第21話 F8:お祭り? Festa !
初心者指導所の教室に戻り、教官から最後の話がある。
「良くやった」
御厨教官が話し始める。
「予想以上に実力を付けていると思う。このまま次の町へ行っても十分通用するだろう。焦らず、驕らず、力を伸ばして欲しい」
あまり笑顔を見せない人だが、今日は機嫌が良いようだ。
「さて、これで全ての指導が修了した。君たちに “冒険者„ の称号が付与される。略綬も色が変化する」
“冒険者を目指せし者„ の略綬の地色が、朱鷺から真紅に変わっている。
「これで、君たちも一端の冒険者だ。しかも平均からかなり上の実力は十分あると思う。油断をせずに一歩一歩段階を踏んで上を目指して欲しい」
ゲッツが軽く手を挙げる。
「教官、ひとつ聞きたい。ここの冒険者は何を目標にして生活してるんだ? “魔王を倒して世界を救う„ とか “女神を復活させて新世界へと導く„ そういうありがちな目標が全く見えてこない」
「早くもそれに気付いているのか。ここには、そういう目指すべき目標とか達成すべき事柄などはない。“人間が大勢集まったとき、人は何をするか?„ というのが大きな研究テーマだからだ」
「なるほど、自分で見つけろと。俺には向いているかもしれない」
「私からも質問がある」
サヤから声がかかる。
「
「ここで出来るのは、冒険者ギルドを通して、友人に
「全体のゲーム状況などをユーザー達に知らせる手段はないのか?」
「
ボクには特に質問がなかったので、教官の話は終わる。
「これで指導は全て修了だ。後は君たち自身の脚で歩くだけだ。善きゲーム・ライフを!」
指導所でやることは全て終わった。
ささやかな祝宴ということで、三人で酒場に集まる。
「お疲れさま~」
エールの
何だかホッとした気持ちになる。
二人も同じ気持ちのようだ。
サヤから話が始まる。
「さて、これで指導所も最後の夜だ。これからどう行動するか決めないか?」
「ボクから提案だけど、次の町まで一緒に行かない?」
「俺はいいぜ。ここもそれなりに整っているとは思うが、腕を磨くなら次の町が良いだろう。教官からも話があったしな」
「わたしもそう思う。ここに留まって腕を上げるというのも一つの選択だとは思うが、思ったより人が少ない。次の町に期待したい」
「そうだよね。それで、移動するならソロより三人の方が心強いしね」
「ずっと一緒に行動というのも芸がない。俺はソロ指向だしな。とりあえず次の町へ行って、それから一旦解散しないか? 何も別れてしまう訳ではない。気が向いたらまたパーティを組めばいいのだ」
「向こうには様々な冒険者が居るだろう。その中で揉まれながら自分のやり方を身に着けて行く。定番で王道だな」
「ボクからだけど、移動するときは、
「ああ、かなりのモンスター・ドロップもあったし、金に多少の余裕はあるしな。準備は怠りなくだ」
「確かに、
「ボクが今一番欲しいスキルだね」
「俺は、次の町までの道程は三日と聞いた。不慮の事態に備えて六日分の食料は必要だろう。知らない場所に行くのだから余裕が必要だ。途中でモンスター・ドロップや収集による補充も考えよう」
「みんな慎重だね」
「このゲームは一発退場だからな。二人とも俺よりHPが低いだろうし、安全第一で行こう」
「ああ、こんな所で退場となったら笑い者だしな」
ボクたちは、次のステップの話で盛り上がる。
翌日、
これで初心者指導所とお別れだ。
部屋のドアを開け、振り返る。
ほんの短い期間だったけど住み慣れた我が家
前の住人はどうなったのだろうか? 次は誰が使うんだろうか?
想いを振り切り、誰もいない部屋に向かって
「ありがとう……いってきます」
初心者指導所の前に二人が待っている。
「ことね、こっちだ!」
「ごめん、遅れた」
「気にすることはないぞ! 俺も来たばかりだ」
「まずは、食事しながら今後の行動を確認しよう!」
冒険者ギルドの上側にある洞、いわば二階という感じの所にある酒場に向かう。
さすがに朝からアルコールはないが美味しい朝食が出る。
朝食後、お茶を飲みながら必要なことを確認して行く。
「指導所で貰った “初心者用イル・モンド概説„ は役立ちそうだな」
「ああ、俺もそう思う。付近の町や途中の
「生命の腕輪のアドオンだけど、サバイバルには欠かせない情報ってわけだね」
「しかし、これが全てだと思ってしまうのは危ない」
「そうだな。このゲームは何が出るか油断ができん」
「さて、これが次の町までの地図なのだが……」
サヤが少し首を振りながら地図を開く。
「何か面倒なことでもあるの?」
「聞くところによると、道程が常に変化するらしい」
「それは俺も聞いた。行く度に道順が変化するとな。なかなか楽しそうだ」
「変化すると言っても、三日の行程が三十日とかならないよね」
「ああ、大体の距離と位置関係は変わらないらしい。西へ向かって三日の行程なので
「しかしだ。気になることがある」
「ああ、概説にあるキラーモンスターだ」
「キラーモンスターって何?」
「周囲のモンスターより極端にレベルが高く、初見のプレイヤーが退場に追い込まれることが多いモンスターだな」
「次の町に行くときの関門というわけだ」
「注意は必要ということ?」
「必ず出会うとは限らないがな」
「まぁ、先を心配しても意味がない。初日は、最初の
「同意だ!」
「とりあえず、冒険者ギルドに行って情報収集だな」
しかし、ゲームは予定通りにはいかない。
冒険者ギルドのお姉さんから意外な話がある。
「
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