第13話 寝ても覚めても

 平日の朝、胡桃が部屋に入ってくる。


「お兄ちゃん、起きて!」

「っていうかもう起きてるよね?」


 楽しそうに笑いながら近づいてくる。


「おはよう」


 首元に擦り寄ってくる。


「ねえ、お兄ちゃん」

「今日、手繋いで学校行こうか」

「だって私たち、恋人同士だもんね?」


 嬉しさをこらえきれない声。


「あ、起きた」

「寝癖ついてるよ、可愛い」

「今日ね、新しいマスカラ使ってみたの。どう? いつもより可愛い?」

「……いつもどおり可愛いけど、違いが分かんない?」

「はあ」


 幸せそうにため息を吐く。


「お兄ちゃんって、そういうところあるよね」

「まあ私は、お兄ちゃんのそういうところも大好きなんだけど」


「急に態度変わりすぎ……って、寝たふりしてたんだから、知ってたでしょ」

「もうバレちゃったし、今さら恥ずかしくなんてないもん」

「あ、もしかしてお兄ちゃん、どきどきしてる?」


 からかうような声。


「これから、もっとどきどきさせてあげる」

「彼女として、四六時中一緒にいられるんだもんね」


「……お兄ちゃん、私ね、すっごく幸せ」

「私のことこんなに幸せにできるの、お兄ちゃんだけだよ」

「私も、お兄ちゃんのこと幸せにできるようにいっぱい頑張るね!」


 ちゅ、と額にキスされる。


「下、いこ。おばさん、もうご飯作ってくれたって」

「ちょっと早く出て、その分ゆっくり歩こうよ。ね?」


 手を引っ張られ、ベッドから下りる。


「そうだ」

「彼女だからはっきり言っとくけど、他の子にデレデレしたら絶対だめだからね?」

「お兄ちゃんは、私だけのものなんだから」

「分かった?」

「……分かったら今、キスして?」


 甘々な声に続き、軽いリップ音が聞こえる。


(了)

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俺のことを嫌いなはずの幼馴染、俺が眠ってる時だけ甘えてくるんだが 八星 こはく @kohaku__08

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