第8話 ずっと可愛い

「美味しそう?」

「当たり前でしょ、私が作ったんだから!」


 嬉しそうな声で得意げに言う胡桃。


「オムライスくらい、さくっと作れるし」

「……なに?」

「と、得意でも、ちょっとくらい失敗することもあるでしょ!」

「うるさい! アンタには綺麗に卵のせられた方あげてるのに!」


「はあ? 別にそんなんじゃないし」

「……人に綺麗にできた方あげるの、普通でしょ」

「いいから、さっさと食べてよ!」

「……いただきます」


 少し拗ねたように言って、オムライスを食べ始める胡桃。


「……美味しい?」

「まあ、私が作ったんだし、当たり前だけど」

「感謝しなさいよね」


 嬉しそうな声。

 そのまま、しばらく食事。





「え? 皿洗い?」

「やってくれるの? ……あ、いや、そもそも私がご飯は作ったんだから、皿洗いくらいやるのは当たり前でしょ」

「……でもまあ、一応言っとく」

「……ありがとう」


「家まで送るって……別に、隣なんだから送るも何もないでしょ」

「危ない? ここから、1メートルも離れてないのに?」

「……ふーん、可愛いから危ないって、私のこと可愛いって思ってるんだ?」


 からかうようだが、嬉しさを隠しきれていない声。


「まあ私って結構可愛いし?」

「アンタもやっと、私の可愛さに気づいたってわけ?」

「……は? 昔から可愛い? アンタ、いきなり何言ってんの……!」

「ちょっとトイレ行ってくる!」


 どすどすと足音を立ててリビングから出ていく。





「……あのさ」

「今、お母さんからLINEきてて……」

「……今日、家に帰らないから、アンタの家に泊まらせてもらったら? って言われたんだけど」


「べ、別に私が泊まりたいわけじゃないからね!?」

「ていうか、一人でも別に平気だし」

「ま、まあ? お母さんがおばさんにもう許可とっちゃったから、一応アンタにも言っとかなきゃっていうか……」


「……は? と、泊まってほしいって、なんで?」

「久しぶりのお泊まりも楽しそうだから?」

「なにそれ! もう子供じゃないんだけど」


「……まあ、別に、嫌とは言ってないし」

「アンタがそこまで言うなら、仕方ないわね、泊まってあげる」

「そ、その代わりベッドは譲ってよね」

「……部屋から追い出したりはしないから」

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