第7話(睡眠時)お兄ちゃんから
じゅー、じゅー、とフライパンで何かを焼くような音。
「やった、こっちは上手くいった……!」
キッチンから、嬉しそうな胡桃の声が聞こえてくる。
「これなら、お兄ちゃんも喜んでくれるはず」
「よし、お味噌汁も温めなおして……っと」
胡桃がリビングへやってくる。
「お兄ちゃん、また寝てる」
「しかも、髪の毛まだちょっと濡れてるし」
「……急にきちゃって、迷惑だったかな」
胡桃がソファーの隣に座る。
「本当はね、お風呂が壊れたなんて嘘」
「お母さんたちだって、もう家にいるし」
「料理だってわざわざ練習してきたし、冷蔵庫に必要な物を入れてもらってたの」
「……おばさん、本当にお兄ちゃんに内緒にしててくれてるんだ」
「……ねえ、お兄ちゃん」
「私のことどう思ってる?」
「……なんて、聞けたらいいのに」
立ち上がり、胡桃が離れていく。
キッチンから食器を運ぶ音。
「これでよし、と」
「……なんか、新婚みたいだよね」
再び胡桃が近づいてくる。
「あなた」
弾んだ声。
「ご飯の準備ができたわよ、あなた」
「……うわ、一人で何やってんだろ」
「全部、お兄ちゃんのせいだからね」
軽く頬をつねられる。
「鈍感で、全然気持ちに気づいてくれなくて、そのくせに優しくて……」
「私のことこんなに好きにさせた、お兄ちゃんのせいなんだから」
「……ねえ」
「お兄ちゃん。キスしたら、怒る……?」
「……嘘。そんなこと、しないから」
「初めては、お兄ちゃんからしてほしいし」
「……早く気づいてよ。お兄ちゃんの馬鹿」
すう、と胡桃が大きく深呼吸する。
「ご飯できたんだけど! いつまで寝てるの!?」
「人にご飯作らせておいて、ずっと寝てるとかあり得ないんだけど!」
急にいつもの声に戻り、離れていく胡桃。
「早くしてよ。せっかく作ったのに、冷めちゃうでしょ!」
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