第5話.本日二度目のドロップキックってどうなんですか?
「何をやっとるんじゃ!!アラタ!!そこはA連打に決まっておろう!!」
「分かってるって!!おい!アホ!!そっち敵行ってるぞ!!」
「誰がアホじゃ!!もう殲滅してやったのじゃ!!」
「あんた達・・・・・・。いつまで続ける気よ・・・・・・。」
異世界から帰還一日目。
既にかなり濃い時間を過ごしている三人だが、時刻は午後十七時を回り、ララノアとの勉強会を終えてスズカとあらたはゲームに熱中していた。
「くぁーーくそ!!惜しいッ!!」
「アラタがのんびりしておるからじゃぞ!!」
「なんだと!!お前がしっかりクリアリングしてればこんなことにはならなかっただろ!!」
「はいはい!二人ともよく頑張ったわ!!全く・・・あちらに居た頃からなんも変わってないわね・・・。」
双方共に一歩も引く姿勢を見せず額を押し付け合い睨む。
「まぁ、数時間でゲームを覚えたにしてかなりの上達ぶりだって事は褒めてやるよ。」
「ふん。アラタこそ妾程でないにしろよくやっておったわ。」
「お前ッ!!」
「なんじゃなんじゃッ!!」
「・・・・・・二人とも・・・?」
背筋がゾクッと凍るような恐ろしい気配を感じた二人は肩をビクッと震わせ後ろを見る。
「「・・・・・・は、はい。」」
「仲が良いことは分かったからもう喧嘩はお終いよね?」
「も、もちろんだよなぁ!スズカ!!はは・・・」
「そうじゃそうじゃ!!二人ともよくやったのじゃ!!がはは・・・」
「・・・・・・はぁ。まぁ良いわ。」
二人はララノアの機嫌を窺いながら肩を組む。
あちらに居た頃から変わらずの二人の様子に若干の嬉しさを覚えながらもララノアはアラタに口を開く。
「今日一日こっちの世界で生活して、少し疲れたみたいだから湯浴みをしたいのだけど。」
「あ、あぁそうだな。お前たちも慣れない世界で疲れが溜まるだろ。」
「妾は平気じゃ!!」
まぁ・・・お前ほどにアホなら・・・。
「それとララノア。湯浴みっていうかお前が二回連続でやらかしたあのシャワーあるだろ?」
「ええ?どうしてその話が今出るのかしら?」
「あのシャワーって言うのが、この世界での湯浴み・・・?って言うことだな。」
「・・・へぇ!なるほど!楽しそうじゃない!」
「シャンプーとか、トリートメント。ボディソープとかもあるからとりあえず着いてこい。」
二人を連れて浴室へ来ると、あらたはシャンプーを手に取る。
「まず髪をお湯で濡らして、こっちのシャンプーってやつを使う・・・てまだカタカナは覚えてないから見分けつかないよな。この押す部分を触ってみてくれ。」
「ギザギザしてるわね?」
「そう。こっちがシャンプーだ。それで押す部分にギザギザが着いてない方がトリートメントだ。」
あらたはシャンプーを、ララノアから手渡され再度説明する。
「まずはこのシャンプーを使って髪を洗う。目に入ったら痛いし口に入れば苦い。気をつけてな。」
「分かったのじゃ!」
「こいつは多分分かってないから、ララノアお前が一緒に入ってやってくれ。」
「ええ。で次はとりいとめんと?」
「そうだ。あとはさっき買った洗顔をこの編み編みのやつで泡立てて顔に馴染ませて洗い流したり、ボディソープで体を洗ったり・・・。」
「こっちの世界の湯浴みはやることが多いのね。」
「まぁあっちみたいに清めの水が無いからな。まぁその分こっちはのんびりと過ごせるけどな。」
「そうね。あちらの湯浴みと言えば即入って浄化されたのを確認すると即上がってたものね。」
「おう。まぁそういう事だ。ただあんまり長居すると逆上せるから気をつけろよ。」
「わかったのじゃ!」
あらたはそう言うと、あらたは浴槽に湯を貯めだす。
「とりあえずこの湯が張れるまで、待っとこう。」
それからは、数分ほど時間を持て余し何気ない会話をしていると風呂場の通知がなったのでララノア達に着替えなどを持たせ見送る。
「さ・・・何しようか・・・。」
「のう!なんじゃこの機械は!!」
