第3話 俺、転生したけど失敗してる
……目が覚めるとそこは水の中だった。
身体が上手く動かねぇ。なんだ?俺は一体どうなったんだ?
……ああそうだった!あのクソ馬鹿によって、いやクソ馬鹿のせいでアイツの世界の住人に生まれ変わったんだった。
あの後駄女神にわざわざ俺を殺す必要性を問い詰めた。
やれ馬鹿だドジだ駄女神だ自分が死んでやり直せだと罵声を浴びせまくってたら、過去生きたまま女神の作った世界に転移した奴らが自分勝手にし過ぎた上、駄女神本人よりも強くなってしまい手が付けられなくなった事をべそかきながら喋った。
それがトラウマになったのか元の姿のままその世界に連れ込む『異世界転移』をやめ、寿命を満了し満足して亡くなった美しい魂に声を掛けては『異世界転生』させていたそうだ。すでに何名かの魂を異世界に送ったことがあるらしい。
高い位階の魂は駄女神の世界に強い影響と発展を促すらしく、転生すると過去の記憶と今までの経験が【スキル】として発現し易くなるという特典があるそうだ。
俺の魂は穏やかで綺麗な色をしていたから目をつけていたらしい。そう言われてしまうと……まあ悪い気はしないかな、うん。
あれ?もしかして俺ちょろい?ダメだダメだ駄女神許すまじ駄女神シバくべし!だぞ!
あと、もし転生先でワガママしてる転移者と接触した際にはそれとなく自分勝手はやめるよう注意してくれと頼まれた。強く頼むとリアクションが怖過ぎるからそれとなくでお願いねと念押しもされたよ。
それは知らんがな!自分で言えや!
まあ考察するに多分その転移者さんは普通の人格者なんだと思う。このクソ馬鹿駄女神が不甲斐なさ過ぎるせいでやむなく手を下してるだけだろうな。
もしその転移者とやらに出会ったら転移者達に賛辞を述べあのクソ馬鹿駄女神への仕返しをお願いすることにしよう。
そう決意し新たな転生を受け入れ、イマココだ……が。
ここはどこだ?
何か透明なケースの中にいるようだ。身体が動かしにくいのは……おおっ!俺の手足、まだ形がない!なんだこの蛹のような身体は!モゾモゾと蠢く位しか自由度がない。
ん?この状態は……分かったぞ、俺はまだ胎児なんだな。だから水の中にいるのか。
だが、この透明ケースは解せん。これは普通の状態ではない。
非常事態の気がするが仕方がない、どうしようもないので受け入れよう。
それよりも、だ。
俺はあまりこのような現象に詳しくないんだが、この状態が駄女神の言ってた異世界転生ってやつなのか?なんかネットの創作物として話題になってたヤツってこれのことだったのか?
梶山さん所の12歳になる長女がその異世界物とやらにハマってて、遊びに行くとめちゃくちゃ説明してくるから何となく聞いてはいたんだよな。よく分からんしあまり好みじゃなかったけど。
たしか彼女の話によると、異世界に行くとだいたい初めは魔力操作という物を訓練するらしい。そのためにはステータスなる物の確認をしなくてはいけないそうだ。
ステータスって言うのが何かは知らないよ。それはあって当然とばかりな反応で話を進められてたから。まあ小学生に丁寧な説明を求めるのもアレだし分かってたフリをしてたんだ。
うーん、ちゃんと聞いとけばよかったな。『ステータス』と念じればいいのか?
”NAME:blank
TRIBE: homunculus
"Fill in the blanks!"
な、なんだこれ!これがステータスってやつか?だけど英語って……理解は出来るけど面倒だな。日本語表記にして欲しい。
"Ok. Convert language to Japanese
空欄を埋めて下さい"
おっ!日本語だ。空欄……ああ、名前を付けろってか。そういうのは親の役目だろ?俺が勝手にやっていいのか?
そう考えたら頭の中から声が聞こえてきた。
”異世界転生を確認出来た個体は転生ボーナスを受け取れます。異世界転生ボーナスはステータスの空欄を埋める事で条件が満たされます。空欄を埋めて下さい”
声というか、イメージが聞こえるような感覚だ。なるほどよく出来ているな、通常の胎児には今の俺のような思考はないだろう。今この状態でステータスとやらを埋めることが出来るやつは異世界転生者だろうってことだな。
まあ胎教として常に母体に子供の名前を呼びかけてやればワンチャン通常の子でも胎児にしてステータスを埋めることが出来るかもしれない。
いずれチャンスがあったらやってみよ。相手が必要だけどな。
とりあえず俺の名は巧……ここはカタカナでタクミ、としとくか。苗字は今後俺の親になる人から頂くとしよう。
”異世界転生を確認、
ようこそ異世界へ!異世界転生者特典:技能に『文字言語理解LV1、鑑定LV1』が贈られます
名前:タクミ
種族:ホムンクルス?
