第3話 町へ
翌朝目を覚ますとすぐに、棚に隠しておいた宝箱を取り出す。
そこには、誕生日にお父様から一応送られてくる宝石がたくさん入っていた。
こんなものより、お父様との時間が欲しかったのだけれど今は感謝ね。
それを手近の袋に詰める。
これを売るのはいいけれど、こんな小さな子どもが売りに行ったら不審に思われるはず。何か良い方法はないかしら。
『大人になるクスリの作り方、知ってるよ』
耳元でそんな声が聞こえてきた。
「えっ」
横を向くと、私と同じくらいの歳の少年がいた。私と違うのはその体が宙に浮いているということくらい。
『今日はいつもより驚かないんだね。いつもなら僕を見た瞬間悲鳴を上げて泣き始めるのにさ』
少年はゆっくりと私の方に近づいてくる。
そう、私には幼少期から不思議な力があった。いわゆる霊視だ。この能力のせいで、前回は本館の使用人に気味悪がられたっけ。
不思議なもので、一度死んでしまった経験があるためか、恐怖心は全くなくなっていた。
「怖くないよ。それより、クスリって?」
『へんなの。ほんとに怖くないんだ。まぁいいや、そっちの方がいいしね。』
少年はにヒヒと笑って、クスリの作り方について教えてくれた。
材料は家の周りにあるものだし、すぐに作れそうだ。
「ありがとう」
少年にお礼をいい、すぐに材料を集めてきて作り始める。初めてだったが、すぐにクスリは完成した。
『効果は一日くらいかな。』
「それならちょうどいい。」
薄桃色の液体を眺め、一気に口に入れる。その瞬間、痛みはないが自分の体が伸びていくのが分かった。
「ほんとに大人になれた」
『・・・わぁ。君妖精さんみたい』
「?ありがとう」
これで、宝石を売っても変には思われなさそう。
宝石をもって、町へと向かう道に体を向けた。
『ちょっと待って。そのまま行くと危ないよ。もう一つ僕にいい案があるんだ』
「案って?」
『僕についてきてよ』
少年の後をついて森の中を歩いて行くと、巨大な木が目の前に現われた。
「すごい・・」
『こっちこっち』
少年の案内で木の近くまでいくと、そこには何かを埋めた後があった。
『ここ、掘ってみて』
指示に従い土を掘るとだんだん何かが出てきた。全部出るとそれはお面のようなものだった。
「お面?」
『うんお面。でもただのお面じゃないよ。魔法のお面なんだ。つけた人が外さない限り、絶対にとれないお面。これで君だって誰も分かんない。』
そう言われ、まじまじとお面を見つめる。さっきまで土の中にあったはずのそのお面は、白い輝きを放っていた。
確かになにかしらの魔法がついてそう。
「ありがとう」
『うんっ』
さっそくお面をつけ、今度こそ町へと出発する。
『いってらっしゃい』
「・・・ねぇ、君もこない?」
『え・・・、あぁ、僕ここからでれないんだ。』
「そうなの?」
『うん。なんでかは分かんないんだけど、この公爵家にしかいけなくて。』
「そう・・・・・じゃぁ、何かお土産買ってくるわね。」
そのまま少年に別れを告げ、歩み始める。
初めての町だわ。一体どんなものがあるんだろう。
ほとんど生まれて初めてのワクワク感に幸福を感じながらフォルテは歩いた。
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