「それはさっきアラタが言ってたでしょ。せんたくきっていう服なんかを洗う機械だって。」
「そんな事言ってたかのう?」
「あんたね・・・・・・。」
「まぁ良いのじゃ!はよう風呂に行くぞ!!」
「ちょっと待ちなさい!!まずは服を脱ぎなさい!!」
ララノアは慌ててスズカを引き止め、服を脱がせる。
「ほう・・・さっきまで自分で服を脱げなかったお姫様が、成長しておるではないか・・・!」
二マッと笑うスズカを恨めしそうに睨むララノア。
「ぐっ・・・何も言い返せないわね・・・。」
「まぁ良い。ほれ。服を脱がせるのじゃ!!」
「あんたねぇ!・・・・・・はぁもう良いわ。私も疲れたし今日は乗ってあげるわ。」
「妾は基本的にハカマという鬼族の正装しか馴染みがないがこの世界の服はしっくり来るのう。」
「それには同意よ。」
上下を脱がすと先程までは隠されていた、溢れんばかりの胸と同性にも羨望の視線を向けられるほどの美しい体が露わになる。
「くっ・・・・・・。負けた気がするわ・・・。」
本気でガッカリしているララノアにスズカが励ますように声をかける。
「そうでも無かろう。ララノアの慎ましやかな乳も形が良いでは無いか。ほれ。」
スズカは、瞬時にララノアの背後に回り、
後ろから手を回しララノアの胸を揉む。
「きゃあッ!!何するのよ!!この変態ッ!!」
「なんじゃなんじゃ?初々しいのう。しかしこれは・・・中々に・・・弾力も張りもある良い乳じゃ!実は前々から触ってみたいと思っていたのじゃ。」
「う、うるさいわね!!あんたもこうしてやるんだから!!」
ララノアは、スズカの手を振りほどき後ろを向くとスズカの胸へと手を伸ばす。
「ひゃ・・・・・・。」
で、でかい・・・。
「どうじゃ妾の乳は!」
数回揉むとララノアは膝から崩れ落ちる。
「す、吸い込まれたわ・・・。何て恐ろしい狂気なのかしら・・・。弾力はさることながら包み込むような柔らかさ・・・私には・・・ない・・・・・・わ・・・・・・。」
「そ、そこまで落ち込まれると何か悪いことをした気分になるのじゃ・・・。」
気を取り直しララノアに手を貸し立ち上がらせると、二人で浴室へと入る。
「それにしても・・・何か凄いわね・・・落ち着かないわ。」
「うむ。あっちでは開放的だったからのう。こちらの世界の湯浴みは結構閉鎖的な空間で行うのじゃな。」
ララノアはシャワーを手に取ると、まず自分の髪を濡らしその後にスズカの髪を濡らす。
「まずはシャンプーね。えーっと・・・ギザギザよね。」
ララノアはシャンプーを押し液体を出すと手に広げ髪に付ける。
「何か少しひんやりするわね。」
「なんじゃこれはッ!不味いのじゃ!!」
「あんたねぇ・・・。」
はぁとため息を吐きながらも綺麗なブロンドのロングヘアーをしっかりと全体的に洗うララノア。
一方のスズカもララノアを真似て自らの髪を洗う。
「何か気持ちいいのじゃ。」
「ええ。自分でしっかりと洗ってる分綺麗になっていくのが分かるわね。」
二人はそれから全てを済ませ、浴室に仲良く二人で入るのだった。
時はほんの少し遡り、一人でリビングにいるあらたはというと。
「あいつら・・・・・・。」
壁越しに二人のとある会話が聞こえてきて若干顔を赤らめるあらただったが、自らの頬を叩き余計な想像はやめてキッチンに立つ。
「女の子の風呂はなげえって言うしな。そろそろ夕食作り始めても問題ないか。」
あらたは、冷蔵庫を開きとあるものを買い忘れたことに気がつく。
「・・・・・・あ。生姜買い忘れた。」
面倒臭いからまた別の日にでも・・・と考えたあらただったが、食事中の二人の幸せそうな顔を思い出す。
「買いに行くか・・・。」
あらたは、あちらの世界の言葉で置き手紙を残し玄関の鍵をしっかりと閉めスーパーへと足を運ぶ。
「しっかし、スズカに聞き忘れてたけど結局なんであいつこっちに来てんだ・・・?」
ララノアは、無理やりこちらの世界に来たから分かる。けどあいつがこちらに来た方法は・・・?
