第8話 俺、精神はおっさんなのでベイビー生活が辛い

 なんとか乳飲み子生活に慣れてきました、俺です。


 赤ちゃんってチョー退屈なんだな。ほんと寝てるだけ!中身が30代の俺には耐えられん!


 という訳で現在俺は人目を憚り基礎能力アップのため頑張っている。決して暇潰しじゃないんだからね!


 新興貴族である我が家はそれほど多くの使用人を抱えていない。家令ひとりと母ちゃんの侍女がひとり、ミリアム母ちゃんの侍女がなぜか3名、オスカーに侍従ひとりと庭師兼衛兵が2名。自宅から通ってくるメイド兼調理担当が3名とやっぱり通いの乳母が2名。


 子爵家としてはささやかだね。まあ人口100名程度の村にしては多い方かもしれんけど。


 グリフィス家がいい雇用先になっていればいいなとは思う。


 だから俺は結構な率で放置されてる。そりゃ貴族の6人家族を同数程度の使用人で回してるんだからな、赤子に構ってる暇なんかないよ。


 もしかしたら本気でカタリナ姉ちゃんに依存してるのかもしれない。実際中身が30代の赤ちゃんだから手が掛からないのも理由だろうし。


 そんな退屈な時間にやることと言えばやはり!自己研鑽能力開発でしょ!!


 とりあえず筋トレはデフォなのでしょっちゅうやってるぞ。プッシュアップ、クランチ、スクワット、プランク、ヒップリフトにレッグランジ各20回3セットずつサーキットトレーニングとして毎食前にやってる。


 まずは朝みんなが寝室から出て行って朝食を食べている間に軽くストレッチを行い、乳母から栄養摂取させて頂きひと眠りするフリをして皆が部屋から出たところでサーキットトレーニングを夕方まで2時間周期位でやってる。


 俺の授乳タイムは2時間毎っていうことだな。


 夜は父ちゃん母ちゃんが近くにいるから流石に筋トレは出来ない。ま、お陰で1日5~6セット程度のトレーニングになっている。


 抜き打ちでやってくるカタリナ姉ちゃんを察知するため気を張っていたら【気配察知】と言う技能が身に付いたよ。将来役に立ちそうだね!


 そうそう、技能と言えばあのレアスキルっぽい【粒子】と【不屈】についてもチェックを始めているぜ。


 正直【不屈】のスキルは赤ちゃん状態では全く検証出来てない。不屈に関わる出来事が全く起こらないからね。0歳で火事場のクソ力とか発動チャンス自体がない。


【粒子】の方もほぼ理解出来てはいない。今のところ分かっているのは、窓の外に見える草花の種子を念動力で手元に引き寄せられること位だ。どうやら豆粒程度の物体を好きに動かせる神通力スキルになっているようだ。


 豆粒より大きければ動かず、粉レベルの微細な粒も動かない。


 これではまるで【神通力】の下位互換スキルだなぁ。色々くっ付けた割には合ってない気がしてる。


 ちょいと気が付いたのは、庭の草花から種子を集める時は適当にざっと集めているのにその種子は綺麗に種類別分類されていることや、種子を土ごと掻き集めたつもりだがその中に泥や埃が混ざらないこと位などなど。


 うーん、この【粒子】スキル、まだまだ分からない所がいっぱいだ。これからもしっかり調査しなきゃね。


 現在はおっぱいが主食なので水分摂取量が多く用足しが近いのでトイレに行く回数が多い。当然隠れながら行っているからか、お陰で【隠密行動】【気配隠蔽】スキルが増えた。これも大概よく使うのでレベルが上がっているよ。


