第6話 俺、三度目の正直で誕生する!

 ……おぎゃああああ!!


「生まれました!立派な男子ですよ!」


「良くやった!よく頑張ったな、お前!」


「あ、あなた……」


 はい、生まれました!どうも俺です。




 気が付くとまたも真っ暗な中意識が芽生えていて、これまたお約束の転生ボーナス技能【文字言語理解LV1】【鑑定LV1】を頂きました。


 これは多分お母さんの胎内だな。ある意味慣れちゃった。


 ステータスを確認した所こんな感じになってたよ。



 ”名前:タクミ

 種族:人間(男)

 位階:1

 生命力:30/30

 精神力:24,386/24,386

 体力:40

 知力:640

 敏捷:1

 器用:45

 気力:517

 魔力:1,894

 状態:胎児

 技能: 神通力LV3、雷気LV3、肉体改造LV3、魔力操作LV5MAX、恐怖耐性LV5MAX、文字言語理解LV3、鑑定LV3

 受動技能: 精神異常耐性、死耐性、異世界の知識

 称号:異世界転生者、融合魂保持者”



 いやいやいや今までと比べたら断然高ステータスだよな!精神力系統のステータスは肉体的な方の100倍から1,000倍位高い。これはおかしいんだろうな。


 技能も3回分の人生を足したからレベルが3にはなってるようだし、まずまずだと思う。文字化けもないしね。


 だけど、胎児だから敏捷1なのは仕方がないとは言え気になる。


 そうだ、前の時は【神通力】を使って精神を鍛えたんだったな。ならこの【肉体改造】を使って身体をピチピチさせてみたら強くなるんじゃないか?


 自分の身体を認識してみる。明らかに不定形な塊でしかない。


 うーんなんだろ、もしかして俺スライムなのかな?転生したらスライムみたいな話、なんか聞いたな?いや、気のせいだ。


 俺は頑張って身体を拗らせてみる。なんかちょっとだけ動けてるみたい。



 ぴょこぴょこ


 みょんみょん


 ふにふに



 うん、スライムだ。アメーバでも可。


 あっ!敏捷が2になってる!凄ぇ!こりゃあ生まれるまでやり続けることにしよう。



 ”神通力、雷気、肉体改造、魔力操作、恐怖耐性、鑑定の技能を集約する事が出来ます。実行しますか?”



 突然脳内に声が響く。ああ、ステータスメッセージか。名前を決めたりした時にも聞こえてたな。


 技能を集約するってなんだ?もしかしたらこの技能を持ってたらクラスチェンジ出来るレア能力でも開花するのかもしれないぞ?



 ”精神異常耐性、死耐性の受動技能を集約する事が出来ます。実行しますか?”



 なんと!レア技能がもうひとつキタ?


 子供の頃ゲームとかで経験したことのあるステータスやスキルの記憶や最近流行りのカードゲームをモチーフにしたアニメとかによくある、複数のレア度の低いアイテムを消費してひとつのレア度が上がったアイテムを手に入れるシステムなんじゃね?


 これはやるっきゃねえ!その技能を生贄にして新しい技能を融合召喚だ!ポチっとな!!



 ”技能の集約を実行しました。集約は9ヶ月28日後に完了します。また、集約に必要な技能は失われますのでご了承下さい”



 えっ!?技能無くなるんだったの?先に言えよ!【肉体改造】無くなったけど敏捷性上げれるのか?


 それに9ヶ月28日後に集約完了ってさ、暗に俺が生まれるのがその日だって言ってるような物だよね?


 あっなるほど!このスライムボディに納得したぞ。俺まだ受精卵なんだな。そりゃアメーバだわ。


 まあいいや、とりあえず身体が疲労で動かなくなるまでくねくねさせて様子を見るとしようか


 終了後ステータス確認したら、敏捷が更に1ポイント上がってた。


 どうやら技能がなくなっても訓練としては有効だったらしい。良かった。


 これなら俺が生まれるまでの間の暇潰しが出来るな。




 それから毎日暇潰しに身体を動かすこと9ヶ月28日後、冒頭のとおり俺は無事生まれたんだ。


 俺は生まれてすぐに身体を洗われ、柔らかな肌触りの布に包まれて両親であろう人達の元へ連れて来られた。


 母親の胎内で身体を鍛え続けたから生後間もないけど既に目も耳も使える状態になってるぜ。


 流石に首は坐ってないけど力を込めれば数分間程度なら固定出来るぞ。


 生まれてすぐトラブルに見舞われた時きちんと身を守れるようがんばったんだからな!


