第5話 どこの出版社からデビューしたい?
「じゃじゃ~ん! 愛情たっぷり特製カレーライスだよ~!」
「おおっ!」
春香が作ってくれたのはまるでレストランで出されるようなカレーライスだ。
匂いが食欲をそそる。
恐らく春香は普段から自炊をしているのだろう。このカレーライスを作っているとき、本当に無駄な動きがないように感じた。
「「いただきます」」
俺は春香の作ってくれたカレーライスを口に運ぶ。
すると、口の中で色々なスパイスの香りが一気に広がっていく。
美味しすぎて自然と笑顔になってしまう。
「どう? 美味しい?」
「ヤバい、美味しすぎるよ。店出せるレベルだよ」
「褒め過ぎでしょ!」
「いや、マジで」
本当に店を出せるレベルの美味しさだと感じた。
プロの料理人が作ったと言われても信じてしまうだろう。
「奏太の口に合ったのなら良かったよ」
「うん、マジで美味しい」
「それじゃ、これからも作ってあげるね」
「マジ!?」
「一緒に暮らすんだから普通じゃない? でも、手伝いはお願いするかもだけど」
「もちろん手伝う!」
「あははっ、そんな反応されると嬉しいけどちょっと恥ずかしくなっちゃうなぁ」
春香が作る料理をまた食べれるのか。
俺はなんて幸せ者なんだ。
春香は手伝いはお願いするかも、と言っていたが、そんなのむしろさせてくれと言いたいくらいだ。春香の作る料理が食べれるのなら何でも手伝うよ。
そう思えるくらいに本当に美味しい。
♢
カレーライスを食べ終えると、俺たちは再び仕事部屋へと戻った。
机の上にある一冊のノートを手に取った。
「これは?」
「あー、それはね、思いついた話だったり、キャラの特徴や設定だったりをメモしてあるやつだよ」
「見てもいい?」
「うん、いいよ」
俺はノートの中に目を通す。
そこには、春香が言った通り色々なキャラの特徴や設定だったり、思いついた話が多く書かれていた。
サイボーグの主人公の話だったり、王道の冒険ファンタジーの話など様々だ。
ここで一つ気になったことがあるので、春香に聞いてみることにする。
「ねえ、春香」
「うん?」
「どこの出版社からデビューしたいとかある?」
そう、俺が気になったのは春香がどの出版社からデビューしたいのかということだ。出版社によって漫画の作風だったり、どういうジャンルが人気なのかがかなり違ってくる。
だから、デビューしたい出版社が先に決まっていればどういう作品を作っていくか、という方向性が決めやすい。
「もちろん週刊少年ラッシュだよ!」
「大人気出版社だな。俺もよく読んでるよ」
「やっぱりデビューするなら人気な出版社からデビューしたいじゃん! その方がアニメ化への道に近づくじゃん! もちろん、その分、連載するまでの道のりが大変だとは思うけどね。それでも、私は週刊少年ラッシュからデビューしたい!」
週刊少年ラッシュか。
日本で一番人気のある漫画の出版社と言ってもいいレベルの大人気出版社だ。
日本人なら知らない人はいないだろう。
やはり目指すところはそこからのデビューのようだ。
春香の声色から本当に週刊少年ラッシュが好きだということが伝わってくる。
きっと、小さいころからずっと週刊少年ラッシュの漫画を読んできたのだろう。俺だってそうだ。俺も小さいころから読む漫画は大体週刊少年ラッシュの漫画ばかりだ。
もちろん、他誌から出ている漫画も読むことはあるが、圧倒的に週刊少年ラッシュの漫画を読むことが多い。
「週刊少年ラッシュか、いいね。俺もラッシュが一番好きな出版社だよ」
「お、奏太もラッシュの漫画を多く読んできた感じ?」
「まあ、そうだね」
「やっぱりそうだよね! それじゃ、頑張ってラッシュで連載しようねっ!」
「ああ、絶対な」
週刊少年ラッシュで連載を目指すとなると、やはり王道系の作品を描くのがベストなのだろうか。
それとも逆にラッシュにはないような作品を描いて編集者の目を引くような作品を描いた方が良いのだろうか。
編集者たちが連載させる判断基準は編集者たちにしか分からないのでこればかりは俺たちには判断できないんだよなぁ。
そんなことを考えていると、春香が俺にあるものを渡してくる。
「奏太にこれ渡しとくね」
「これは……」
「漫画を描くなら必要でしょ?」
春香が俺に渡してきたのは漫画を描くのに必須のペンだ。三種類渡してくれた。
Gペン、丸ペン、カブラペンの三種類だ。
ペンによって結構描き心地が違う。
例えば、Gペンの場合だと線の強弱をつけた太めのラインが描きやすかったりする。使い慣れれば、荒々しいタッチから繊細なタッチまで一本でこなせるペンだ。
丸ペンは、 極細の線が引けるため、髪の毛や斜線、細密な背景や効果線を描くのに合っている。筆圧による強弱は出しやすいけど、太い線を描くのには適さない。
そしてカブラペンは、ペンの先が丸く曲げてあるのでペンが紙にひっかかりにくくスムーズに線が引けるため、初心者には使いやすいと言われている。特徴としては均一線を引きやすい。
このようにそれぞれ違った特徴があるのだ。
「ペンまで用意してくれたのか?」
「まあね、それを使って最高の漫画作ってね!」
「ああ、任せてくれ!」
この三種類のペンにもこれから慣れていかないとだな。
春香は早く一緒に漫画を描いて連載したいと思っているだろうし、毎日練習して出来るだけ早く二人で漫画を描き始められるようにしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます