「あんた、寂しかったの?」

「………だったら?今更じゃね?……ぁっ……ちょっと……」

「あんたをこうしたのはわたし。」

「ぁぁっ……」

「母さん…」

「なに?」

「やめないで…」

「まさかねぇ…こうなるとはね…。」


母は僕の体に人差し指の爪を這わせて所々ねじ込ませていた。


「……やばい。」

「なに?」

「イッちゃいそう…。………?!」


直後、母は僕の頬を叩いた。


「ムカつく。」

「え??」

「あんた、彼女でもいるの?」

「なんで?」

「……誰に教えてもらったの?」


僕は何故か微笑んでいた。嬉しかった。母が母以外の女に妬いている事が嬉しかった。



「エロ本の1つや2つ見るから。DVDだってあるわけでさ。それに俺……母さんしか興味無いから。」


「…流星」

「なに」

「あんた今日からその類禁止ね。一人でするのもダメだから。」

「なんで?いいじゃんそれくらい。」


「……あんたが見ていいのはあたしだけ。」

「本気になっちゃうぞ?」


僕が冗談交じりで言うと、


母は僕にキスした。



「あんた、ずっとあたしに本気だったでしょ。」

「……。」

「あたしが知らないとでも?」


「……母さん。しよ?」

「しよ?」

「…なんて言えばいいの?」

「どうして欲しいの?」


「……」


「思うままに言ってごらん」

「…麗美」

「うん?

「…俺だけ見て。」

「それで?」

「何してもいいから。だから……俺だけ見て!!…お願い!!……」


「流星……あんた、本当に苦しかったのね。」

「……母さん…母さん……。」

「なに?」

「……殺していいよ?」

「流星。」

「うん」

「あんたを殺すのは勿体ない。」

「じゃあ、麗美だけのものにして」


「……あたしも…あんただけのものになりたい。」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る