第18話 M8:鍛冶屋さん La fabbra ferraia
「卒業に乾杯!」
「「「乾杯!」」」
みんなの声が重なる。
ここは初めての村の酒場、
初心者指導所に宿泊できるのは、今晩まで
名残を惜しんでも問題ない。
「色々あったが何とか卒業だ」
「そうね。色々あったわ~、でもこれからよ~」
「そうこれからだ。私は次の町に向かうことにした。希望の町という名らしい。それでだが、みんな一緒に移動しないか?」
「あたしは、ミクと一緒にいくわ~」
うぅむ……
「ことね、どうした?」
「なんだかね。自分の力が足りないと感じるんだ」
「それなら、早く先に進んで、強くなるのが良いのではないか?」
「いや、今の状態ならみんなの邪魔というか、脚を引っ張るような気がする。もう少しここで力を付けて自信を持って次に進みたいと思う」
「
「考え方はそれぞれよ。自分に合ったやり方がいちばんでしょ。別れてしまう訳じゃないし次の町で会えるわよ」
ミクとエドは先の町に行くと言う。
私は、はるっちとここに残ることにする。
ゲーム・ライフはそれぞれだ。
翌日、建国2年
「それでは出発する。元気でな」
「次の町で待ってるわよ!」
初めての村の北側出口、二人の笑顔に笑顔で応える。
「そうだね。直ぐ追い付けるように頑張るよ」
「
力強く前に進むミクとエドを、手を振って見送る。
今は、二人に並べるように頑張ろう。
それからしばらくは、はるっちと村の宿屋に宿泊し、冒険者ギルドの
依頼はほとんどがエネミー討伐、アイテム収集など、初心者向けの簡単なものが多い。
朝は第一昼刻から第三昼刻までは依頼を進め、一度村に戻って確認する。
依頼を達成していれば、報告して報酬を得る。未達成なら、第四昼刻から残りを処理する。
時間に余裕が出来れば、付近のフィールドで経験を積む。
慎重の上にも慎重に進める。“焦らず
生命の腕輪にも種々の情報が集まって来る。
敵の属性や攻撃方法、生育場所や群行動などなど。同じ敵と戦う度に情報が集まる。
ドロップ・アイテムは皮や肉が多い。どんなものかレアなのか、未だに良く分からない。
収集可能なアイテムは、食用植物や鍛冶の材料になる鉱物など、中には高額なものもあるらしい。
一度大型の蛇に出会ったが逃げた。逃げるのも作戦……ということにしておこう。
多くの敵と戦う間に気付く。
ここのモンスターたちは一匹ずつ個性持ちだ。時々、全く同じに見えても妙に倒し難いことがある。
見掛けだけで強さを判断すると痛い目に会う。
「今日も終わったね」
冒険者ギルドで、
「そうじゃの、ここまでは順調じゃ。拙は……」
はるっちは何かを考えるかのように、頭を少し傾ける。
「次の町に進むには、まだ何か足りないような気がするのじゃ。明確な前衛が居ないというのもひとつの原因だとは思うのじゃが……」
「それでだけど、一度夜間戦闘をやってみない? そのために前衛を探そうと思うんだけど」
「ほうほう、次の町までは三日ほどと聞く。そうなると途中の
「ギルドで募集ということも考えたけど、怪し気なおっさんが来ても困るしねぇ」
「確かにそうじゃ」
「で、ちょっと心当たりがあるんだけど」
宿屋の南側に拡がる空地に、いくつかのテントが点々としている。
「ここは何じゃ?」
「えとね。ここのテントは、直接他のプレイヤーとアイテムの売買をする人たちのものらしい」
「ほぅほぅ」
「他の町では、そういう売買を委託するところがあるらしいんだけど、この村にはないらかね。しかも、委託には手数料が掛かるらしいし」
「なるほど」
「この中に、女性の鍛冶屋さんが居るって聞いたので、その人に前衛をお願いできないかと思って」
「確かに、鍛冶屋なら腕力も体力もありそうじゃし、アイテム関連にも詳しそうじゃ。なかなか目の付け所が良い」
誉められたのだか、なんだか
「ここじゃないかな?」
テントの側に小さな木の看板が立ててある。
夕暮れで少し読みにくいけど、案内文がある。
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ディアの店
装備品の修理などをいたします。
鍛冶に関連するアイテムを買い取ります。
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可愛い丸文字で書いてある。これはおっさんじゃない。
「いらっしゃぃ!」
出てきたのは、文字に似合わずガッチリタイプのお姉さんだった。
「自分は、
背が高いと迫力あるな。
テント前に設置してある椅子に座って、テーブル越しに話をする。
「それで今日は何でしょう?」
「修理とかじゃなくて、相談したいことがあって」
ディアと名乗った鍛冶屋さんと色々
・前衛としてうちのパーティに入って貰えないか?
・アイテム類について色々教えて欲しい。
・エネミーや戦い方について、アドバイスをして欲しい。
・そろそろ次の町への移動を考えているのだが、一緒に行けないか?
「自分もそれ程知識を持っている訳ではないけど、いいよ。一緒にやってみよう」
「ありがとうございます!」
「感謝するのじゃ」
「二三日お試しでやってみて、上手く行くようなら次の町へ一緒に行こう。パーティは相性があるから、まずそれを確かめないと」
「そうじゃの、お互いどんなことが出来るか分からないし、まずは慣れることかの」
私とはるっちは、良い前衛を見つけたようだ。
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