2019/1/21 17:05:00

 今日は休みだった。夫が出勤してしまうと部屋はしんとして、わたしは少し不安になる。あの四時ばばあの姿は、夢だったろうか。わからない。それにしては、はっきりとまぶたに焼き付いていた。姿を見たら呪われてしまうんだったっけ? それは「むらさきのかがみ」だったかしら。いやちがう、「むらさきのかがみ」は、二十歳まで覚えていると呪われるんだ。「むらさきのかがみ」のことも、わたしは随分長いこと怖かった。二十歳なんて、もうとっくのとうに超えた。二十歳になったとき「むらさきのかがみ」のことをおぼえていたかはわからない。いま思い出したから、覚えていたことになってしまうだろうか? スマホでSNSを開いて、書きこんだ。


〈わからないことばかりだ〉


 二人のフォロワーさんが、いいねを付けてくれた。少し励まされたような気持ちでタイムラインを見ていると、わたしの書き込みから数分後に、相互フォローのミチちゃんが、こう書き込んでいるのが目に入った。


〈わからない、わからないばっか言ってる人ってどうかと思う。わかる努力をしてないだけじゃん?〉


 自分のつぶやきを消したほうがいいのか、いや、変に消したらまた悪いふうに思われるかもしれない、前に、ツイ消しばっかする人は信用できない、とも言っていたし。いや、ミチちゃんの書き込みは、わたしにあてつけたものではないかもしれない、でも、わたしのことだという可能性を捨てきれない。わかる努力を、してないだけ。どれだけ考えてもわからず、気づいたら昼になっていた。ひどく空腹をおぼえていて、わたしは戸棚からチキンラーメンの袋を出して開けそのままかじった。

 何にかはわからない。でも、わたしはもう呪われているのかもしれない。


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