第5話 図書館
やっぱり情報収集といえば図書館よね。
とりあえず町の中を歩いていると、すぐに図書館は見つかった。
中に入るとここも涼しく、周りは数多くの本が棚に並べられている。
今回は魔法に関する本を探してみよう。
図書館は様々な本が種類別に分けられていたため、すぐに魔法に関する本は見つかった。
フォルテは魔法を学んだことがなかったため「基礎」と書かれている本を選んだ。
近くにあったテーブルにつき、すぐに本を開く。
魔法の基礎・・・
魔法とは、その人間の属性により使用できる魔法が異なる。しかし、全員が魔法を使う能力を保持しているため、生活魔法に関しては共通で使うことが出来る。
なるほど、私の場合まだ属性が分かっていないから、他の魔法に関しては後にして、今回は生活魔法を使えるようになることを目標にしましょう。
なになに・・・?
暖炉に火をつける魔法。植物を生長させる魔法。洗い物を勝手にしてくれる魔法。
すごい!便利な魔法がたくさんあるのね。
「お客様・・お客様。すみません、閉館のお時間になりました。」
「えっあぁ。すみません」
外を見ると確かに真っ暗になっている。周りにも誰もいない。
いつまでも居座っていたことに申し訳なさを覚え、急いで準備をして外に出る。
「ふぅ、集中すると周りが見えなくなるのは直した方がいいわね。」
しかしこれはフォルテにとって嬉しい気づきだった。前世に彼女はここまで集中して何かをしたことがほとんどなかったからだ。
「よし、覚えた魔法を使ってみようかしら。」
地面に対して平行になるように手をかざす。
そこで呪文を唱えようとするも、元来淑女としての教育を受けていたフォルテにとって、人通りのあるところで大きな声を出すということが恥ずかしくて出来なかった。
これって声に出さないといけないものかしら。心の中で唱えても大丈夫・・よね?
もう一度意識を集中させ、魔力を絞り出す。
ー転移魔法ー
次に気がつくと、小屋の中についていた。
『うわぁっ、君どこから出てきたの?』
「やった、成功したのね。私魔法を使ったの。生まれて初めて!!!!」
『そうなんだ!良かったね、成功して』
「うん」
少年の方を見るとなんだか寂しげな目をしていた。
「・・・そうだ、私お土産買ってきたの」
『え?何々!?』
じゃーんと言って中から、木製の剣を取り出す。
『わぁ、すごいっ!僕こういうの欲しかったんだ。・・・・・でも』
またしても暗くなる少年の顔にどうしたのだろうと考えていると、少年が剣の近くまで来て、触る仕草をした。
しかし、少年の手は剣を掴むことはなく宙をかいたようになった。
『触れないんだ』
「・・・・・」
そうか、この子は幽霊だから。・・・・でも
「大丈夫」
『え?』
フォルテはまたしても、剣に魔力をこめる。
剣は光を放っていたが、すぐに普通の剣に戻った。
「握ってみて」
『え・・・無理だよ』
そう言いながらも、少年は期待のこもった目で剣を握った。
今度はその手が宙をかくことはなく、しっかりとその柄を握った。
『え・・僕、僕・・・触れた。触れたよ。僕、剣を持てた!!!!』
少年は剣を持ったまま、空中をブンブンと回り出した。
「ふふ、良かったね」
『でもどうやって、それにどうして僕がこういうの欲しいって分かったの?』
「それは・・・・」
少年が剣をほしがっているのを知ったのは、前世だった。前回の人生で一度だけ少年が本館に現われたことがあった。それが剣術大会のときだ。
いつもは騎士団の練習場で開催される剣術大会が、たまたま団長であるお父様の家で行われることになった。私はお父様やお兄様の応援のためにいったのだけれど、そこで大会を眺めている少年に気付いて、怖がって帰ったのよね。
少年の近くを歩いた際に聞こえてきた『いいなぁ』という言葉をフォルテは覚えていた。
「まぁ、なんとなくよ。そういうのが欲しいかなと思って。」
『ふぅん。そうなんだ。じゃぁどうやって持てるようになったの?これ』
「ああそれはね、本で読んだの。世の中の物にはそれぞれ波長があるんだって。それは私達人間にもあるらしくて。だからね、その波長を合わせれば貴方も持てると思ったのよ。」
『へぇぇ。そうなんだ。それなんの魔法なの?聞いたことないけど』
「だってさっき適当に作ったんだもん。貴方の波長は分かっていたし、あとは剣の波長を合わせるだけだから」
さらっと言うフォルテにドン引きした少年の気持ちは伝わらなかった。
『たまにいるんだよなぁ。こういう自分の才能に気付かないやつ。』
「え、なんか言った?」
『なんでもない!』
何かを隠しているかのような少年を訝しげに思いながら、フォルテはノートを開く。そこには、町に行くというメモが書いてあった。
そこに付け足す形で、「ギルドの依頼をクリアする」「剣術を学ぶ」「魔法を覚える」「町で遊ぶ」という項目を書いた。
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