位階:1
生命力:2/2
精神力:0/0
体力:2
知力:8
敏捷:1
器用:1
気力:40
魔力:0
状態:未成熟、生命活動不可
技能: 髮サ豌怜キ・莠九?∫ュ玖i蠅怜シキ縲、文字言語理解LV1、鑑定LV1
受動技能: 遲玖i逅?ァ」縲∬i菴捺隼騾?逅?ァ」縲∫黄逅?炊隗
称号:異世界転生者、人工生命体失敗作”
おお!これがステータスか!
なになに?うーん基準がよく分かんないけどめちゃくちゃ弱そうだな。まあ胎児だから仕方がないのかな?気力とやらだけは多いけど。
それと、技能とやらは文字化けが酷いな。さっきボーナスでもらった【文字言語理解】と【鑑定】っていう技能が書いてあるのは理解できた。
あとは、称号だけどさ……異世界転生者はいいとして最後の【人口生命体失敗作】って、なに?種族の【ホムンクルス?】や状態【未成熟、生命活動不可】も気になるわ!
俺、転生先人間じゃなくね?ホムンクルスってあれだろ?瓶の中に人の精液や排泄物やハーブやらをいれて腐らせ、人間の血液を栄養に与えてやれば人型の生き物が出来るってやつだろ?
この後牛やら馬やらの胎内に移植させたら完成らしいけど、瓶から出したらすぐ死ぬから移植自体が無理だっていうアレだ。
それに未成熟、生命活動不可っていうのは失敗作ってことだろ?称号も失敗作ってなってるしな!
何気に瞬きが出来ているので目だけは完成してるようだが、これってかなり詰んでる気がするぞ?
気が付くと目の前にひとりの男が立っていた。髪は真っ白で背中は曲がってる、年寄りにも見えるが……なんだこいつは?
「おおう!目が動いている!生命活動の兆しが……これは成功かもしれん!すぐに別の器に入れなければ!!」
男は俺の入っている瓶を持ち上げそのままどこかへ移動していく。ぐおお、ゆ、揺れる、ぎもぢわるゔ。
「よーしよーし、どれに入れようかな?チェックしておくか。」
やっと揺れが収まってきたぞ。辺りには丸まった紙切れや積み上げられた本がある。どうやら俺の入った瓶は机の上に置かれたらしい。
男は俺を手放しその部屋にある物体を触り始めた。
よく見ると何やら肌色の物体が5つ。手足が生えてるように見えるな、人形か?ベッドなのか椅子なのかよく分かりにくい家具に座らされた人形は、大きく股を開いた状態にされているように見えた。
その胸部には女性らしさを伺わせる物が付いている。これは……人間の女性?女性の人形か?
人には見えないんだが、本当に人形なのか?
一見裸の女性が数人いるようにしか見えない状態なんだが、俺にはどうしてもそれが人には見えないんだ。
なぜならその女性らしき物体からは頭部、正確には首から上が取り外され数本の管が刺してあり、後ろにある金属製のタンクみたいな物に接続されているから。
人な訳が無い……よな!?
男はその物体ひとつひとつの股間をまさぐり状態を確かめているようだ。
「うーん、この器が今1番状態が良さそうだな、よし、これに移そう」
ま、まさか!!この女性の身体が……器!?本物の人間が、器なのか!?
「よーしよし、新たなる生命よ!この容器に胎をなして育つのだぞ?そしていずれは私の身体となるのだ!この天才にして至高の存在である私の器となるのだ!わははははは!!」
や、やべえ!!やべえヤツいた!
あのクソ駄女神の世界にもマッドサイエンティストがいたぞ!こいつはやべえ!!
それ以前に、コイツは俺を瓶から出そうとしてる。確かホムンクルスは瓶から出した瞬間死ぬんじゃなかったか?
コイツを野放しにするのもやばいが……当面……俺は、死ぬ!
今生まれてきたのに俺はもう死ぬのか?……い、いや、こんな奴の道具として生まれるくらいなら死んだ方がマシだな。
”幾つかの技能はこの世界の技能に該当しません。該当する技能に再構築します……完了”
突然脳裏にメッセージが現れた。
び、ビックリした!ステータスが発動したのか。いや、今はそんなことをしている場合じゃない!
男は俺の入っている瓶をこじ開け、手のひらに俺を掴んだ。
ぎ、ぎゃあああっ!!痛え!苦しい!!
身体が燃えるように熱く、捻り切られるように痛んでる。なのに、寒い!
痛みで覚醒してるはずの意識が遠くなっていく。
こ、これが、死か……
最初の墜落死は最後気を失ったからな、これが記憶に残る初めての死になるんだろう。
は、早く死なせろ!苦し過ぎる!!
”構築完了
名前:タクミ
種族:劣化したタンパク質
位階:1
生命力:0/10
精神力:0/0
体力:2
知力:64
敏捷:1
器用:1
気力:246
魔力:0
状態:腐敗
技能: 雷気LV1、肉体改造LV1、恐怖耐性LV5MAX、文字言語理解LV1、鑑定LV1
受動技能: 精神異常耐性、死耐性、異世界の知識
称号:異世界転生者、人工生命体失敗作、人工不死生物”
ああ、技能とやらが見えるようになってる。ステータスも一部上がってるなぁ。今更だけど……
だけど……だけどどうやらここまでだ……
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