「さっぱり分かんねえな。」
あらたは、夕焼けの空を眺めながら歩道をゆっくりと歩く。
その時・・・・・・。
「見つけたわよぉ!!!」
「・・・・・・・・・・・・。」
この元気な声を俺はどこかで聞いたことがある。
学校・・・?いやあいつはここまで人のいる歩道で大声あげるほど羞恥心を失ってはいない。
「無視しないで!!この悪魔ッ!!」
「メア・・・・・・静かにしなさい・・・。」
「パパは黙ってて!!!」
うーん・・・このやり取りも今朝聞いたばっかりなんだが・・・・・・。
俺にはあのアホララノアみたいな知り合い他にいないしな・・・。
「こーーーーのーーーーーッ!!」
ドタバタと近づいてくる騒音に気が付き、あらたは背後に向くと同時に・・・
「メアキーーーック!!!」
「ぐふぅッ!!!」
とてつもない衝撃が腹部に走る。
「いってぇ・・・・・・。」
「ふん!!観念なさい!!この魔王の娘からは逃れられないわよ!!」
「誰だよッて・・・・・・アホ娘!?」
黒髪ロングの綺麗な髪をなびかせ、ぺったんこの胸を張りふふんと偉そうに、仁王立ちしているのはメア・グレモリー。
魔王の血筋の象徴の双角が特徴的である。
「誰がアホ娘よッ!!」
「あぁ・・・す、すまないアラタ君・・・うちの娘が・・・・・・。」
視界に入ってきたのは、数週間前に死闘を繰り広げた宿敵。
「ま、魔王!?!?!?」
暫くすると、痛みがようやく引いて来たので立ち上がり二人を警戒する。
「な、何でお前たちが・・・?」
「知らないわよ!!私たちだって今朝いきなりこの世界に来ちゃったんだから!!」
「幸い、とある人が助けてくれて・・・。私たちも住む家が確保出来てるんだけど・・・・・・ね・・・。」
それはそうと・・・さっきから話が入ってこない。
今目の前に居るのは、本当に魔王なのだろうか・・・。
数週間前に見た魔王は自信に満ち溢れ、威厳が顕になっていたが、今目の前に居るのはただのおっさんである。
「あんた本当にあの魔王か・・・?」
「失礼ね!!この下等生物如きが!!私のパパは最強の魔王に決まってるでしょ!!」
「こら・・・やめなさい・・・。」
このファザコン娘が居たら話になんねえな・・・。
「この子が言った通り、私たちもよく理解できて居ないんだ・・・。本当に瞬きの間だった。私たちの体は光を帯びて気がついたらこの世界に・・・。魔法も使えずメイドや執事もいないから私たちは困ってね・・・。そこでおじいさんが助けてくれたんだよ・・・。」
「じい・・・さん?」
「ファンキーだったね・・・。」
いやまさか・・・。
「『俺の所有するマンションに来な。』って助けを頂けてね・・・。」
いやいや・・・まさかぁ・・・!
