松明

わたあめ

第1話 初めまして

2020年──私は受験勉強を頑張り、晴れて高校生になれるという勝負を勝ち抜いた。

同級生や一緒に受けた近くの子達も皆揃って喜んでくれた。

そして、入学してから数日経ったある日の事、下校中の私にショートカットの女の子が目の前に現れた。


「こんにちは! 貴方が桜木さんかな!? 私は桃井っていいます! 突然ですが、桜木さん──付き合ってください」


「え・・・いやですけど」


私を含め近くにいた友人数名が突然出てきた変な人の告白に少し引き気味になっていたが、どうしてか、彼女は断っても尚私の腕を掴んで付き合いましょうと何度も迫ってくる。


「なんなんですか?!気持ち悪い。 私は貴女の事なんて知らないし、関わる気もないですし目の前から消えてください」

そう言うと、桜木の腕をずっと掴んでいた彼女はそっと手を離しニッコリと笑って分かりましたと走り去った。


「去ったわね。 桜木さん大丈夫? 何も怪我とかしてない? してなさそうね、良かったわ。 でもあの娘は流石に気持ち悪かったわねえ」

安全を確認してから近寄ってきたのは、友人の1人である鈴木麗、皆はレイちゃんと呼んでいる。


「本当よ...あぁ、本当にびっくりしたぁ。 レイちゃあ〜ん 慰めて〜 はぁ...レイちゃんの肉壁」

桜木がレイちゃんの胸へ倒れ込むと、彼女は咄嗟に頬を両手でつまんで引き回す。


「だ〜れが、肉壁ですって!? ええ!? ゆいこちゃん!!」

「いふぁい、いふぁいふぇふ。 ごへんにゃふぁい!! ひっはふぁないへぇ」


「あははは!! ゆーちゃん ほっぺたマシュマロさんじゃん!! マジでおもろいっぷっ。 写真撮ろ」

ぐぬぬぬと歯を食いしばりながら怒る彼女と私を横から指さして笑う少女。


茶髪でボブに近い彼女の名前は、前田美結。 制服がブカめな所謂ギャルっぽい女の子だが、地肌が凄く綺麗なせいで化粧いらずの女の子。


「「撮るな!!」」

「やーだ」


桜木と鈴木が手を前に伸ばして奪おうとするが、彼女はそれを ユラリと避けて、倒れてる2人を背景に自撮りをした。


「こういうのも、大人になったら絶対懐かしい記憶になるから保存したいんだよね〜ダメかな」

彼女がケラケラと笑っていると、ビニール袋を片手に、そのスマホを上から奪い前田の頭に叩き下ろして携帯を返す人が居た。

「ならないから早く消せ」

彼女の名前は田中ケイタ、男の名前なのだが、これには訳があり、親が名前だけで近寄る男はロクな男は居ないという教訓から男の子の名前を付けられている。

そして、制服も学ランだがしっかりと女の子である。



「けーちゃああん! 酷いんだよー!? 皆して頬は抓るわ写真は撮るわで」

桜木は、そんな彼女に抱きつこうとするが田中は溜息を吐いてから、ゲンコツを桜木に落としてそのまま某幼稚園の主人公のママがやっていたグリグリをお見舞いした。


「元はどうせお前だろうが……桜木ィイ」

「ああああ!! いたい!! ごめんごめんごめん」


こうやって、普段と変わらない毎日を過ごしている桜木達の生活は刻一刻と変わり始めていく。


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松明 わたあめ @shi-chan8250

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