第2話 起床

「んん」

次に目が覚めると、見知った木目調の小屋の壁が目に入った。

私はお父様に処刑されたんじゃ。しかもここは私が幼少期に暮らしていた小屋。

フォルテ・ガーデンは公女だった。けれど、その姿を見て彼女が公女であると気付く人は誰もいなかっただろう。

ボロボロのドレスに同じくらいボロボロの小屋。普通はつくはずのメイドは、彼女には誰もついていなかった。

しかしそんな状態でも彼女の美貌を曇らせることはなかった。白い肌に、透き通るかのような白い髪。吸い込まれるような青い瞳は美しく、絵画から登場したお姫様のようであった。

過去に彼女の処刑が非公式で行われたのは、彼女に対する国民の怒りをそのままにさせておく狙いがあったからかもしれない。

そんな美貌を持つ彼女だったが、当の本人はそんなことを気にしていなかった。


とりあえず外に出てみましょう。実はここは天国かもしれないわ。

重い木の扉を押し開け、外に出る。

ここは、やはり私が幼少期に住んでいた小屋だ。

改めて周りの景色や小屋を見たことで確信した。

きっとこれは過去に戻ったのね。昔読んでいた本にそういった内容の本があった。それは小説だったけれど、まさか本当にこんなことが起こるなんて。

「信じられない」

とりあえずもう一度小屋の中に入り、考えを整理する。


私がここに住んでいたのは9歳まで。10歳からは本館の方に移り、淑女になるための勉強がスタートしたのだった。正直、淑女教育なんかより剣術や魔法を学びたかったのだけれど・・・・

ってそうだわ。学べば良いのよ。前回と同じ人生はまっぴらごめんだもの。返ってくることのない家族の愛を求めて、頑張るのはもうこりごり。今回の人生は私の好きなように生きるの。

考えればそれがすごく良いアイデアのような気がして拳に力が入る。


確か前回の人生では、お父様宛に手紙を書いて本館に持っていったのよね。

『お父様達と暮らしたいです』

って。だから10歳から本館に移された。お父様やお兄様とはほとんど会うことがなかったのだけれどね。

だったら今世ではその手紙を書かなければ良い。そうやって平穏に暮らすの。

やりたいことがたくさんあるわ。

「これから、頑張らなくっちゃね」

明日は町にいこう。それで、今まで見れなかったことをまず見る。ついでに武器なんかも買えたら最高ね。

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