「『
「あんのクソジジイッ!!家には顔を出さねえし返信もねえくせにッ!!今度帰ってきたらぶっ殺してやるよ!!」
ニマニマと笑う憎たらしいジジイの顔を思い浮かべながら、拳を強く握るあらた。
「あのおじいさんと知り合いかい?」
「ん・・・あぁ。『また』ってのは引っかかるが、多分うちのじいちゃんだ。」
「アラタ君の実のおじい様だったのか・・・。」
あらたは、祖父のイラつく顔を脳裏から吹き飛ばし、気になっていた事を問う。
「魔王・・・。あんた何か変わったよな?」
「・・・・・・まぁ、君に負けて色々あったからね・・・。」
二人の間に気まずい空気が流れる。がそれを断ち切ったのは魔王本人であった。
「悪いことではなかったよ。魔王の力を失ったあと私達はとある人間の国へと飛んだ。君がわざと逃がしてくれたおかげでね。」
「・・・・・・ちげえよ。殺そうとした隙にあんた達が勝手に逃げたんだ。」
「ははっ。そういう事にしておこう。」
魔王は優しげに笑って続ける。
「僕たちを魔族と知って尚、人々は傷ついた私たちを治療し看病してくれた。その時思ったんだよ。あぁ。間違っていたのは私の方だったんだって・・・ね。」
魔王が魔王となった理由は、あちらの世界の王国立図書館で見た事がある。
最初は人々に協力的だったという。
魔族と人々は手を取り合い生きていたのだと。
しかし、人々は角や翼の生えた魔族を忌々しく思い、才能に恵まれた魔族を妬ましく思い。
裏切った。
そして、絶望し人々を見限った魔王は残虐非道な魔王となった。
「人間をまた・・・信じてみても悪くないかもな・・・なんて思えたんだ。こうして今があるのも人間である君が救ってくれたおかげなのだから。」
「だから俺は・・・・・・って言ってもあんたは聞く耳持たなそうだな・・・。」
「ははっ。分かってるじゃないか。」
人々の勝手な理由で、魔王と成ったはずなのに・・・。
また人を信じてみようなんて・・・俺ならば到底及ばない思考だ。
バカにしているわけじゃない。
ただ、この人も底なしのアホお人好しなのかもしれないと。そう思っただけだ。
「ふんッ!!私はまだ世界征服を諦めたわけじゃないんだからねッ!!こうなったらこの世界諸共征服してやるわよ!!」
「・・・・・・・・・。」
「すまないね・・・アラタ君・・・。娘はずっとこの調子で・・・。」
「あぁ、別に大丈夫だ。なんかもう慣れてしまったしな。」
人の泊まっている宿屋に押しかけてきたり、どうやってか城の警備を掻い潜り俺の自室へ押しかけてきたり・・・とこいつのアホさ加減と執着とファザコンぶりは、結構見てきたつもりだ。
敵でありながら、何かもう危機感とかも無かったしな・・・。
「そしていずれはあんたを倒して魔王になってや『ぐぅ〜』」
「「・・・・・・。」」
どこからか腹の音が聞こえた・・・これも今朝ぶりだな・・・。
前々から思ってたけど、こいつ本当にララノアと気が合いそうなんだよな・・・。
以前までは敵対してたけど、今は対峙してないんだし俺が学校行ってる時間とかにララノア達の話し相手としては最適かもしれんな。
こいつは未だに敵対してるつもりらしいけど・・・。
「ふ、ふん!今日のところは許してあげようかしら!!」
「すまないね・・・今日は朝から何も食べていないから・・・。」
そうか・・・魔王たちがここに来たのももしかしたら俺たちに関係があるのかもしれないしな・・・。
可哀想だし仕方ねえ・・・。
「んじゃあ、とりあえずスーパー寄ってから家で飯作るから、あんた達も一緒に食ったら?」
こうして、まさかの宿敵との遭遇を果たしたあらただったが、スーパーでどっかのアホララノアと同じリアクションをした、アホメアが居た事は言うまでもないだろう・・・。
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