 そう言えばステータスの確認をしないと。



 ”名前:タクミ

 種族:人間(男)

 位階:1

 生命力:549/549

 精神力:24,386/24,386

 体力:271

 知力:640

 敏捷:489

 器用:72

 気力:2,726

 魔力:1,894

 状態:良好

 技能: 粒子LV1、肉体改造LV5MAX、文字言語理解LV3、

 受動技能: 不屈、異世界の知識

 称号:異世界転生者、融合魂保持

 者”



 おー出たでた、上がってるじゃん。ステータス値が結構増えてるぜ。この世界の標準が幾らなのかは知らないけど最初の1とか8とかよりは格段と上がってる。


 とりあえず数値的に即死はなさそうだ。


 ただな、技能欄に問題がある。


 1度失われた筈の【肉体改造】が何故か復活してるのはまあいいわ、あれだけトレーニングすりゃ自然と肉体改造されるだろうしね。


 問題はこっち。あの集約と言うか融合召喚で出来た新たなる技能なんだけど……何だこりゃ?


【粒子】と【不屈】


 よく分からん!!


 ボーナスで貰った【鑑定】が消えちゃったからなぁ、確認出来ねぇ。


【不屈】?受動技能って常時発動してる能力だよな。


【不屈】ってなんか根性スキルみたいな物に感じるぜ。仲間のピンチに頑張るとチカラが増すマッスル超人のやつみたいな物なのか、やられたらその都度パワーアップして復活する野菜の宇宙人みたいな物なのか?分からん。


 更に分からんのは【粒子】だ。


 全然分からん!粒子がどうなるの?どうするの?どう出来るの?


 有能技能っぽかった【鑑定】の失効はちょっと痛いんじゃないだろうか?


 まあいいや、考えても絶対に分からないやつっぽいしな。これから色々試していこう。


 さてと、ステータスを確認したらいよいよ両親とのご対面だな。


 俺は両親を割と早くに亡くした天涯孤独な身だ。だからこの世界の両親には期待してるんだよ。


 直近前ふたつの親は最低だったからな!今度はちゃんとした人であって欲しい。


 出来れば渋くて男らしい親父さんと包容力の高いお袋さんだったら良いな。


「おおお、来たぞ、我が息子よ!」


「あ、あなた、お待ちになって!私が先に抱きますから!」


「ええええ……」


 俺の目の前には椅子に座った桃色の髪をした美しい女性と、その女性に腰回りをガシッと掴まれたままこちらに両手を広げている青い髪の男性がいた。


 両親か?何だこの美男美女は!?明らかに前世の俺より若いし!渋さと包容力は諦めた!


「旦那様、名付けを」


 俺を抱いていた産婆さんらしき女性が話を進めるべく両親に問い掛ける。お世話を掛けます。


「お、おお、そうだな!そう言えば全く考えてなかったぞ!」


「あ、あなた?2ヶ月前から色々考えているって仰ってませんでしたか?」


「ああ、考えているとは言ったが決まったとは言ってないぞ」


「まぁ、お茶目さんですね、あなた」


 ……うわぁ、俺の父ちゃんと母ちゃんは頭の中がお花畑なタイプの人達だったわ!


「よ、よーし、今から良い名前を考えるぞ!何にしようかな?うーん、ご、ゴンザとかどうかな?」


「えええ!可愛くないわ!チャンタにしましょ!可愛いし役が付く気がするから!」


 な、なにぃ!?マジか!!もうちょっとあるだろうがよ!2ヶ月考えたんだろ?


 でもまあ俺の父ちゃん母ちゃんが決めた名前だからな!しっかり受け止めるしかねぇし。ゴンザもよくよく聞けば可愛らしい気がせんでもないしな。


 この世界に麻雀があるのかどうかは知らねぇけど。



 ”警告、現在この身体と精神は生まれたばかりの状態のためまだ構築が不安定です。現在の名前『タクミ』が変更された場合、ステータス値及び技能等に壊滅的な影響が及ぶ場合があります”



 マジか!やべえ!!叫べ、自分の名を!!


「タ、タクミぃ……」


 ゴンザやチャンタみたいな残念な名前を貰った上様々な意味で人生と努力を無駄にされてたまるかよ!


 生後数十分で言葉を話すなんて異常事態だが気にせず叫ぶしかねぇ!!


 俺の努力と将来を守る為に!!


「タクミ!タクミ!!」


 はぁはぁちくしょう、叫んでやったぜ。ぶっつけ本番で声が出たのは僥倖だったな。


「おおお!我が子が喋ったぞ!!凄い!天才だ!!もしかしたらもう歩けるんじゃないか?自分の名前を自分で決めれるなんて素晴らしいな!」


「流石私達の赤ちゃんね。でもなんて言ったの?アクビ?角煮?この子ったら食いしん坊な怠惰さんなのかしら?まあそんな名前もありったらありだけど」


 や、やべえ!うちの両親マジやべえ鬼やべえ!!アクビとか角煮って名前はありえん!!


「た、タクミだ!タ!ク!ミ!!」


「ま、つ、り!!そうね!盛大にお祭りしなきゃね!」


 勘弁してくれぇ〜

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