第7話 聖女の雫 前編

 エルシアとヒスイの前に聖女の姿をした魔物が現れた。

 エルシアの口が動く。


「あれは?」

「おそらくヘルツと呼ばれている魔物です。人に見えますが。聖女の雫を守っている者でしょう」

 

 ヘルツの右腕が剣に変わってゆく。

 エルシアはヒスイの前に出る。

 ヘルツが剣を振り下ろした。

 剣でヘルツの剣をエルシアは受け止めた。


(なんてパワー)


 剣が離れヘルツは下がる。

 残像が見えるほどの速さでヘルツは動き出した。


(はやっ)


 エルシアは辛うじてヘルツの剣を防ぐ。

 ヘルツは何度も何度もエルシアを攻撃する。

 エルシアは疲労し細かな傷を肌に負い始めた。

 

「アレニエシャイン」


 ヒスイが魔法を発動した。

 数本の細い光の糸がヘルツに巻き付く。

 ヘルツの動きが止まった。

 止まったのは一瞬だった。

 細い光の糸が千切れてゆく。

 赤いビキニ水着アーマーが光る。


「おい。今直ぐブルカンビオと唱えろ」


 エルシアは唱えた。


「ブルカンビオ」


 赤いビキニ水着アーマーが青いビキニ水着アーマーに変わってゆく。

 ヘルツがエルシア攻撃する。

 エルシアはヘルツの動きがはっきりと見えていた。

 ヘルツの攻撃を次々に防ぐエルシア。

 エルシアが攻撃に移る。


 エルシアとヘルツの攻防が続く中、ヒスイが動く。


(先ほどは一瞬でしたがヘルツの動きを止めました。私の魔力を上げれば)


 ヒスイが右膝を地面につけ祈りを捧げた。

 

「ご加護を」


 光にヒスイが包まれた。


「アレニエシャイン」


 ヒスイは魔法を唱えた。

 光の糸がヘルツに絡みつく。

 ヘルツの動きが止まった。


「今です。エルシアさん。止めを」


 ヒスイの声が聞こえエルシアが動いた。

 エルシアが剣でヘルツの胸を貫く。

 ヘルツは血を流しエルシアへ左手を伸ばした。

 

「離れろ! エルシア」


 ガートンの声が聞こえエルシアは剣を抜きヘルツから距離を取った。

 うつ伏せにヘルツは地面に倒れた。

 

 ……


「終われない」


 女性の声と共にヘルツは立ち上がった。

 エルシアとヒスイは構える。

 

(何なの? こいつ)


 ヘルツは闇に包まれた。 


「急げエルシア。奴は危険だ。シルバーカンビオと唱えろ」


 ガートンから焦りが伝わりエルシアは危機を感じ唱えた。


「シルバーカンビオ」


 青いビキニ水着アーマーから銀色のマイクロビキニ水着アーマーに変わってゆく。


(なによこれ。少し動いただけで見えそう)


 エルシアは顔が恥ずかしさで赤くなった。

 ピリッとした空気がエルシアに伝わる。


(こんな姿で戦いたくないけど……そうも言ってられない……か)


 エルシアは前を向きヘルツを見た。

 ヘルツの体が揺れていた。

 ヘルツはゆったりと動きエルシアとの間合いを詰め斬りかかる。

 剣先が見えエルシアはかわした。

 ヒスイが魔法を唱えた。


「アレニエシャイン」


 ヘルツの闇が複数の光の糸を飲み込んで行く。

 複数の光の糸は全て消えた。


「うそ」


 ヒスイは驚き声がもれた。

  

 エルシアとヘルツの戦闘は数十秒間続いた。



 

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