第9話(睡眠時)待ってて
自室。胡桃はベッドの中、自分はベッド横に敷いた布団に入っている。
「お兄ちゃん……もう、寝た?」
「急に泊まるとか言って、困らせちゃったかな」
「ごめんね」
胡桃が少し起き上がる。風呂の衣擦れの音。
「でも、今日を逃したらもう、こんなチャンスない気がして」
「ベッドも譲ってもらってごめんね」
「本当は、お兄ちゃんの匂いのするベッドで寝たかっただけなの……」
胡桃がベッドから下り、近づいてくる。
「お兄ちゃん、おにーちゃん、おにいちゃん……」
「本当に大好き」
「私がこんなに大好きなこと、早く気づいてよ」
「……隣で寝ても、いい?」
胡桃が隣にもぐりこんでくる。
「ふふ」
「昔はこうやって、一緒に寝たりしたよね」
「……なんで急に、素直になれなくなっちゃったんだろ」
「本当にごめんね」
ぎゅ、と軽く抱き締められる。
「なんでお兄ちゃんは、今でも私に優しくしてくれるの?」
「幼馴染だから?」
「私が意地張ってるだけって分かってるから?」
「……それとも、私が好きだから?」
「私、ちゃんと分かってるの」
「このままじゃだめだってこと」
「お兄ちゃんは来年受験生だし、再来年は大学生だし」
「そしたら、実家を出て、すごく遠くに行っちゃうかもしれないよね」
胡桃が顔を近づけてくる。
「ねえ、お願い、お兄ちゃん」
「他の子なんて、見ないで」
「私より可愛い子がいるなんて、思わないで」
「私のこと、世界で一番可愛いって思っててほしいの」
額に軽くキスされる。
「……今はまだ、ここにしかできないけど」
胡桃が離れていく。
「ちゃんと、お兄ちゃんに伝えなきゃって、分かってる」
「……今の関係を崩しちゃうのが怖いけど」
「でも、知らない誰かが、お兄ちゃんの隣で笑ってるのを見るのは、絶対嫌だから」
「だから……」
大きく深呼吸をする胡桃。
「大好きだって伝えるから、あとちょっとだけ、待ってて」
「……おやすみ、お兄ちゃん」
「お兄ちゃんが、私の夢を見てくれますように」
少しして、胡桃の寝息が聞こえてくる。
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