第6話 今日も町に行く

翌日目覚めたフォルテは、昨日と同じようにクスリを作り、急いで町に出掛ける準備をする。大量にお金を持って歩くのは危険だと少年に言われたため、必要最低限のお金だけを袋に入れ出発する。

「じゃぁ行ってくるね」

二回目の転移魔法だからか慣れ、すぐに町についた。

今回は一旦ギルドに行って、属性に関して聞きにいこう。

ギルドにつくと、昨日とは違って中に入った瞬間に様々な人に取り囲まれた。

「おいお嬢ちゃん、パーティーに興味ねぇか?」

「おい、抜け駆けはやめろよ。俺が先に目つけてたんだ。」

「ちょっとあんた達、こんなむさいやつといるよりも、私達女といた方が楽しいわよ。」

「ええっと、あの」

「お静かにっ!」

私があたふたしていると、リリーさんが割って入ってきてくれた。リリーさんの一言に、先ほどまで騒がしかった人々が一斉に静かになった。

リリーさんすごい。

「失礼致しました。さあ、フォルテさんこちらにどうぞ」

申し訳なさそうなリリーさんの後について、昨日と同じように受付まで行く。

「こちらが、フォルテさんの属性です。」

リリーさんから紙を受け取って眺めると、フォルテは困惑した。

「これって」

「はい。フォルテさんは全属性持ちでした。とっても珍しいんですよ。今のところ全属性を持っているのは、大魔法使いと呼ばれる三界人のアモル様、カエルム様、アニー・トランク様の三名が知られています。他にも全属性で生まれてくる方はいらっしゃいますが、どの方もその魔力に呑まれることがほとんどです。・・・あっ、でもフォルテ様はもう15歳を過ぎていらっしゃいますよね。そのほとんどが15歳を前に亡くなられるので、フォルテ様は魔力量の方が上回ったと言うわけです。」

一瞬表情が暗くなった雰囲気を察したのかリリーさんはフォローを入れてくれたが、私にとって全くフォローになってなかった。

私はまだ9歳だ。・・・・ん?でも前世でも18歳まで生きたし、死因は処刑だもの。きっと大丈夫よね!

そう考えるとなんだか前向きな気持ちになれた。

「そうなんですね。」

それだけ残してお礼をすると、そのままギルドを出た。出る際にも他の人の視線が刺さったのだけれど、リリーさんがいてくれたおかげで、また囲まれることはなかった。

昨日とは違い、今度は図書館ではなく本屋さんへと向かった。

本屋さんはギルドのすぐ隣にあったため、なんなく見つけることができた。

中に入ると、図書館とはまた違った雰囲気が合った。

こちらも本が種類で分けられていたため、とりあえず魔法に関する本や、薬草、剣術など興味のあるものをひとしきり購入することにした。

購入した際に、店主は本を自宅まで送ることを提案してくれたが、先日宝石店の店主が見せてくれた拡張魔法を覚えていたため、とりあえず外に本を出してもらうことだけを頼んだ。

「これでいいかい?」

「はい、ありがとうございました。」

店主に頭を下げ、空気に向かって魔法を施す。そこに切れ目ができ、その中に本を詰め込んでいく。魔法を解除させると、その切れ目がなくなり店主は呆気にとられた表情でそれを見ていた。

「おい、本はどこに消えちまったんだ?」

「あ、拡張魔法で空気の中に入れました。もう一度使って取り出すので大丈夫です?」

回答になっているか分からないがとりあえず答え、そのまま頭を下げて帰路につく。

と言っても、店主が見えなくなった瞬間に転移魔法を使って家に戻ったのだが。

「ただいまっ」

『おかえり。今日は早かったんだね。』

「うん。今日はここで勉強しようと思って。」

フォルテは空気に対してまた拡張魔法をかけ、入れた本を取り出す。

初めは「様々な魔法について」ね。

『僕も一緒に読んでもいい?』

「もちろん」

少年とともに本を読み進め、互いに感想を話しあった。

気がつけば今日も辺りが暗くなっており、急いで寝る支度をした。

『ねぇ。僕、君に会えて良かった。だって毎日楽しいもん』

「ふふ、私も会えて良かったわ。そういえば、貴方の名前はなに?」

『・・・僕。・・・・・・自分の名前が思い出せないんだ。』

「・・・そうなんだ。まぁ、なんだっていいわ。明日からいろんな勉強をするわよ!」

『うん・・・・・ねぇ』

「ん?どうしたの?」

『ありがとう』

少年の言葉を最後に、フォルテの意識は途切れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る