第4話 俺、また転生したけどやっぱり失敗してる

『な、なんでもう帰ってきてるのさ!』


「知るか馬鹿!お前が馬鹿過ぎるから世界中の生命の知能レベルが下がってんじゃねえのか?」


『な、なんですってーー!!女神に向かってなんてこと言うのさ!!』


 俺は再度あのクソ馬鹿駄女神のいる白い部屋にやってきた。


 そして、大絶賛抗議中だぜ!この馬鹿許さん!


 確かにこの駄女神はちょっとケバいが見てくれは良い。だがただそれだけだ!許さん!!


 頭は弱いし足りないし。だいたい自分の世界をより良く導きたいのなら自ら時間と慈しみを掛けて育てるべきじゃないのか?


 元ただの人間、現廃棄されたホムンクルスの魂だった俺ですらそう思うのだがな!


 よその世界から人の魂を攫ってきて自分の世界に貢献させるなんて、そんな楽なんかしちゃ駄目なんだよ!


『わ、私は神よ!女神なの!!女神は間違いなんか犯さないわよ!今度は立派な人間の子に転生させてあげますからね』


 駄女神がふんすふんすと鼻息を荒らげてる。ほんと頼むぜ?モンスターとかやだよ俺は!





 ……真っ暗だ。ここは何処だ?


 なんて思ってはみたものの、まあ考察するに俺はきっと新しい生命である受精卵となったんだろうな。新しい生命として母親の胎内で生命活動を始めたから俺の意識も目覚めたのだろう。


 ちょっと試してみるか、『ステータス』


 ”NAME:blank

 TRIBE: homunculus


 "Fill in the blanks!"


 はいはいやっぱりね、前と同じだ。日本語表記に変更っと。ついでに名前はタクミでいいぞ。


 "Ok. Convert language to Japanese


 異世界転生を確認、


 ようこそ異世界へ!異世界転生者特典:技能に【文字言語理解LV1】【鑑定LV1】が贈られます


 名前:タクミ

 種族:人間(女)

 位階:1

 生命力:1/1

 精神力:1/1

 体力:1

 知力:10

 敏捷:1

 器用:1

 気力:40

 魔力:1

 状態:受精卵、未成熟

 技能: 髮サ豌怜キ・莠九?∫ュ玖i蠅怜シキ縲、文字言語理解LV1、鑑定LV1

 受動技能: 縲∫黄逅?炊隗

 称号:異世界転生者”



 よしよし出たな。流石に未熟児過ぎてステータス値は1しかないけど前回のホムンクルスボディと違い今回は『精神力』『魔力』に1ポイントが振ってある。


 梶山さんの娘さんが言ってた。こういう異世界転生先ではだいたい魔法が使えるって。


 そのために転生後【魔力操作】を訓練するのがいいってことらしいな。


 えーっと確か、魔力が流れるのは血液の流れを感じることと、自分の身体の中の魔力を見つけること、だったな。


 やり方は全く分からんけど、このお母さんからおぎゃーと生まれるまでにはまだ数ヶ月掛かるだろう。時間はある。


 色々試してみるかね。


 ……ふむふむ、やれば出来るものだ。なんと2時間で身体の中の魔力と呼ばれる物の確認が出来るようになった。


 イメージとしては腸が動くような感じで魔力という物が感じられるんだが、それを胃に逆流させ、更に近くにある心臓に移すと血液を介して魔力が身体中を駆け巡るんだ。


 まだ臓器がないから以前の身体をイメージしたものなんだけどさ。


 だが、俺は魔力の使い方も使い道も知らない。魔法なんて分からないしこの世界に魔法があるのかどうかも分からない。


 この魔力を使わないことには折角出来るようになった魔力操作も持ち腐れてしまう。


 うーん魔法か、魔法、魔術、ハンドパワー的な……違うな、あれは手品と心理学だった。どちらかといえば超能力だ、あれなら分かる。


 例えば、こんなに真っ暗だと周りに何があるかなんか分からない。そんな時超能力で見れば分かるんじゃないか?


 母の胎内にいるとすれば、身体を透視すれば向こうが見えるとかな。


 あとはやはり物を動かしたり物体に干渉したりする力だな。


 透視で外を見ながら念動力で本のページを開けば暇潰しになるぞ。



 ”【ESP】【PK】の技能を取得しました。該当する技能がこの世界に存在しないため、この2つの技能を融合させ【神通力】を取得します”



 なにっ!?折角カッコイイサイキック能力を手に入れたと思ったら、一気に1,000年前の胡散臭い手品モドキになってしまったぞ!!


