教育係

 13歳の誕生日のお祝いを家族や使用人に祝ってもらった僕は、翌日屋敷にある父の執務室に呼ばれた。実はというと何度か侵入を試みたが、母やキャシーに見つかり未遂に終わったのだ。


 あ、別にイタズラが目的とかではなくて、単純に好奇心があっただけなんだ、このまま順調に成長すれば僕がこの部屋で仕事をする事になるからね。


 そんな事を考えながら僕は執務室の部屋をノックし、中にいるであろう父に呼びかける。


「父上、ニックにございます。父上に呼ばれ参上しました」

「入るがよい」


 部屋に入った僕は左手を胸元にあてるようにして父に対し頭を下げる。


「父上、ニックここに参上しました」

「うむ、お前も13歳となり、これからは本格的に政務や軍務を習ってもらわなくてはならぬ、そこでお前の目付並びに教育係をつける事とした」

「ちょっとよろしいでしょうか父上?」

「どうした?」


 いきなり教育係をつけると言われてもピンとこなかったからとりあえず僕はまず父に質問をした。


「ぼ、いえ、私には剣術や魔法、そして戦術や騎士道を教えてくれた先生方がいたはずです。あの人達がそのまま教えてくれるわけではないのですか?」

「あの者達がお前に教えたのは基礎的な事にすぎん、これからお前は領内に目を向けてもらわねばならんからな、入るがよい」


 そう言って執務室の僕が入ってきた扉とは別に入ってきたのは女性であり、父が彼女の名を僕に告げた。


「今日からお前の教育係のテール・オリビンだ」

「お初お目にかかりますニック様、テール・オリビンと申します」

「お前も知っているであろうがオリビン家は我が家に代々仕えている騎士の家系だ、彼女の初陣は12歳で既に5年もの間我らの領内の治安維持に貢献してくれている」

「もったいないお言葉にございます」

「その頃からも領内の政務に携わっておりオリビン卿の補佐をよくしている」

「娘として父に助力しているに過ぎません」

「ニック、本格的な政務や軍務とは別に今後はテールがお前の剣術や魔法の指導もするから肝に銘じておけ」

「は!テール師もご指導のほどよろしくお願いします」

「ニック様、私の事はテールとお呼びください、教育係ではありますがいずれは私はニック様の臣下になるのですから」


 どうも僕は臣下だけど教育係というこの図式に13年生きても慣れないでいた、しかも父の口ぶりからこの人の身分も今までの先生達より高いみたいだ。


「それじゃあテールよろしく頼むよ」

「お任せください」


 なにはともあれ、とりあえず僕に教育係がつくことになったのだ。

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