 主食がおっぱいと述べたが、見た目は赤子中身は大人な俺からするとこの食事シーンはかなりのご褒美兼地獄となっている。


 母乳とはただの水分ではないんだ。その正体は栄養はもちろん免疫抗体等様々な情報を含む母の血液なので、赤子の身体からすれば生命の水に匹敵するありがたい飲料。


 だがその赤子の中身である俺は30代男性、乳を吸うという行為自体が拷問に近い。今の俺なら柔らかく煮たお肉程度であれば食べることが出来るはず。


 おっぱいを飲むのは心に来るんだよなぁ。


 現在俺に授乳しているのは3人。ひとりは母ちゃんで残りは乳母だ。乳母って言っても2人とも多分まだ10代の少女。1人目はリタさんという女性でうちの護衛兼庭師さんの奥様。そろそろ2歳になる娘さんが乳離れしたから俺の乳母に立候補したそうだ。夫婦揃ってうちで働くことを誇りにしていると言ってる。もう1人はメアリさんという5歳の子供を育てるシングルマザー。旦那さんは以前魔物の群れが村を襲った時、魔物からメアリさんを守って殺されてしまったらしい。新婚だったそうでうちの父ちゃんが領主になってから妊娠が発覚、夫に死なれ乳児の子育てをしながらの労働が難しいことを知り哀れんだ母ちゃんが働きながら子育てが出来るようにと同時期に生まれたカタリナ姉ちゃんの乳母として雇った。


 この地域では8歳になると大人の仲間として認められるらしい。だから10代前半で結婚して出産する女性も多い。


 せめてリタさんとメアリさんが30代だったら俺も落ち着けるんだけど、自分より若い実母と10代人妻と未亡人のおっぱいを吸う30代だもんよ。色々と辛いぜ……


 そのせいだろう、【ポーカーフェイス】【ラッキースケベ】っていうパッシブスキルが発生したし、【ムッツリスケベ】の称号が発生した。


 なんでムッツリスケベなどと言う不名誉な称号が!?もしかしたら授乳時ちょっとだけ先端を舌で刺激して搾乳促進してるからか?母乳の量が増えて食事時間が短縮されるからやっていたんだけど。


 た、確かにみなさん授乳時にちょっとだけ顔を赤らめてらっしゃったような気がするぞ。


 ま、まあいい気のせいだ。うん、ポーカーフェイスは使えるなきっと……他は知らん。知らん……




 そんなことをしながら毎日忙しく赤ちゃんライフを満喫していたけど、赤ちゃんの成長は早いね。俺はメキメキと音を立てるかの如く成長し、このグリフィス家に生を受けてまる1年が経過した。


「タクミ様、新しい歴史の本を持ってまいりました。ここに置いておきますね」


「うん、ありがとうミリー」


 スキル【文字言語理解】と【異世界の知識】のお陰で言語や計算、理学なんかは出来るけど、この世界の歴史や文化は勉強しないと分からないからね。


 6歳になったメアリさんの娘さんのミリーは俺の侍女としてうちで働くことになった。


 俺が父ちゃん母ちゃん、家令やメイドを捕まえてはこの世界の歴史や文化を聞いて回るから流石に手が足りないと世話係に大抜擢。


 ミリーはカタリナ姉ちゃんと一緒にメアリさんの母乳を飲み、姉妹のように育って来たうちの家族みたいな子だ。


 俺から見ても本当の姉ちゃんに変わりない。むしろカタリナよりも姉ちゃんっぽい位だぜ。



 1歳にして歩き回り喋り倒し本を読みまくる乳幼児、それが俺『タクミ=グリフィス』。


 グリフィス子爵家次男としてのびのびすくすく成長をしていた。



”名前:タクミ

 種族:人間(男)

 位階:1

 生命力:3,781/3,781

 精神力:24,545/24,545

 体力:461

 知力:650

 敏捷:213

 器用:146

 気力:3,655

 魔力:2,025

 状態:良好

 技能: 粒子LV1、肉体改造LV5MAX、気配察知LV3、隠密行動LV3、気配隠蔽LV3、文字言語理解LV3、

 受動技能: 不屈、ポーカーフェイス、ラッキースケベ、異世界の知識

 称号:異世界転生者、融合魂保持者、ムッツリスケベ”

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