第4話 寄り道

 チャイムの音。


「じゃあ、そろそろ帰る? もうすぐ図書室も閉まるし」

「よく頑張った? ……ありがと。アンタは、ほとんど寝てたけど」

「寝てばっかなのに、なんでそんなに成績いいの」


 ムッとした声で言いながら帰り支度。

 二人で図書室を出る。


「この時間なら、電車も空いてると思う」

「まあでも、部活生でちょっと混んでるかも」

「……え? コンビニ? 確かに、ちょっとずらせばもっと電車も空くだろうけど……」

「……アイス奢る? そんなにコンビニ行きたいわけ?」


 はあ、と嬉しそうに溜め息を吐く胡桃。


「仕方ないから、付き合ってあげる!」

「早く!」




 コンビニへ移動。


「アンタ、何食べるの?」

「分かった。どうせこれでしょ。昔からずっとこれだもんね」

「よく見てるね? はあ? 別に、そんなことないし」

「……アンタも分かる? 私が食べたいアイス」


「……合ってる」

「ふーん、分かるんだ」


 嬉しさを隠しきれていない声。


「じゃあ、買ってきてよね。イートインスペースで待ってるから」


 レジを済ませ、移動。


「ありがと」

「……アンタ、去年も寄り道とかしてたわけ?」

「たまに? 誰と?」


「はあ? 別に、嫉妬とかじゃないから! というか、どうせ男友達でしょ?」

「うるさい、もうこの話終わり!」


 アイスを食べる音。しゃり、しゃりと一定のリズムが耳に心地よい。


「アンタのも美味しそう」

「えっ!? いや、欲しいって意味じゃないし」

「あーん、とかされても食べないから! 馬鹿じゃないの!? 私のこと何歳だと思ってるわけ!?」


「……私、これでも結構モテるんだから」

「中学の時なんか、10人くらいに告白されたし」

「……分かってるの?」


「……彼氏ができたら寂しい?」

「ふん、へえ、アンタ、私に彼氏できたら寂しいんだ」

「まあそうよね。アンタ、彼女とかできなさそうだし。ふーん、そっかぁ……」


 かなり嬉しそうな声。


「ねえ」

「また、寄り道付き合ってあげる」

「感謝しなさいよね」


 立ち上がり、コンビニを出る。


「ねえ」

「……あの、さ」

「今日……月が……なんでもない!」

「今のなし! さっさと行くよ!」

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