第5話 俺、駄女神を問い詰めて談判する
「お前の創造した世界ってもうすでに終わってんのな?」
『は!?貴方もう戻って来ちゃったの?なんで!?』
またあの白い部屋に戻って来てしまった。目の前にはいつもの駄女神。
「お前の世界における2度の人生で生存出来た時間は合計で数十秒なんだけどさ、どういう過酷な世界なんだよ!?もしかして千人にひとり位しか赤ちゃんが育たない世界なのか?」
『そんな訳ないでしょ?幾ら貴方達の世界と比べて新生児が生存しにくいとはいいえ、酷い地域でも二人にひとりは大人になるし、出産文化が高い地域はほぼ全ての出産が上手くいくんだからね!』
「いやいや、出産はいいさ。問題は生命の扱いが軽過ぎる事だ。片やマッドな試験管ベイビーの失敗作、もう片方は女児だという理由で母親ごと殺されたぞ?ここへ来た時も馬鹿駄女神に殺されたし、ここの奴らは殺人集団なのか?」
『そんな訳ないでしょ!!』
「あるわ!俺が立派な証人だよ!もう元の世界に帰してくれよ!!」
『む、無理言わないでよ!あっちは位階が高過ぎてよっぽどじゃない限り行けないんだから!私だって神様研修に行ったその一回しか行ったことないんだからね!』
神様研修って……なんだよそりゃ、そんな神が作った世界じゃ不安しか感じられねぇな!
俺がいた日本では他殺より病死や事故死、さらには自殺の方がはるかに可能性が高い。殆どの人が老化による健康状態の悪化によって死亡するだろう。事故死もたまにあるよね。メジャーなのは車輌による巻き込まれだろう。
職場の労働災害や自殺はあってはならない死因という扱いだしな。
日本では毎年約100万人以上の人が亡くなっているそうだ。そのうち他殺で亡くなっている方が毎年約5,000人程度らしいので、死者全体の0.5%が他殺となる計算になる。
対して今現在の俺に関する他殺率は3/3人(女神による物も含む実体験)で100%、生まれ変わっても俺は俺だとするとその計算は3/1人となりまさかの300%をマークするぞ!
キモ過ぎだ!何なら1回目の器にされてた女性達と2回目の母親を含めれば更に多くの生命が犠牲になってる。
『な、何だかどうもすみませんでした。数字にされるととんでもない違いが理解出来ました』
数字にするとその差は歴然。駄女神がガックリとうなだれた。
「だろ?なにが『人生をもういちど楽しみませんか?』だ!2回やって2回とも有り得ん死に方だったぞ!最初だって大概だし!」
『め、面目ありません……』
流石にしゅんとしてしまった駄女神。ち、ちょっとかわいい……違った、ちょっと可哀想になってきたな。
「これからどうするんだよ。元の世界には帰れないんだろ?でももう普通に転生し直すの俺もうやだよ?前回は母親の胎内でけっこう頑張って能力開発やったんだよなぁ。あれをもう一度はやりたくないな」
『じゃあどうやったら許してくれますか?』
駄女神、上目遣いは止めろ!ときめいちゃうだろ!
