第20話 M10:第三祭 La Festa terza
「今日は、良く集まってくれた」
ラルフ教官が力説している。ギルドと指導所って直接関係あるのか?
「
冒険者たちが騒ぎ始める。
「預言は、何処から出てるのか?」
「どうやって連絡が取れたのか?」
遠慮のない質問が飛ぶ。
「預言は神殿の巫女たちが行う。影響の大きい預言は書簡として送付されて来る。しかも今回はいくつかの拠点でも発生するとのことだ」
「それでどうやるんだ?」
別の冒険者の声にラルフ教官が応える。
「目的は、冒険者総出で村を守ることだ。発生は夜とのことなので、第一夜刻から防衛の配置に着くことにする。たぶんだが一晩中続くことが予想される。昼には準備をして、第一夜刻の前に集合して欲しい」
「俺たちにメリットはあるのか?」
「ああ、報酬は準備した。まず、参加者には一律三万リラが配布される。装備の修理代はギルド持ちだ。
「ワイは、やるで~ 良い機会じゃないか!」
変わった冒険者も居るらしい。
「参加できる者たちは、冒険者ギルドで申告してくれ。割当のアイテムはその際に配布される。強制参加ではないので申告は自由だが、巻き込まれる場合があるので、その場合は自分たちで対処してくれ」
集会が終わり、わたしたち三人も参加することにする。
冒険者のほとんどは申告しているように見える。やっぱり、みんなやるよね。
「
何となく雰囲気は分かるけど、実際はどうだろうかとディアに聞く。
「家畜の集団暴走や人間がパニックになって集団で事故を起こすこと。こちらでは、モンスターが集団になって集落を襲うことだね」
「普段その辺に居るモンスターがまとまって村に向かって来る?」
「そうじゃのぅ、他ゲームなどでは、イベントとして運営が発生させるらしいが、ここでもそうなのではないか?」
「運営の企み?」
「いやいや、運営も考えているだろう。この世界全体にスタンピードが発生して冒険者が全滅、後はモンスターだけの静かな世界、などとは思ってはないだろうからな」
「何のためのゲームか分からなくなるよね」
「申告した冒険者はこっちに来てくれ、役目を割り当てる」
ギルド職員らしい人が冒険者と話をして分担を決めるらしい。
三人とも別々の役割となる。
はるっちは、土魔法が使えるということで、村の周囲の防御を担当する。
ディアは、冒険者たちの装備修理を担当
わたしは、アイテム配布のお手伝い、私が一番役に立たないようだ……ちょっと反省
戦闘時には、はるっちは北側出入口の右側、魔法攻撃部隊に組み込まれる。
ディアは北口内部付近に待機、戦闘時の緊急修理に対応するらしい。鍛冶の職能を持っている人が少ないので忙しいとのことだ。
わたしは、予備隊。苦戦している場所に投入されるという。役に立つのか不安になって来る。
初心者指導所の北側にテントが建てられ、臨時司令部とされる。ラルフ教官が全体指揮を執るらしい。
あの人、副ギルド長だったのか……知らんかった。
それから、分けられた部隊毎に訓練が行われる。
初心者が多いけど、それなりに連携は取れて来る。
第六昼刻に交代で夕食を取り、第一夜刻前には各自配置に着く。
祭日の太陽が西に沈み、満天に星々が煌めく。月は見えない。
この世界は日が沈むと急速に暗くなる。
そろそろ第二夜刻が始まろうかという時だ。
「来たぞ!」
前線から通る声が聞こえ、みんな緊張が走る。
待機する場所まで、戦う音が響いてくる。
獣の吠声、群で襲う足音、叫ぶ前線指揮官たちの声
弾ける
魔法発動の呪文、爆発する攻撃魔法、砕ける
「北出口左側に向かってくれ、怪我人の搬送を!」
お呼びがかかる。
指定場所に走り、叫ぶ。
「怪我人はどこですか?」
「ああ、彼を頼む。重傷だ!後方で治療を」
「分かりました」
直ちに、倒れている戦士らしき人に
「大丈夫ですか?」
肩を貸して歩かせる。
「ああ、少しドジったな」
「大丈夫ですよ。死ななければ必ず全快します」
「そうだな。ふふっ……」
「え、何か?」
「美人に抱えられるのも悪くない」
怪我人を治療所まで運ぶと、
「すまんが、彼の位置に入ってくれ!」
指示に従い、前線へ戻る。
途中、侵入してきた四つ足の獣を一匹
前線位置に着くと適当に
支給品がたっぷりあるので贅沢な使い方だ。
「おう、助かる!」
現場指揮官らしき人の声
「近づく敵だけを狙って倒してくれ、遠くの奴は魔法と弓で倒す。彼らに敵を近づけないようにするんだ」
「委細了解!」
あ、しまったいつもの口調が出てしまう。
戦いは続く。
一度はゼロ距離で魔法を直撃させ葬る。
「よし! その調子だ」
「ワイの魔法を喰らえ~!」
騒乱の中、幾度となく、戦いそして勝った。
「モンスターが引き上げて行くぞ!」
時間の感覚がなくなったようだけど、誰かの声で気が付く。
敵が……攻めてこない。
やっと終わった。それだけが意識の中を巡る。
翌日、
月給というか、毎月支給されるという冒険者手当の六万リラと報酬の三万リラ防衛が生命の腕輪に振り込まれていた。その他支給された多数のアイテムでかなり余裕ができた。
「あー、終わった終わった」
冒険者ギルドの前から宿屋に向かう道、昨日の事が嘘みたいに綺麗な青空だ。
「自分は、ここでやり切ったという感じだな」
「そうだね。みんなで戦ったという一体感があった」
「
「そろそろいい頃かな? 明日三人で次の町へ移動しよう」
「「賛成!」」
わたしとはるっちの声が重なる。
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