 ていうか何?想像するだけで技能が生まれるのか?そんな簡単でいいんだ。


 よし、それならまずは俺のステータスが文字化けしちゃってる部分、あれを解読するとしようか。



 名前:タクミ

 種族:人間(女)

 位階:1

 生命力:1/1

 精神力:1/1

 体力:1

 知力:10

 敏捷:1

 器用:1

 気力:40

 魔力:1

 状態:受精卵、未成熟

 技能:神通力LV1、電気LV1、肉体改造LV1、魔力操作LV1、文字言語理解LV1、鑑定LV1

 受動技能: 異世界の知識

 称号:異世界転生者”



 おお、どうやら文字化け技能は【電気LV1】【肉体改造LV1】【異世界の知識】だったのか。


 確かに俺は電気工事と鉄塔作業の為の肉体強化位しか特技なかったかもしれん。ちょっとがっかりだな。


 そう考えるといますぐに新しい技能を考えるってのも難しいな。遠くを見るとか何かを手に入れるなんてのはそれこそ【神通力】で出来そうだし、他にこれと言ってやりたいことねえしな。


 とりあえず【魔力操作】の練習でもするか……




 そんなこんなで胎児として暇潰しに魔力操作をやりまくった結果、なんと精神力と魔力が鬼上がりしてしまった!


 名前:タクミ

 種族:人間(女)

 位階:1

 生命力:9/9

 精神力:24,386/24,386

 体力:5

 知力:560

 敏捷:1

 器用:8

 気力:261

 魔力:1,894

 状態:胎児、母体臨月による出産寸前

 技能:神通力LV3、電気LV1、肉体改造LV1、魔力操作LV5MAX、文字言語理解LV2、鑑定LV2

 受動技能: 異世界の知識

 称号:異世界転生者”



 もう生まれそう!


 この10ヶ月の間母親が眠っている隙に【神通力】の透視を使用し、念動を使って部屋にあった本や道具を読み漁り使いまくった。初めて神通力を試した時、母体である母親がそれに気付いて驚きのあまり流産しかけたんだよ。


 そりゃ目の前にある物が急に宙に浮いたらビビるわな。母ちゃんゴメンよ。


 それからは母ちゃんが寝た深夜にこっそり神通力を使ってたよ。


 これが情報収集と同時に良い訓練になったんだよなぁ。


 そして、母親が起きている時はひたすら魔力操作をして精神力を消費する。精神力が枯渇すると回復した時最大値がちょっぴり増えることが分かったからね。


 暇さえあれば魔力の塊を動かす練習をしてたもんさ。


 そういえば魔力の塊を鑑定で調べたら『魔素』っていう物質だということが判明したぞ。どうやらステータスに書いてある魔力とは一度に使用出来る魔素量の限界値のことらしい。


 魔素を動かす練習のお陰で【魔力操作】の技能がレベル5でカンストしました!やったぜ!


 俺ってばけっこうこの世界に馴染んじゃってるんじゃないかな?


 という訳で、いざ!俺、バースしちゃいます!



「おぎゃああああっっ!!」



 俺、爆誕!!



「閣下、女児に御座います」


「ふむ、女子はいらんのう。我がバルタン公爵家に必要なのは優秀な男児とそれに見合う優秀な妻となる者である。家から出てしょうもない家柄との誼を結んでしまう姫なぞ不要じゃ。母親ごと処分せよ」


「御意」


 は?俺は女の子だったのか?


 慌ててステータスを確認してみると、種族の欄に【人間(女)】との記述を見つけた。


 まさか、これが噂に聞く『TS転生』って奴か!?名前を聞いたことあるだけだが!


 それに、何やら『不要』などと不穏な台詞が聞こえたような気がするんだが?


 そう思考した時、不意に天地がひっくり返ったような感触に陥った。


 新生児の俺だが胎内にいた時の訓練で既に視力は発達している。その視界に映ったのは真っ赤に染まった首無し人形を抱いたまま身体中に槍を突き立てられ、虚ろな表情で虚空を見つめた銀髪の女性だった。


 ……ああ、悟ったわ。あの首無し人形……俺だ。


 おいおい、幾ら不必要だからって普通赤子の首撥ねるなんてするかね?ひでぇ親だぜ。


 まあ不幸中の幸いに、不思議と痛みや恐怖がないんだよなぁ。赤ちゃんだからなのかなぁ?不思議だ。



 その思考が俺の限界だった……

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