そうだなぁ、俺としては『土屋巧』の人生がベースになっているのでそこは保ちたい。折角こことは違う異世界の記憶を持ってるんだから無駄にしたくないんだよね。
更に言えば、あのホムンクルスの時に手に入れた技能の数はとても多くて魅力的。是非あれは欲しい。
更に2回目、TS時の胎内訓練だって活かしたい。神通力とか絶対レア技能だ、堪らんぜ。
「例えばさ、この俺の魂に1回目と2回目の魂を融合させるとかどうよ。3回目になる魂は通常の3倍の魂容積を持つんだ。かなりの高性能だから少々の事じゃやられそうにないだろ?」
『えー、魂の容積を増やすってチートと言うよりただの贔屓でしょ?同じ容量の人間なのにステータスやスキル差があるから個性なのよ。容積3倍ってズルくない!?』
「お前の作った世界だとその才能差の甲斐無く死んじゃうんだけどな!」
『ご、ごめんなさい……』
うーん、悪くないと思うんだけどな。前世の記憶を持ち越す俺としてはホムンクルス失敗作だってTSだって立派な記憶だし、役に立つ。さらに補強された魂の強さとかなんかメッチャアドバンテージありそうでお得感あるし。
それも全部自分なんだから副作用もないだろうしね。
「お前、今回やったことは明らかに失敗だよな?でも失敗になるのは女神として不味いんだろ?わざとか不可抗力かは知らねぇけど俺を状況を利用して殺し、無理やりこっちに引っ張ってきて転生させてさ、結果2回も生後間もなく殺害させてしまったなんて大失態も甚だしいと思うんだ。それを地球の神様が見たらどうなるんだろうな?」
『……そ、それだけは駄目よ!あっちの神様は現在休養中なんだけどさ、すっっごく厳しい方なのよ!なのに自分の生み出した被造物に対する愛情は半端ないし、周りの取り巻きの神様連中も武闘派揃いだしさ!人生をみんな修行に費やすとか生きながら自ら死んで聖人やら神になるとかおかしいでしょうよ!!ゴリゴリの脳筋神ばかりだわ!!』
どうやら地球の神様は厳格な人のようだ。ううむ、余り聞きたくないな、怖いわ。
「あ、あんまり言わんで、色々怖いから!」
『だってさ、その取り巻き達って神のくせに陸海空で勢力争いをしちゃってたり取っかえ引っ変え女の子を孕ませては亜神を増やしたりさ、予言によって最後の日に滅亡するって分かってるのに我を張って死んで魂になってまで最強戦士として戦おうとしたり、王子様の身分を捨てて悟りを開くためあらゆる仙人の下で苦しみに身を置いた結果苦しみの悟りは違うなって本当の悟りを開いて死んだら神になっちゃったり、大工の息子なのにバンバン奇跡を起こして人間を導いた挙句権力者に睨まれて殺されたらその殺されることによって聖人である自分の身体が神に対する生贄となるから人間は許されるとか言って3日で復活して神々のトップに出世しちゃうとかさ、色々ヤバいもん。そしてそれを見守っちゃう最高神様の懐ってばもう穴空いてるかってくらいヤバいから!』
「お前の発言の方がヤバいからね!黙れ!!」
信仰は色々あるから!みんな違ってみんないいんだから!!
まあこの駄女神よく勉強はしてるみたいだな。仕方がないからチクるのはやめてやるよ、チクリ方自体分からんけど。
「だからさ、俺の魂をアンタの世界で強く生きさせるため敢えて前世プラス2回の無駄人生を送らせ魂強化を施したってことにすればいいじゃん。魂+3ってやつだ。結果3回分の人生を注ぎ込んだ次が本番ってことなんだよ」
『な、なるほど……貴方天才なの!?そうすれば私怒られずに済むかも……い、いえ違う、そうよ!私は初めからそのつもりだったのよ!私ってば天才だわ!流石女神よね!オホホホホ!!』
駄女神がふんぞり返って高笑いをかましてる。ふんぞり返り過ぎてパンツ丸出しな辺りが駄女神たる所以だ。
とは言え幾ら強固な魂を手に入れたとしても生まれがまたホムンクルスだったら意味ないんだぞ?
ちゃんとしてくれ頼むから!!
「とにかく次はきちんとした両親の下きちんとした生活空間を準備しろよ?」
『と、当然よ!て言うか3人分の魂が入った身体ですからどんな環境でも問題ないわ、きっと!』
「きっとってなんだよ!吃ってるし!不安しかねぇわ!」
おいおい大丈夫かよ、ちょっと調子に乗り過ぎじゃないのか?
あれ?駄女神の周りから真っ白い煙が噴霧されて辺りに漂い始めたぞ。何気にもう転生が始まってるんじゃないか?
『それじゃさっそくそのルールでいってらっしゃーい!もう帰って来るんじゃないわよ』
「おいおいおいちょっと待てって!細かい話とかまったくきまってない…………
もうちょいルールとか制限的なやつ聞いといた方が!それにまた出オチのリスキルとかやなんだけど!!
『ばいばーい!良い人生を送って下さいねー!』
目の前が真っ白になり、俺の意識は途絶えた。
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